8月まで1年間通ったパリカト(パリ・カトリック学院)から心機一転、新たな語学学校での授業が始まった。これまでにも散々書いてきたようにパリカトはとてもよかったのだけど、やっぱり読み書き中心なので、会話のレベルとの差がどんどん開いていくのが不安だった。基礎はかなり定着してきたから、今度はそれを使って書けるレベルまで話せるようになりたい。そのためには、1クラスの人数が少なくなければ。だから新しい学校を選ぶ際には、少人数制であるかどうかを重視した。
選んだのは、最近7区に移転した小さな語学学校。校長が日本人の女性で日本の多くの留学業者もここを斡旋しているから、日本人はよく知っていると思うし、実際に日本人の生徒も多い(なのであえて名前は出さない)。日本人がつくった学校だから選んだわけではなく、会話中心で少人数制のところを探していたら、たまたまここを見つけたのだ。というのも、この校長という人が日本人であるだけに、外国語で会話できるようになることの難しさ(特に日本人にとって)をよく分かっていて、会話を身に付けるのに理想的な授業を行う学校にしようと思ったそう。2年目は学費の安い語学学校を選ぶ人も多いみたいだけど、ネットでの評判や、実際にそういう学校に行っていた人たちから直接聞いた話によると、安ければ安いほど質も悪い。ビザ目的でとりあえず登録だけする人が多いようなところもあるから、確かにその通りだと思う。だから費用はかかっても、やっぱりちゃんとした学校に通うことにした。
1階と地下が学校
クラスは最大7人で、生徒も真面目。みんなきちんと勉強してきている。ただ、ここはパリカトのように学期制ではなく、受講は週単位。つまり、毎週メンバーが変わるということ。休暇を利用して1週間だけ勉強しに来る人もいれば、私のようにある程度の期間通う人もいる。だからきっと、社会人や主婦の割合が多いと思うのだけど、年齢層はパリカトとあまり変わらない印象。ただなぜか、アジア人がものすごく少ない。もちろん日本人は常にいるのだけど、あとは欧米人がほとんどで、パリカトでよく見かけた韓国や中国、台湾などの生徒はめったに見ない。逆にパリカトは欧米人が少なくて、アジア人が圧倒的多数派。ベトナムやフィリピンなど所得の低い国からの留学生が大勢いるのが不思議だったのだけど、その名の通りカトリック系の学校だから、牧師さんとか教会の仕事をしている人たちが研修のようなかたちで団体で来ているケースが多かった。そういう生徒がここにいないのはまあ分かるとして、他の国の人はどういう基準で語学学校を選んでいるんだろう。なぜか自然にこうなるんだろうなあ。
場合によっては先生も毎週変わるのだけど、どの先生もまあ悪くない。パリカトの優秀な講師陣と同じようなクオリティを求められないのは仕方ないとして、それでもみんな経験は積んでいそう。ただ、中にはあまり熱意のない(ように見える)人もいて、特に最初の先生は相性もよくなかったから、次の週から違う先生になってほっとした。
レベル分けに関してはパリカトと同様、なかなか複雑。1週目はB1でこれがちょうどいい具合だったのだけど、2週目から1つ下のA2+になってしまった。この学校は会話のレベルでクラス分けをするから、1週目で会話ができていないと思われたのか、単に人数調整なのかは分からないけれど。実際、週によっては希望のクラスが満員で入れないこともあるし。会話重視とはいえ、やっぱり語学学校である以上、文法抜きというわけにはいかず、文法の時間というのが存在する。でも、これが退屈。日本でけっこう勉強してきた上にパリカトで散々たたき込まれたから、もうすでに知っていることばかりだし、かなり定着しているものも多い。ただ、それを使って話してみろと言われると、ぜんぜんできない。だから、会話の練習をするなら下のレベルの方がいいのだけど、内容自体は簡単すぎて時間がもったいないし、せっかくパリカトで訓練した読み書きのレベルも落ちそうで不安。
個人的な理想は、文法の説明なしでとにかくただしゃべるだけ、というものなのだけど、同じクラスにはその文法を初めて学ぶという人もいるから、なかなかそういうわけにもいかない。面白いのは、会話が得意な欧米人でも、文法通りしゃべってみろと言われると口ごもってぜんぜん言葉が出てこないこと。先週同じクラスだったイギリス人がまさにそうだった。多くの日本人は話す練習なしに文法の知識だけ増やすから、いざ口に出そうとすると頭の中でその知識をまとめられず言葉が出てこないということになるけれど、なかなか話し出せないこのイギリス人を見ていて、なんだか自分を含む日本人のそんな姿を思い浮かべてしまった。ただ彼は、休み時間になると知っている限りの表現でベラベラしゃべっているからすごい。
話せるかどうかは、テーマやクラスのメンバーによっても変わってくる。最初のクラスでは1週間ずっとスポーツの話題で、まったく興味がないわけじゃないけど特に思い入れもないから、フランス語の前に、まずは自分の考えを“見つける”ことから始めなければいけないのが大変だった。そして、このクラスには発言の多い生徒が2人いて、彼女たちがとにかくよくしゃべるので、やっぱりそういう人がいると勝てない。日本人は、というか少なくとも私は、たとえ話したいことがあっても自分ばかり話すと悪いなとか、ここで授業から脱線したことを言うべきじゃないとか、よくも悪くもいろいろ気を使ってしまうのだけど、そういうのをまったく気にしない、または気づいていない人というのも世の中にはたくさんいて、彼女たちはまさにそういうタイプ。授業というより、カフェで雑談でもしているような調子で、とにかくずっとしゃべり続けるのだ。ただ、そういう人たちでも文法になるとぜんぜんできず、こちらが断然上回っている。まあ本当に、どこにいっても文法と会話の国籍によるレベルの差は大きい。
教室から見える建物
とはいえさすがに少人数だけあって、パリカトに比べると圧倒的に発言の機会は多い。ただ、これだけでは話せるようにならないなと早くも気づいてしまった。文法も会話重視だけどずっとしゃべってばかりいるわけではないし、日によってはあまりディスカッションの時間がないこともある。1対1のプライベートレッスンもあるもののお金がかかりすぎるので無理。よく言われるように、フランス人の友だちを見つけることができればそれが一番なのだけど、正直なかなか難しい。もう少し学校以外で話せる機会を見つけないと・・・。それにしても、授業で隣の生徒と2人で会話させるのはやめてほしい。人数が多ければ仕方ないけれど、正しいフランス語を知らない同士で話してもどうしようもないし、少人数制の意味がない。なんでそれが分からないんだろうか。このやり方は嫌いで、同じクラスになった他の日本人の生徒たちも同じ意見だった。フランス人以外のフランス語は、フランス語の発音じゃないから聞き取れないし。

まだ手探りだけど、とにかくこの新しい学校での勉強が始まった。パリカトの語学学校は大学付属だったから、広いキャンパスで学生気分を味わえたけれど、今度は完全にプライベートな学校なので、パリならどこにでもある普通の建物になってしまったのは残念。ただ、日本人が経営しているだけあってシステムはちゃんとしているし、日本人の生徒が多いというのも個人的にはうれしい。パリカトは若い学生も多かったので、日本人だからといって仲よくなれたわけではなかったのだけど、今度の学校は社会人の割合が高いから、親しくなれる確率も高いはず。フランス語とは関係なく、仕事でつながりを持てるような出会いがあるとうれしいんだけどなあ。
学校がある通りは静かで落ち着いた雰囲気
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