パリ20区歩き ―18区―

18区地図

 
中心部は少し飽きてきたので、足を延ばして今住んでいる場所からは一番遠い18区へ。このシリーズを始めたとき、パリはそれぞれの区がとても小さいと書いたけれど、実は数字とともに大きくなっていく。だから18区ともなるとけっこうな広さとなり、なかなかの歩きごたえ。

18区といえば、ゴッホやモディリアーニなど数多くの芸術家たちが住んでいたことで知られるモンマルトル地区。普仏戦争やパリ・コミューンの犠牲者を悼んで建てられた白亜の寺院サクレ・クールがあるのがここ。パリでも人気の観光地とあって、ものすごく大勢の人でにぎわっている。映画にもよく出てくる場所だけど、今ならやっぱり大ヒットした『アメリ』を思い浮かべる人が多いかも。ただこの映画、個人的にはまったくおもしろいと思えなかったので残念。

 
サクレ・クール

 
すぐ近くの広場では今も画家たちが絵を売っていて、観光客相手に似顔絵も描いている。それぞれタッチや画風が違い、素敵だなと思うものもたくさんあった。にぎやかな雰囲気につられて一瞬、描いてもらおうかなという気になったけど、冷静になって思いとどまる。

 絵描きたち

 
モンマルトルは丘になっていて、サクレ・クール寺院まで行くにはずっと坂道を上っていくことになる。でも、途中にもたくさん見どころがあり、それらに立ち寄りながらゆっくり歩いていくとぜんぜんつらくない。今回はメトロのブランシュ駅から行ったのだけど、降りるとまずあの有名な「ムーラン・ルージュ」が目の前に。パリにいる間に一度は入ってみたいもの。ここから食料品店や土産物屋が連なる道を少し上がると、映画の中でアメリが働いていたカフェがあり、今でもクレーム・ブリュレを食べに訪れるファンが絶えないとか。さらに進んでサクレ・クールの反対方向に行くと、モンマルトル墓地が広がっている。すごく広くて静かで、墓地だけど散歩にぴったりだ。ここにはスタンダールやゾラなど歴史に名を残した多くの人が埋葬されていて、案内図も置いてある。15年以上前に来たときと同じように、トリュフォーのお墓にお参り。
 

 
坂道がしんどくなってきたら、立ち止まってひと休み。前を見上げても後ろを振り返っても、まさに絵のような美しい景色が広がっている。ウィレット公園まで歩くとフニキュレールという短いケーブルカーがあって、これでサクレ・クール寺院まで上がることができる。いつも使っているメトロの定期があればただになるのでせっかくだから乗ってみたけど、本当に一瞬で着くから、隣の階段を使ってもほとんど変わらない。あんまり意味がないと思うのだけど、こういうのがパリの不思議なところだ。寺院前からの眺めはまさに絶景。
 

 
この辺りは建物がカラフルで、歩いているだけで楽しい気分になる。くすんだような灰色の建物が並ぶパリのほかの地区とは違い、とても明るくアーティスティックな雰囲気。ところどころに小さなギャラリーもある。
 

 
北側に進んでいくと、今度は庶民的なお店がちらほら。7区と少し似ているけれど、あんなに小洒落た感じではなく、本当に地元の人が普段使いしていそう。サクレ・クールは18区のほんの一部で、その裏側の方が断然広いので北の端まで歩いてみたけれど、ずっと下町っぽい雰囲気だった。寺院を離れると観光客もまったくいない。
 

 
大勢の旅行客でにぎわう18区だけど、一方で移民が多いという特色もあり、サクレ・クール周辺から少し離れたバルベス・ロシュアール駅付近には民族衣装を着けた人たちがたくさんいる。いつも歩いている中心部とはかなり違い、パリじゃないみたいだ。また、この辺はかつてドラッグ・ディーラーのたまり場だったということで、今でも夜は危険だと前学期の映画の先生も言っていた。観光客であふれる華やかなイメージとはまた違う、パリの危うい一面がここにある。
 

 
思わず迷い込みたくなる狭い路地や、上るごとにワクワクするような坂道が続く中に、明るく彩られた建物、たくさんの人でにぎわうカフェなどが点在するモンマルトル。パリを一望できる素晴らしい景色はもちろん、親しみやすい雰囲気もかつて芸術家たちを魅了した理由なんだろう。ここに住んだら楽しそうだけど、パリでありながら意外と田舎のように感じるのかもしれない。凱旋門やシャンゼリゼ周辺とは違い、暮らしている人の息づかいが聞こえてきそうな温かさがある。それにしても、本当に気持ちよく歩ける場所だ。散歩しながらパリの街を見下ろしたくなったら、また何度でも遊びに行こう。

 

プチ・トラン
こんなプチ・トランで観光するのもあり

 

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