滞在許可証の更新⑤

もういい加減にしたいのだけど、まだ続いているこの手続き。1月に必要書類を提出したものの、一向に何の連絡もない。まあ2カ月ぐらいで解決するわけがないことは予想していたのだけど、ついに、新しい滞在許可証ができるまでの間をつなぐレセピセの有効期限まで切れてしまった。というわけで今、一時的に不法滞在状態になっている。もちろん、レセピセの期限が迫っていることは分かっていてじりじりしていたものの、いろいろ考えた末、許可証ができるまでこのままやり過ごそうという気になっていた。職務質問されたことなんて1回もないからその点はたぶん大丈夫だろうし、管轄の警察署に行ったところで、運よく許可証ができていればいいけど、できていなければムダ足になるだけだからだ。状況が分からないのに、わざわざ学校を休んでまで行って、この寒い中また数時間外で待つなんて考えるだけでうんざりだし。
 

レセピセ

 
ところが期限が切れる前日、たまたま同じクラスの中国人の女の子にこの話をしたところ、レセピセって更新できるんじゃない?と言われてビックリ。前に、滞在許可証も追加のレセピセも出ないまま数カ月過ごしたという人の体験談を読んでいたため、レセピセは1回限りだと思い込んでいたのだ。その夜、半信半疑で調べてみると、確かに。期限切れぎりぎりに2通目のレセピセをもらいにいったという声がネット上にたくさん出ている。でもここで問題が。この時点で期限にはあと1日あったのだけど、その最後の日が土曜日。つまり、もう間に合わない。仕方ないので、とりあえず月曜日に行くことにして、またもや書類の準備。

土曜なのにわざわざ化粧して写真を撮り、さらに書類をコピーするために近所のモノプリへ。これだけでも面倒なのに、気が進まないからうっかりしてパスポートや財布を忘れ、家との間を合計3往復。うんざりしながら最後に、念のため今持っているレセピセもコピーしておこうと思い、裏返したとき・・・何か書いてあるのを発見。

「レセピセを更新するためには期限切れの3週間前に書類をご郵送ください。新しいレセピセは郵便でお送りいたします。警察署までお越しいただいても何にもなりません」

・・・なんだと?なんでこんなとこに書くんだ。レセピセの裏なんてこのとき初めて見たし。幸い、書類のリストを見ると、パスポートのコピーや3カ月分の家賃支払い証明書など、自分で考えて用意していたもので合っていたのだけど、写真は1枚でよかったから、わざわざ撮る必要なかった。結局、家に余っていたのを使い、この日撮ったものは次の機会に置いておく。それにしても3週間前って。なんでそんなに時間が必要なの?ネットで見る限りでは、1通目のレセピセに延長のハンコを押すだけの地域もあるらしく、正直その程度で十分だと思う。そもそも、レセピセを更新しないといけないのはこっちのせいじゃないし。
 

罫線

 
もう期限が切れているわけだから直接行こうかとも考えたのだけど、門前払いにされる可能性大なので、結局郵送を選択。ただいろいろ考えた末、お詫びと事情説明の手紙を入れておいた。フランスでは手紙がすごく重要なので、まあ1枚入れておくだけで印象も変わるかなと、かすかな期待を込めて。ところで、こちらでは大切な書類を送るとき必ず書留を利用するのだけど、注意書きには「シンプルな郵送」にしろとある。シンプルが何を意味するのかいまいち分からないけれど、おそらく受け取りが必要な書留ではなく、ポストを見ればいいだけの普通郵便にしろという意味だと解釈し、普通郵便に。どんだけ仕事したくないんだ、フランスの公務員。

もう自販機で切手を買うのも慣れたもので、迷うことなくスムーズにできたものの、ここでまたやってしまった。せめて追跡できる郵便にしようと少し高い切手を選んだところ、シール状のシートが2枚出てきて、これを両方貼るのか、金額が書かれている方だけでいいのか分からない。というのも、1枚には「追跡ステッカー」という文字と番号、バーコードが印字されていて、これを貼ってしまうと追跡できないからだ。
 

追跡ステッカー

 
運悪く次の予定が迫っていて、時間がない。しかも本当はもっと近くの郵便局に行くつもりが、改装中で閉まっているっていうパリではおなじみの状況に巻き込まれていた上に、このとき郵便局もけっこう混んでいたから聞くこともできず、結局1枚だけ貼って投函。あとで調べると、やっぱり2枚貼らないといけなくて、追跡番号はレシートと一緒に出てきていたはずだった。そう、レシートも取り忘れていたのだ。レシートって一番最後に出てくるから、ついつい切手が出てきたところで安心して自販機を離れてしまいがちで、実際に前の人の取り忘れが残っていることも多い。そんなわけで、せっかく追加料金を払ったのに無事に着いたかどうかの確認ができないのだけど、個人的にはこちらに来て郵便でいやな思いをしたことは幸いないから、ちゃんと届いていると信じよう。今考えれば、速達にする手もあったのだけど。

怖いのは、罰金が課されないかなということ。まあ不法状態に陥るのはたぶんフランスではそれほど珍しいことじゃなく、実際に罰金を払わされたという話も聞いたことはないのだけど、他人の例は当てにならないのがこの国。でも、確かに手続きが遅れたとはいえ、滞在許可証の更新自体は申請しているわけだし、これは罰金が必要なケースには当たらないはず。そもそも、向こうが早く仕事してくれないからこうなっているわけで、そのために余計なコピー代とか郵便代とか払わされているのだから、むしろこっちは被害者だ。こういう場合、日本なら期限が切れる1カ月前ぐらいに連絡が来て、必要な書類や手続きを教えてくれそうなものなのに。まあフランスにそれを期待してもムダだけど。なので今は、滞在許可証を取りに来いっていう呼び出し状か、2通目のレセピセか、それとも両方却下されたっていう通知か、どれが早いかなーって待っている状態。それにしても、レセピセを郵便で送るっていうのもどうなの??

 
滞在許可証の更新①はこちら
滞在許可証の更新②はこちら
滞在許可証の更新③はこちら
滞在許可証の更新④はこちら
滞在許可証の更新⑥はこちら

 

ピザ
たまにはクラスのメンバーとランチ

パリ20区歩き ―11区―

11区位置

 
中心部からそれほど離れていないのに、特に観光スポットがなく、みどころの多い他の区に囲まれて埋もれがちなのが11区。10区や12区と違って国鉄の駅もないし、このときまで足を踏み入れたことがなかったと思う。ここには一体何があるんだろうか。こういう、観光客とは縁のなさそうなエリアほど、興味をそそられる。

もうおなじみの場所、4区・12区との境にあるバスティーユ広場からスタート。東へ向かって少し歩き、左へ曲がってシャロンヌ通りへ入る。ここから伸びる小さなパッサージュにはかわいらしいショップが集まっていて、女子なら見逃せない。1軒のぞいてみた雑貨屋さんも、なかなかセンスのいい品ぞろえ。たまにこういうのを見ると、やっぱりワクワクする。
 

 
たくさんの人で賑わっているのが、有名なアーティストたちにも人気だというポーズ・カフェ。セドリック・クラピッシュの『猫が行方不明』に登場するらしいのだけど、この映画はだいぶ前から見たいと思いながらまだ機会がないので、こちらにいる間にスクリーンで見られることを願っている。この監督のヒット作といえば、何といっても『スパニッシュ・アパートメント』。これはフランス人もよく知っているのだけど、去年パリで見た『ce qui nous lie』(日本未公開?)もよかった。
 

ポーズ・カフェ

 
このシャロンヌ通りには、他にもカフェやブティックが立ち並んでいて、ショッピングエリアになっている。街を歩いている人もおしゃれ。3区のマレと似ているけれど、こちらは観光地化しておらず、地元の人たちが食事やショッピングを楽しんでいる雰囲気。買い物をするならこの辺りの方が、よりパリジェンヌらしいファッションアイテムやライフスタイル雑貨が見つかるかも。
 

 
途中、石畳の細い道を発見。商店街になっていて、日曜でほとんどが休みだったもののたくさんの飲食店がある。中でも特に目についたのは寿司店。寿司はこちらではすっかり日常のメニューで、店の前に行列ができていることも多い。パリで食べたことはないから本当の寿司なのかどうかは知らないけれど、ヨーロッパの他の国やアメリカでも寿司はかなりポピュラーになっているよう。日本人としてはうれしい反面、本来は高価な寿司がこれだけ世界で一般的になるっていうのはちょっと複雑。
 

 
続いてやって来たのはケラー通り。ここはかなり特殊。というのも、日本のアニメや漫画関連のショップが集中しているのだ。コスプレ用のゴスロリ系衣装なんかもショーウインドウに飾ってあって、とてもパリとは思えない。この風情ある歴史的な街並みにはまったく合わないのだけど、日本のアニメもまたフランスで大人気だから、こういうショップがどんどんできていくのも自然な流れなのかもしれない。でも・・・これはさすがに残念。
 

 
ここから北東へ向かって歩く。それにしても、本当にパリにはカフェが多い。天気がいい日はもちろん、雨の日でも雪の日でもテラス席に座っている人が必ずいる。この景色がなければ、パリがここまで多くの人を魅了することはなかったかも。
 

 
感じのいい通りを歩いて東端、20区との境までやって来た。メトロのメニルモンタン駅から向こう側は、20区のメニルモンタン通りに続いている。このメニルモンタンというエリア、パリジャンやパリジェンヌには住みたい場所として人気だそうなので、また20区の回で詳しく。
 

メニルモンタン広場

 
西へ戻り、最後は10区のサン・マルタン運河から続く散歩道へ。少し外れるとカラフルなアパートも多く、いつもながら建物を観察しながらあちこち寄り道。パリにあるのはオスマン様式の建築物だけではないのだと分かってきて、以前のイメージとはだいぶ違っていたことに気づく。
 

 
11区は観光地の騒がしさはなく、庶民的。でも他の区とはまた違い、なんというか、大きいけれど大都会ではなく、でも人口は多い中規模の便利な街という感じで、大阪で例えれば吹田や高槻のような佇まい。中心部ではなくここに住みたいと思っている人たちが、わざわざ選んで住んでいそうな雰囲気がある。残念ながら、個人的にはここで暮らしてみたいと思えなかったのだけど、また違ったパリの一面が見られる興味深いエリアであることは確か。

 

狭い道
こういう狭い道を通るのも楽しい

 

その他の区はこちら。
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濃密な授業

前の記事をアップしたころから急激に気温が下がり、けっこうな雪が降った。パリに積もるほどの雪が降るのは珍しく、交通機関も大混乱。滑るから歩くのも大変だったのだけど、幻想的な雪のパリには本格的なカメラを持った人がたくさんいた。ただ、凍えるような寒さも1週間ほどで終わり、今は最高気温7、8度前後に戻ってほっとしている。やっぱり寒いのはいやだ。
 

雪のパリ
降り始めはこんな感じ

 
前回のつづきのようになってしまうけれど、先週からまた先生が変わり、授業内容も大きく変わった。この先生は生徒が多いときだけ臨時で来ているようで、普段は見かけないのだけど、教師としてはベテラン。文法の練習問題、聞き取り、読解、プレゼン、クイズ、議論など盛りだくさんの内容で、しかもけっこう難しい。クラスのレベル自体は変わっていないのに、やっていることの難易度は明らかに一段階アップした。宿題もたっぷりあり、毎日3、4時間かかる。この学校に来てからほとんど宿題がなかったこともあってこれはさすがにしんどいのだけど、すごく勉強になるのも確か。

この学校は、旦那さんの転勤でパリに住んでいる主婦や、バカンスを利用して数週間だけ勉強しに来る社会人が多いから、前に通っていたパリカト(パリ・カトリック学院)のような大学付属の語学学校に比べると内容もそんなに難しくなく、どちらかというとアットホームな雰囲気で楽しく会話することを重視している。もちろん、それはそれでプライベートの小さな学校のメリットだし、そういう雰囲気を求めて来る生徒もたくさんいるのだけど、個人的にはちょっとゆるすぎるなと思っている。学校というよりは、習い事に近い。特に、今年に入って最初の先生は“友だち”という感じだったし、文法の練習問題があまりにも基本的すぎて知っていることばかりだったので、宿題がない上に復習するべきこともなく、だからといって授業中にバンバン発言できるわけでもなく、ちょっともやもやしていたところだったのだ。
 

罫線

 
新しく変わった先生は、文法の説明をほとんどしない。復習程度にさらっと流して、あとは大量に練習問題を課す。これが私としては理想的で、無駄な時間がなくなってうれしいのだけど、やっぱり同じクラスにはその文法を初めて習うという人が必ずいて、彼らは何が何だか分からないままいきなり練習問題をやらされているから、ぜんぜんついていけないと言っていた。確かに、あの説明では絶対に不十分だと思う。その練習問題も、ルールに沿って機械的に当てはめていくだけのものじゃなく、難しい単語がたくさん出てくる文章を読んで内容を理解しなければ答えられないので、文法力と同時に単語力や読解力も問われる。

初日は紙の練習問題が多かった上に、前の先生の授業と比べて一気に雰囲気が変わったから、その先生を知っている他の生徒たちはかなり不満だったよう。やり方を変えてもらうため、直接校長に訴えようという話になった。まあ先生によって内容が変わるのは当然なのだけど、確かに最初の日は会話の時間が少なかったし、この学校のルールを守れていない部分があったのは気になったから、私も同意。こういう場合、先生のやり方に口を挟んでいいものか迷うところだけど、授業料を払っている以上、気になることは言ってみるべきだと思う。それが小規模学校の別のメリットでもあるし。結局、生徒の1人が実際に訴えてくれて、次の日から徐々に改善。レベルは変わらないまま、話す時間がぐんと増えた。

それも、今までの授業のように話したい人が好き勝手に話すのではなく、1人ずつ平等に機会を与えてくれるところがいい。特に全員での議論の場合、しゃべり好きな人たちがいるとこちらの出番はないのだけど、この先生は毎回1人、ジャーナリスト役を立てて、必ず全員が発言できるよう配慮しながら進行することを求めるのだ。なるほど。こうすれば特定の人だけがしゃべり続けることなく、みんなが参加できる。まあこれもその週のクラスの雰囲気によるのだけど、先週はちゃんと人の話を聞ける感じのいい生徒ばかりだったので、安心して発言できた。テーマは環境問題や医療システムなど社会的なことが多いからある程度考えないといけないし、単語がなかなか出てこないという個人的な課題の深刻さを痛感するけれど、この議論を毎日やってくれるので、こんなに練習できるのはラッキー。こういう授業こそ、少人数学校でやるべきこと。先生も、最初はみんなが発言したところで終わっていたのが、だんだん間違いを指摘してくれるようになったから、今かなり理想的な内容になっている。

それにしても、先生によってこれだけレベルや内容に差があるというのはどうなんだろうか。まあどの学校でも同じだと思うけれど、今までよりはるかに充実している。会話力をつけたいからこの学校を選んだので、しゃべるチャンスは多ければ多いほどいいし、だからといって読み書きのレベルも落としたくはないから、ある程度難しいことをやってくれる方が個人的にはうれしい。正直、先生の人柄に関してはあまりいい印象ではないし、アカデミックな内容が気に入らないと言っている人もいるけれど、やっぱりせっかく勉強しに来ているのだから、これぐらいじゃないともったいない気がするのだ。確かに宿題は大変で、自分のペースで勉強できないのはしんどいけれど、しばらくこの先生の授業が続いてほしい。ただ聞き取りに関しては、相変わらず私1人まったくついていけてないので、もう少しレベルを落としてほしいのだけど・・・。

 

雪だるま
アパートの中庭にできていた雪だるま