パリジェンヌたちのファッションチェック②

このシリーズは本来、シーズンごとにやりたいと思っていたのだけど、なかなかそううまくいかない。日本みたいに、雑誌の中から抜け出てきたような人が街にあふれていることはなく、特に冬は防寒優先になるので、撮りたいと思う人を探すのがまず大変。やっとおしゃれな人に出会っても、いつもカメラを構えているわけではないから、チャンスを逃してしまうことも多い。それに、素敵な人ってなぜか大体、前から来るので、あっという間にすれ違ってしまう。時間があれば、怪しまれないように追いかけていったりもするのだけど・・・。

そんなわけで結局、前回の①から約1年が経過。去年の秋からひとめぐりして季節感がすっかりなくなってしまったけれど、個人的な好みでパリジェンヌファッションをセレクトしてみた。

 

パリジェンヌ1

去年の秋、14区にある郊外鉄道RERのダンフェール=ロシュロー駅にて。ロング丈のトップスにデニムとスニーカーを合わせてカジュアルダウン。髪をまとめてバランスよく。メガネがまたかわいい。

 

パリジェンヌ2

 こちらも同じくダンフェール=ロシュロー駅。トラッドなコート×かっちりしたバッグとシューズの通勤スタイル。子供っぽくなりがちなチェックのマフラーをうまく効かせてやわらかい仕上がりに。パンツをロールアップして足首を見せると軽さが出るし、個人的にも好きなスタイリングなのだけど、真冬は絶対無理。

 

パリジェンヌ3

ピンクのバックパックとごつめのスニーカーが存在感たっぷり。スポーティーになりそうなところだけど、真っ白のロングマフラーをプラスすることで健康的かつふんわりやさしいイメージに。顔立ちや体型、全体の雰囲気によく似合っている。場所は郊外にあるアパートの近くなのだけど、パリ市内から一緒に電車に乗ってきたのでパリジェンヌということにしておこう。

 

パリジェンヌ4

8月まで通っていた6区のパリカト(パリ・カトリック学院)近くで見かけた、買い物途中らしい彼女。ナイロンジャケット×レザースカート、重くなりがちなダークトーンの上下に白のスニーカーをコーディネートして軽やかさを演出。スニーカーはきっと、パリではずっと定番の人気アイテム。見えにくいけれど、斜め掛けにしたバッグの黄色がアクセントとして効いている。まとめ髪で女性らしい雰囲気に。

 

パリジェンヌ5

暑かった春の一日、12区の公園にて。ボーダーは元々、大好きなのだけど、中でも赤のボーダーシャツはこちらに来て買い足したいと思うようになったアイテム。フランス映画の中でもよく見かける。デニムとスニーカーを合わせてもかわいらしく仕上がるのが魅力。

 

パリジェンヌ6

こちらも同じ12区。ドットのブラウスに明るめカラーのデニム、足元はバレエシューズ。まさにパリジェンヌのイメージ。風に揺れるさらさらの髪も素敵。コーディネートによってアップにしたり下ろしたり、髪型まできちんと合わせるところは見習わなければ。

 

パリジェンヌ7

5区で映画を見た帰りに出会ったこちらの彼女もドットのブラウスが印象的。黒×白のシックな配色だから、短パンを合わせてもカジュアルになりすぎず女性らしい仕上がり。短めの髪が全体の雰囲気にぴったり。ちなみに、フランス人は透ける素材でもインナーは着ず、割と年配の人でも短パンをはいている。

 

パリジェンヌ8

シンプルなシャツワンピースにサンダル、斜め掛けバッグとコットンのトートバッグ。これもパリでよく見かける女性のスタイル。この11区では、近所に住んでいそうなパリジェンヌに出会うことが多く、普段着の彼女たちを見ることができる。

 

パリジェンヌ9

 最後に、ついこの前、1区ですれ違った2人連れのおしゃれさん。どちらも、カジュアルアイテムときれいめアイテムのバランスが絶妙で、学校にも仕事にも行けそう。シンプルなものばかりなのにイマドキに見えるのは、やっぱり着こなしが上手だからなのだ。
 

去年、来たばかりのころは、街を歩いている女性がみんな素敵に見えたのだけど、最初にも書いたように、パリジェンヌだからといっていつもきれいにしているかというと、ほとんどの人はたぶんそうではなく、日本を歩いている方がよっぽどおしゃれな人に出会う確率が高い。普段はナチュラルかつカジュアルに、でもお出かけやパーティーのときには思い切り着飾るというのがパリジェンヌのスタイル。

前回も書いたけれど、それにしても本当にみんな個性的。1年いても、今何が流行っているのか、街で女性たちを見ているだけではぜんぜん分からない。それぞれ好きなものを着ているし、30代以上はミニスカートNGなんて、窮屈な価値観に縛られている様子もまったくない。まあ私も、Tシャツに短パンで会社に行っていたぐらいだから、日本にいたときからあまり周りの目は気にしていなかったかも。でも、新しいものが買えないのはやっぱりなかなかつらい。お気に入りのブランドのホームページを見てはため息をついているのだけど、おしゃれを楽しむというささやかで贅沢な望みは、まだしばらく抑えておかなければ・・・。

 
パリジェンヌたちのファッションチェック①はこちら
パリジェンヌたちのファッションチェック③はこちら
パリジェンヌたちのファッションチェック④はこちら

 

パリの男の子
ソルボンヌの近くにはおしゃれな男の子も

1年間の成果

パリはもうすっかり秋。8月から気温の低い状態が続いていたけれど、9月に入ってからは20度に達する日も少なくなり、出かけるときはトレンチコートやレザージャケットを羽織っている。最近は、冬用のコートを着ている人を見かけることも増えてきた。特に夜は冷えるので、早くもフリースが活躍。1年前に来たころはけっこう暑くて、しばらくは半袖を着ていたことを覚えているのだけど、今年は例年に比べても気温が低いよう。おまけに毎日、雨またはくもり。結局、いろいろな事情から旅行はやめることにし、学校が始まるまでパリを満喫しようと思っていたのに、ぜんぜん街歩きができない。そもそも出歩ける季節が短いのに、こんなに天気に邪魔されるとは。でも、パリではきっとこういう灰色の空が普通なのだ。

さて、パリカト(パリ・カトリック学院)での1年間の授業がついに終了した。最終的にB2-1のレベルの修了証をもらったのだけど、平均点は20点満点中半分ぐらいしかないし、実際にはとてもそれだけの実力は身に付いていない。自分でどれだけ上達したかは分からないけれど、まあ語学の能力というのは、想像していたよりもはるかに伸びるスピードが遅いことを実感している。人によって差は当然あるものの、1年間の留学で得られることなんてほんのわずか。
 

窓からの景色
最後のクラスで使っていた教室より

 
とはいえ、もちろんこの学校で学んだことは無駄じゃなかった。一番よかったのは、基本的なことだけど文法。来る前は、もうけっこう自分で勉強したし、文法はそんなにやらなくてもいいと思っていた。でも、実際にはぜんぜん身に付いていなかった。一人でやっているとどうしても自己流で解釈してしまい、分からないところがそのままになってしまうし、間違いだと気づかないまま過ぎてしまうこともたくさんある。パリカトの授業では細かいところまでしつこくやってくれる上に、外国人が苦手なポイントを押さえているので、今までなんとなく分かったつもりになっていた点がクリアになり、知らなかったルールや実際の使い方を詳しく学ぶことができた。この点では本当に価値があったと感じている。きちんとしたフランス語を身に付けられるから、まだ基礎ができていない場合はパリカトのような学校で勉強するのがたぶん正解。

そして価値があったのは先生たちも同じ。このブログでも何度か書いているけれど、ここの先生たちは本当に一流揃い。授業もそれぞれ計画的に準備されているし、個性が出ていて面白い。何より、人柄が信頼できる面々ばかりだったので、いい意味で予想を裏切られた。いくらこちらが熱心でも、先生がイマイチだとなかなかモチベーションも維持できないし、逆に相性のいい先生が担当になれば授業も楽しい。まあどんな学校でも言えることではあるけれど、いい先生に当たる確率が高いというのは安心感がある。もちろん、これはフランス語そのものの授業だけでなく、文明講座も同じ。私の場合は映画だけど、選択した2講座どちらも素敵な先生だった。何かを学ぶ場合にはその内容だけでなく、指導してくれるのがどんな人かも重要。

そんなわけで、基礎固めに関しては質の高い指導の下、かなりの成果があった。これも散々書いているように、文法を知っているからといって会話ができるわけじゃないけれど、それでもやっぱり文法は必要で、使い方が理解できるようになるにつれて、書くのはもちろん話すのも前よりは楽になってきた気がする。書ければしゃべれる、というのはすでに英語で実感済みなのだけど、日本にいるときは、フランス語もそれなりに書けるのになんでしゃべれないのだろうと、もどかしく感じていた。でも、今思えば基礎があやふやだったのだ。パリカトであらためて文法を学んだことで、ようやくかみ合ってきた気がする。書くスピードが少しずつ上がるのにつれて、話す能力も高まってきているのだと信じたい。

ただ、ましになってきたとはいえ、スムーズに言葉が出てくるというにはほど遠いし、聞き取りに関してはまったくできるようになった気がしない。話す練習というのは通常の授業では基本的にないのだけど、前より楽になったのは、ボランティアの先生たちによる会話のクラスに出続けたこともあるかもしれない。これは週に1、2回と頻度は高くなかったものの、やっぱり積み重ねなのか、フランス語で考えて言葉にする機会が定期的にあったことが大きいのだと思う。逆に聞き取りは、授業の中でもよく練習問題をやらされたけれど、いつまでたってもさっぱり分からない状態。まあ授業では、何度か音声を聞いて答え合わせをして終わりだから、これは大きな課題として今後も自分で集中的に取り組まなければ。“ある日、突然聞こえるようになる”という感覚は、残念ながらまだ来ていないし、きっとこれからも来ないだろうなあ。

それにしても不思議なのは、人によって上達のスピードがぜんぜん違うこと。短い期間でびっくりするぐらいできるようになる人もいれば、逆に1年経ったけど失礼ながらあんまり変わってないのかなーという人もいる。これは年齢や国籍に関係なく、できる人はできるし、できない人はできない。言葉というのは、自然に身に付けられればそれに越したことはないけれど、母語を獲得したあとに他の言語を学ぶ場合には「勉強」になってしまうので、どうしても得意な人とそうでない人が出てきてしまう。それほど苦労しなくてもなぜかどんどん吸収できる人もいれば、私が理数系はまったくダメなように、いくらやっても語学が苦手という人も少なくないはずだから、人によって習得具合に差が出るのは仕方のないことだし、ある程度時間がかかるのも当たり前。とはいえ、それなりに語学が得意でコツコツ勉強を続けてきた自分を1年足らずで追い越してしまう人を見るとやっぱり悔しいし、なかなか思うようにレベルが上がらないことに焦りも感じる。言葉の勉強に終わりはないのだろうけど、本当にどれだけやれば身に付くんだろうか。外国語を習得するのと、例えば司法試験に合格するのと、一体どっちが難しいんだろうとどうでもいいことを考えてしまったりする。

 罫線

 
1年間を振り返って感じるのは、今さらだけどやっぱり必死で勉強しないと上達は難しいんだろうなということ。毎日、学校に通っているだけでは不十分だし、家で宿題をやるだけでも不十分。それこそ受験勉強のように、できる限りの時間を使って本気でやらなければ、言語を習得することなんてできないのだ。というのも、行き詰まりを感じてネットで他の人の学習方法を調べたりすると、語学の上達に成功した人というのはみんなそんな風に勉強しているようだから。これだけやっているのに、と思いがちだけど、まだまだそんなことを言えるほどやっていない。

留学したら、ではなくて、一定期間集中して勉強すればレベルアップするはず。フランスに来る前にはそんな風に考えていたけれど、まあその通りだった。留学自体にそれほど効果があるわけじゃなく、結局は自分で努力することが大事だということは分かっていたのだけど、パリで生活することも目的の一つだったから、その欲求通り遊びもほどほどに楽しんでいる。だって、やっと思いがかなってここに住んでいるのに、勉強するだけなんてもったいない。それなら仕事を辞めれば日本でだってできるし。・・・なんて思っているから、上達もほどほどなんだろうな。

 

最終日の授業はやっぱり打ち上げ

 

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滞在許可証の更新③

書類を誤って管轄違いのVal-de-Marneの警察署に送ってしまい、また最初からやり直すハメになった、というのが前回の話。更新手続き自体はまあいったん放っておいてOKなのだけど、取り急ぎ、新しい滞在許可証ができるまでの間、合法的にフランスにいることを証明してくれるレセピセをもらいにいかなければいけない。もう朝から並ぶのはうんざりだし、今の滞在許可証の期限が切れる9月3日までにあればいいのだから、最初は8月の夏期講習が終わってからにしようかなと思っていた。ただ、この国のことなので何があるか分からないし、やっぱりこういうのは早い方がいい。というわけで、5時間並んだ日の3日後にいやいやながらもう一度行くことを決心。前回、授業を休むという連絡をせず先生に怒られたから、今度は前日に口頭でちゃんと知らせたのだけど、先生の反応が笑えた。「ああ、恥ずかしいわ。あなたの警察署はちゃんとしている?」って!自国の役所仕事がぜんぜん機能せず、生徒たちが大変な思いをしていることをちゃんと分かっているのだ。この学校の先生たちを見ている限り、フランス人が適当でいい加減で仕事嫌いだという国民性を持つことが信じられないのだけど。

レセピセをもらうためには、3カ月分の家賃支払い証明書または電気、ガスなどの請求書が必要。前回、あまりにも疲れたので帰ってきてから何も準備していなかったのだけど、家賃支払い証明書はアパートの管理事務所ですぐにもらえるから、まあ問題ない。それよりも、写真を用意しなければ。Val-de-Marneの警察署に4枚も送ってしまい、それらはおそらく処分されたから、もう日本から持ってきた写真がなくなってしまったのだ。まったく、信じられない対応。ただ、フランスにも日本と同じような証明写真ボックスがあり、どうやら簡単に使えるらしい。数も多く、たいていの駅に設置してあるので、学校帰りにさっそく寄ってみた。

 証明写真ボックス

 
説明は全部フランス語だけど、たぶん言葉が分からなくても使える。日本のものとは違い、撮り直しもできるところが便利。ただ、おつりが出なくて、きっちり5ユーロ払わなければいけないのはやっぱりフランス。そんな都合よくぴったりの金額なんて持ってないって。

写真は無事にできたので、次は管理事務所へ。家賃支払い証明書は、本来ならば毎月、家賃を支払う度にもらえるものなのだけど、これまでは業者を通して払っていたため自分の手元にない。でも、最初にVal-de-Marneの警察署に送る書類を準備していたとき、滞在許可証の更新手続きには必要だからといってすぐに印刷してくれたので、何も心配していなかった。ところが、事務所にいくといつもの女の人がいない。どうやらバカンス中だったようで、代わりに対応してくれたのがこのアパートの責任者である神父さん。神父さんだけあってすごく親切なのだけど、書類のことはよく知らない。まずは、念のため持っていこうと思っていた住居証明書をお願いしたところ、ひな型の保存場所が分からないらしく、5分ぐらいMACのデスクトップを探し回った挙句、結局みつからなかったようで、まさか今日中にもらえないんかなー、明日の朝早く出ないといけないのになーと不安に思っていたら、神父さんの前の画面上に白紙のワードが。なんと、印刷されたフォーマットを見ながら、一から文字を打っている!うーん、その手があったか。

どうも神父さんは、部分的に文字を大きくしたり色を変えたりする方法を知らないようで、仕上がりがフォーマットとは多少違ったのだけど、まあ別にそんなのどうでもいい。それによく見ると、ひな型にはない「賃借人は毎月、家賃を支払っていることを証明する」との一文を追加してくれていた!というのも、肝心の家賃支払い証明書もどこにあるのかまったく知らないようで、結局もらえなかったのだ。確かに、今までの手続きはすべてこの住居証明書のみで済んでいるから、これがあれば十分なのかもしれない。でも、とはいえやっぱり不安。たった数枚の書類のために何度も行く事態だけは避けたい。どうしよう、と考えた末、そういえば電気代の請求書は1年分まとめてきていたから、それを持っていけばいいのだと思い当たる。これで書類は大丈夫。

準備万端で、再び早朝に出発。前回より20分遅い7時20分に到着すると、きっちり20人ぐらい並んでいる人が多くなっている。ただこの日は最終テストの前日で、また会話のテストで話すネタと文章を考えなければいけなかったから、前よりずいぶん時間が過ぎるのは速かった。9時ちょっと前、また職員が出てきて整理券を配布し始める。前回の若いお姉さんとは違い、見るからにキツそうなおばさん。でもまあ、入れればなんでもいい。と思っていたのだけど・・・。

 警察署入り口

 
10時ごろ、ようやく入り口前にたどり着き、レセピセをもらいに来たことを伝えておばさんに書類を見せると「ああ、あなた今日じゃないわよ。滞在許可証は9月3日まで有効なんでしょ?9月3日に来て」。は?でもこの前、担当の人に、9月3日より前に来るよう言われたんですけど。「とにかく今日じゃないから。今日は入れないわよ。はい、終わり。次の人」って簡単に言うなよ。もう2時間半待ってるんだけど!こっちも頭に来て食ってかかるけれど、ぜんぜん折れない。「もう終わり!もう終わりって言ってるでしょ!次の人!」。後ろの人がおそるおそる用件を切り出すものの、そうはさせない。悪いけど割って入る。いや、あんたらが来いって言ったんだろーが!だから授業休んでわざわざ来たのに、どうしてくれんのよ!じゃあ最初から9月3日に来るように言えよー!!って、心の中では叫んでいるけれど、言葉がすぐに出てこないってつらい。こっちが話し終わる前に向こうがまくしたてるから、言いたいことがぜんぜん伝わらない。結局、3分ぐらいの押し問答の末、「じゃあ9月3日に来ればいいってこと!?間違いない!?あーそう、ご親切にどうも!」と捨て台詞を残して立ち去る結果に。後ろに並んでいる人たちみんなが見ていたけれど、まったく気にならなかった。きっと誰もが同情してくれていたと思う。こういうのは日常茶飯事だから、外国人ならみんな同じ気持ちなのだ。それにしてもああ、もう悲しすぎる。どうしてくれるんだ、この無駄な時間!!

どうしようもなくイライラするけれども、またまた別の日に出直さなければいけない。この2週間で5回か。カレンダーを見ると9月3日は日曜だったので、1日の金曜に行くことにする。もし今度何か言われたら、4日に飛行機に乗らないといけないから、とでも言って、何としても入れてもらうつもりだった。実際、旅行や帰省のために今すぐレセピセをもらいたいという人はたくさんいるはずなのだ。
 

道路
バスもあるけど路線がよく分からないので20分歩く

 
5回目。朝7時半すぎと到着がまた少し遅くなったのだけど、週末だからなのか列にいる人がこれまでより少ない。とはいえ、待つのは長い。9時前、同じように職員の女性が整理券を配り始める。この前のおばさんじゃない!よかったー。しかも今度の人は、レセピセをもらいに来たと言うと滞在許可証の日付も確認せず「じゃああっちの列に並んで」だけ。ああ、前回この人だったら、すんなり入れてもらえたのに。担当者によって言うことが違う、それがフランス。ついてなかったとあきらめるにはあまりにも腹立たしいのだけど、これがこの国では普通なのだ。どんなことが起きてもそれが人生、ありのまま受け止めよう、というフランス人の考え方が、日本では賞賛や憧れの対象になったりするけれど、万事がこんな調子で進んでいくのなら、そう思うのが自然というかそうするしかないんだろうなあ。フランス人にとっては極めて普通の思考なんだろうけれど、何もかもがスムーズな日本では逆に新鮮な価値観なのかも。

とにかく中に入れて一息ついたものの、何と終わったのは午後4時半だった。9時間待ち・・・。昼からは座れたのだけど、何もすることがない。スマホも単語帳もいい加減飽きたし、もちろんお昼も食べないまま。しかも、どういう仕組みになっているのか、私より明らかにあとから来た人たちが先にどんどん呼ばれていくのだ。最後には仕事の終わった職員までが、待っている私たちに向かって「さようなら。よい週末を」と言い残し帰っていくっていう、日本では絶対にない光景も。日本なら“お客さん”がいる限り、自分の仕事が終わっても残って手伝うのが、少なくともそうしないといけないと思うのが一般的だけど、それをやると結局、どんどん残業が増えていくわけで、そういう風にやってきたことのマイナス面も今、大きくなってきている。フランスは日本より残業は少ないだろうけど、その分、サービスを受ける側に回ったときは我慢しなければいけないことも増える。だから、どちらの社会がいいかは人によるし、どちらがいいと一概には言えないのかもしれない。なんとなくそんなことを考えてしまったのだけど、ここで9時間も待たなければいけないのは、フランス人が残業しないことが原因じゃないはず。

そんなわけで、なんだかものすごく苦労してやっと手にしたレセピセ。もらってみると普通の紙だったのだけど、ひとまずこれで合法的に滞在が許可されたことになり、引き続きここにいることができる。なお、レセピセの有効期間は6カ月のようだから、それまでにちゃんと滞在許可証をつくってもらわないと。

 レセピセ

 
さて、やっと一つ終わったとはいえ、また1月に新しい滞在許可証をもらうための書類を提出しにいかなければいけないのが恐怖。というのも、一応予約はしているのだけど、これがあれば並ばなくてもいいのかどうかがよく分からないのだ。入り口前の看板にある青の項目「Etrangers avec convocation」は「呼び出し状を持っている外国人」という意味なのだけど、「convocation(呼び出し状)」に「rendez-vous(予約)」が含まれるのかは不明。まあこれも、当日の担当者によって解釈が分かれるんだろうけど、8月と1月では訳が違う。また2時間以上、外で待たなければいけないとしたら、考えただけでつらすぎる。

 列の看板

 
書類提出後は長い書類審査があるはずだから、実際に滞在許可証がもらえるのは3月ぐらいかな。学生の場合の更新は最大1年で、それ以降はまた1年ごとに更新が必要になるから、仮に再延長する場合、許可証をもらったと思ったらもう次の更新手続きに入らなければいけないことになる。逆に、今回のタイミングで数カ月だけ延長して年内いっぱいで帰るつもりだったとしたら、正式な手続きが始まる前にレセピセのまま出国することになる。なんて適当な制度。

ところで、心配なことがもう1点あった。今もらっている住宅手当アロカ=アロカシオンを管理するCAFから、新しい滞在許可証をもらったらすぐコピーを送るようにとの手紙が2カ月ほど前に来ていたのだ。これを送らないと、帰国したと思われて支給が打ち切られ、また面倒な手続きをしなければいけないのかと不安になり、取り急ぎCAFにメールで事情を説明。レセピセをもらったらすぐにコピーを送ると書いたものの、それに対する返信(なんと次の日に返ってきた!)は「滞在許可証がない間は支給を一時停止します」。結局そうなの?じゃあレセピセのコピーは送らなくていいや。あとでよく調べてみると、アロカを止めるにはそのための手続きが必要で、それをしない限り支給自体が勝手に打ち切られることはないよう。よかった。

それと、もう一つラッキーなことが。このアロカ、入居の翌月から受給権利があるのだけど、私は手続きが遅れてしまったために、3カ月分受け取り損ねたと思っていた。でも、アロカは毎月、前月分の家賃に対して支払われているみたいで、もしそうなら3カ月分ではなく2カ月分だったことになる。損したことに変わりはないけれど、それでもだいぶ救われた。悪い面があればいい面もある。腹立たしく悩ましく、不愉快にさせられることも多いけれど、一方で刺激と魅力に満ちあふれた国。奇妙で美しい、ここフランスで、2年目の暮らしが始まる。

 
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オランジュリー美術館前
こういう景色を見るとパリにいることを実感