パリ20区歩き ―13区―

13区位置

 
今住んでいるところからすぐに行ける距離にありながら、感覚的には遠い13区。以前はお気に入りの映画館によく通っていたのだけど、とはいえその周辺しか知らない。ここは何といっても、パリ随一の中華街があることで有名。見慣れた景色とはまた違う、アジアが薫るパリを探しに、奥まで入ってみよう。

まずは5区との境にある国鉄オーステルリッツ駅からスタート。時期的なものもあるのかもしれないけれど、10区の北駅や東駅に比べると人が少なく、のんびりとした印象。パリの駅は行き先によって分かれていて、このオーステルリッツ駅からはフランス中西部ロワール地方やスペインなどへ向かう列車が出ている。
 

オーステルリッツ駅外観

 
近くには同じオーステルリッツ駅という名前のメトロの地上駅もあり、ここからはすぐ下にある国鉄駅が見えてちょっと楽しい。
 

メトロから見たオーステルリッツ駅

 
セーヌ川沿いに南へ向かう。途中、上をメトロが通る橋を発見。地図を見るとどうやらベルシー橋。この構造、15区と16区をつなぐビル・アケム橋に似ている。さすがにこちらの方が地味だけど、近くで見ると重厚感があって、これはこれで趣きがある。
 

 
この辺りに浮かぶ川船の中には、カフェやライブ会場になっているものがあるらしいのだけど、どれがそうなのかは分からない。観光クルーズ船はここまでは来ていないようで、西側に比べると落ち着いた雰囲気。
 

セーヌ川沿いの景色

 
川沿いを半分ぐらいまで来ると、フランス国立図書館、別名フランソワ・ミッテラン図書館がある。その名の通り元大統領であるミッテラン氏が手掛けたもので、ガラス張りの巨大な高層ビルが並ぶモダンなデザインが印象的。なんと、活版印刷が始まった15世紀からこれまでにフランス国内で出版されたすべての本が保存されているとのこと。価値のある膨大な資料の保管庫といえる。16歳以上なら誰でも利用可能らしいのだけど、有料なのと場所がちょっと不便なことから、個人的にはあまり使い勝手がよくない。
 

 
ここからは徐々に西側へ向かって街なかへ。実はこの辺りのセーヌ川沿いは新開発地区とのことだけど、川から離れていっても近代的なコンクリートのビルが多く、パリとは思えない雰囲気。建物が街をつくっていることがよく分かる。だから建築に興味があるのだ。
 

 
いよいよ中華街にやって来た。郊外に近い南寄りのポルト・ディヴリー駅から北のプラス・ディタリー駅に向かう周辺が、中華街と呼ばれるエリア。一歩足を踏み入れた途端、パリではなくなる。どこを歩いても人がいっぱいで、それもアジア人が多数派。ごちゃごちゃとして騒がしい雰囲気は、まさにアジアを感じさせる。原色のコートを着て道の真ん中で大声でしゃべるおばちゃんたちの姿も、イメージ通りの中国人そのものだし。
 

中華街2

 
普通に歩いているだけで、スーパーや飲食店はもちろん、服、雑貨、さらには中国系の銀行や旅行会社なんかもあって、生活に必要なものはすべてそろっている印象。ちょっとのぞいてみたけれど、お惣菜の値段もすごく安く、フランスのものよりはるかにおいしそうだった。下手にパリの日本食レストランに入るより、この辺りで食べた方が手ごろで味もいいかもしれない。
 

 
ベトナムなど他のアジアのお店もちらほら見かけたけど、やっぱりメインは中国。さすが、人口が多いだけのことはある。チャイナタウンって今やどこの国にもあるんじゃないだろうか。学校の先生たちも、この辺に来るとパリではないような気がすると言っていたけれど、大げさじゃなくここは中国人のための界隈と化している。映画『パリ・ジュテーム』にもこの中華街が出てくるらしいのだけど、残念ながらまったく覚えていない。

イタリー広場(プラス・ディタリー)まで歩いてひと安心。パリに戻ってきた。ここは映画館めぐり⑤のシネマ・ゴーモン・レ・フォヴェットに行くためにいつも通っていた場所だから、個人的にもなじみがある。2年目からは映画のカードをUGCのものに替えたので、UGC系ではないこの映画館には行かなくなってしまったのだけど。
 

イタリー広場

 
ただ、いつも通っていた場所なのに見逃していたところがあった。映画会社パテの財団が所有するというこちらの建物。カメラなどが展示される博物館やミニシアターなどがあるらしく、興味深い。ここもいずれ入っておかなければ。
 

 
最後に、イタリー広場周辺を散策。南西へ広がるビュット・オー・カイユ地区は、すごくいい雰囲気。狭い通りに地元の人から愛されていそうなレストランやカフェなどが並び、ぶらぶら歩いているだけで楽しい。こういうこぢんまりしたかわいらしい街並みは、やっぱりヨーロッパのもの。日本でこういう場所があったとしても、たいてい周りの建物が全部新しく無理矢理つくった感があるけれど、古くからずっと続いていて時間の重なりを感じさせるからこそいいのだ。
 

 
情緒ある道に誘われて歩くうちに、気づけば14区との境目へ。向こうに見えるあの建物は、大学都市シテ・ユニヴェルシテール駅の近くにあったはず。知っている場所に帰ってくるとほっとするとともに、頭の中で地図がつながっていくのがうれしい。
 

シテ・ユニヴェルシテール

 
観光客のいないのんびりとしたセーヌ川沿いや、日本でも見かけるようなモダンな建物、アジアへ迷い込んだような中華街に、モンマルトルを思わせる趣きある街並みと、いろいろな表情が混じり合った13区。どれも普段見ているパリとは違うもので、まだまだ知らないところがあるなと実感。住む場所としても悪くはないのだけど、やっぱりチャイナタウンは避けたいかな。

 

細い階段
パリであってパリらしくない景色

 

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