パリ20区歩き ―5区―

5区位置

 
今までの記事にもちょこちょこ書いてきた5区は、名の知られた大学や高校などがあり、昔ながらの雰囲気が残る学生街カルチエ・ラタンとして観光客にも人気。ここは何といっても古い名画座がたくさんあることで、個人的にはとてもなじみ深い。そして今は、住んでいる区でもある“地元”。今ではほぼ地図なしで歩けるようになった素朴で親しみやすい界隈をあらためて探検してみよう。写真を撮った時期がバラバラなので、季節も天気も時間も様々なのだけど……。

まずは6区との境目、セーヌ川の目の前にあるサン・ミシェル駅からスタート。赤い庇が目を引く24時間営業のカフェは、味わい深いエリック・ロメールの映画『満月の夜』で使われたお店だそう。このシーンは印象的なのでよく覚えている。こんなに観光地だったとは。
 

カフェ外観

 
セーヌ川沿いには名物の古本屋が軒を連ねる。ひやかしながら歩き、ふと顔を上げると目の前には中洲のシテ島に立つノートル・ダム大聖堂が。まさにパリの風景。
 

 
そんなセーヌ川そばの観光地に立つのが小さな本屋シェークスピア&カンパニー。12区歩きでも触れた映画『ビフォア・サンセット』で、主人公2人が再会する場面が撮影されたとのこと。このシーンも記憶に残っているけれど、画面で見たレトロな雰囲気そのままだ。本を探しに、というよりは、観光スポットとして入っている人が多いような印象。でも居心地はいい。
 

シェークスピア&カンパニー外観

 
ここから南へ向かって歩くと見えてくるのは、エコール(学校)通りに立つかの有名なソルボンヌ大学。今通っているパリ第3=ソルボンヌ・ヌーヴェル大学も「ソルボンヌ」がついているけれど、この5区のソルボンヌ=パリ第4大学とは別。ちなみに、第4大学付属の人気語学学校「ソルボンヌ文明講座」はこのキャンパス内ではなく、ちょっと離れた14区にある。
 

ソルボンヌ1

 
一般的には、ここから見た姿が「ソルボンヌ大学」として有名。夏に撮ったので、木々が青々としていて明るい。
 

ソルボンヌ2

 
周辺のカフェも1年中にぎわっていて観光客が絶えない。この場所は平均して週に1度は通っているので、すっかり見慣れた景色になってしまった。
 

ソルボンヌ周辺カフェ

 
というのも、このソルボンヌ大学周辺はまさに普段通っている小さな映画館が集中しているエリアなのだ。映画館めぐり②の「シネマ・デュ・パンテオン」、の「ラ・フィルモテーク」、の「ル・シャンポ」、そしてエコール通りを東側に歩いていくとの「エコール21」、の「グラン・アクション」がある。映画好きならこの辺りに足を運ぶことになるはず。

そして、これもソルボンヌ大学から歩いてすぐのパンテオン。場所も近いけれど、正面から見るとシルエットもそっくり。1790年に教会として建てられたのち、フランスの著名人たちを埋葬する場所となったそうで、地下に霊廟がある。
 

パンテオン正面

 
ついこの前、11月第一日曜の無料開放日に初めて中へ入ってみた。どんな風に埋葬されているのか興味があったのだけど、例によってなんとも壮麗なデザイン。あのアレクサンドル・デュマのお墓もここにある。
 

パンテオン内装

 
パンテオン自体も歴史的な建物に囲まれていて、正面向かって左手にはここも行きつけのサント・ジュヌヴィエーブ図書館、奥には装飾が目を引くゴシック様式のサンテティエンヌ・デュ・モン教会、
 

 
そして前方左側には5区の区役所がある。どれも古く、堂々とした趣きが感じられる。しつこいけど、こういうものが違和感なく現代の街並みに溶け込んでいるのがヨーロッパの素敵なところ。
 

5区役所

 
ちなみに、パンテオンを背に180度反対側へ下っていくと6区のリュクサンブール公園があり、途中、遠くにエッフェル塔もよく見える。

さて、今までは大体このパンテオンまでで終わっていたのだけど、この裏側がどうなっているのか気になっていた。のぞいてみると、まさに5区のイメージそのままの石畳の道。また、パンテオンの真後ろには名門といわれるアンリ4世高校もある。
 

 
この辺りの建物は、くすんだグレーやベージュの外壁に四角いフォルムのシンプルなものが多い。これもまたパリの典型的な建築スタイルの一つ。
 

 
迷路のように狭く入り組んだ小径に誘われながら歩いていくと、出た。ムフタール通り。レストランやカフェはもちろん、肉、魚、野菜、果物、チーズ、ワイン、パン、お菓子、それに本や雑貨などなど、様々な専門店が並ぶ約600メートルのにぎやかな市場。観光地としても人気で、いつも旅行者と見られる人たちであふれている。
 

 
ちゃんと歩いたのはこのときが初めてで、なんて楽しい通りなんだろうと思ったけれど、まさかこの近くに住むことになるとは想像もしていなかった。今ではここは、買い物をしたり映画館に行くときの近道として利用したりと、完全に普段使いの場所になっている。

坂道になっているムフタール通りを下りきったところにもたくさんのお店があって、にぎやかな雰囲気が続く。ここから東へ向かうとソルボンヌ・ヌーヴェル大学があり、そこを通り過ぎてもう少し行くと、見えてくるのはなんとイスラム教のモスク。さすがは移民の国。パリの建物と並ぶとやっぱりちょっと違和感はあるけれど、モスク自体は美しい。
 

モスク尖塔

 
真っ白にグリーンが映えるシンプルかつエレガントなデザインで、近づくとけっこう大きい。内部も興味があるからそのうち入ってみよう。ここにはアラブのお菓子を味わえるカフェがあり、行列ができているときもある。一瞬だけ入ったことがあるのだけど、オリエンタルなインテリアが印象的だった。レストランやサウナなんかも併設されているとのこと。
 

モスク

 
このモスクのすぐ目の前には植物園があって、無料で入ることができる。広いし、ちょっと散歩するだけでも気持ちいい。
 

 
歴史的な建物や石畳の小さな通りが残り、パリらしい趣きをたっぷり味わえる5区。文化の薫りが漂う一方で、気取りのないパリっ子の日常を感じられる場所。個人的には映画館通いから足を踏み入れるようになった地区だけど、住んでみてやっぱり好きだなと思うし、自分に合っていると感じる。すべてが徒歩圏内となった今、あらためてまとめてみると普段よく行く場所の写真があまりなく、まだまだ書ききれていないなと思うのだけど、まあそれはまた別の機会に。

 

映画館
ムフタール通りには小さな映画館も

 

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