1年間の成果

パリはもうすっかり秋。8月から気温の低い状態が続いていたけれど、9月に入ってからは20度に達する日も少なくなり、出かけるときはトレンチコートやレザージャケットを羽織っている。最近は、冬用のコートを着ている人を見かけることも増えてきた。特に夜は冷えるので、早くもフリースが活躍。1年前に来たころはけっこう暑くて、しばらくは半袖を着ていたことを覚えているのだけど、今年は例年に比べても気温が低いよう。おまけに毎日、雨またはくもり。結局、いろいろな事情から旅行はやめることにし、学校が始まるまでパリを満喫しようと思っていたのに、ぜんぜん街歩きができない。そもそも出歩ける季節が短いのに、こんなに天気に邪魔されるとは。でも、パリではきっとこういう灰色の空が普通なのだ。

さて、パリカト(パリ・カトリック学院)での1年間の授業がついに終了した。最終的にB2-1のレベルの修了証をもらったのだけど、平均点は20点満点中半分ぐらいしかないし、実際にはとてもそれだけの実力は身に付いていない。自分でどれだけ上達したかは分からないけれど、まあ語学の能力というのは、想像していたよりもはるかに伸びるスピードが遅いことを実感している。人によって差は当然あるものの、1年間の留学で得られることなんてほんのわずか。
 

窓からの景色
最後のクラスで使っていた教室より

 
とはいえ、もちろんこの学校で学んだことは無駄じゃなかった。一番よかったのは、基本的なことだけど文法。来る前は、もうけっこう自分で勉強したし、文法はそんなにやらなくてもいいと思っていた。でも、実際にはぜんぜん身に付いていなかった。一人でやっているとどうしても自己流で解釈してしまい、分からないところがそのままになってしまうし、間違いだと気づかないまま過ぎてしまうこともたくさんある。パリカトの授業では細かいところまでしつこくやってくれる上に、外国人が苦手なポイントを押さえているので、今までなんとなく分かったつもりになっていた点がクリアになり、知らなかったルールや実際の使い方を詳しく学ぶことができた。この点では本当に価値があったと感じている。きちんとしたフランス語を身に付けられるから、まだ基礎ができていない場合はパリカトのような学校で勉強するのがたぶん正解。

そして価値があったのは先生たちも同じ。このブログでも何度か書いているけれど、ここの先生たちは本当に一流揃い。授業もそれぞれ計画的に準備されているし、個性が出ていて面白い。何より、人柄が信頼できる面々ばかりだったので、いい意味で予想を裏切られた。いくらこちらが熱心でも、先生がイマイチだとなかなかモチベーションも維持できないし、逆に相性のいい先生が担当になれば授業も楽しい。まあどんな学校でも言えることではあるけれど、いい先生に当たる確率が高いというのは安心感がある。もちろん、これはフランス語そのものの授業だけでなく、文明講座も同じ。私の場合は映画だけど、選択した2講座どちらも素敵な先生だった。何かを学ぶ場合にはその内容だけでなく、指導してくれるのがどんな人かも重要。

そんなわけで、基礎固めに関しては質の高い指導の下、かなりの成果があった。これも散々書いているように、文法を知っているからといって会話ができるわけじゃないけれど、それでもやっぱり文法は必要で、使い方が理解できるようになるにつれて、書くのはもちろん話すのも前よりは楽になってきた気がする。書ければしゃべれる、というのはすでに英語で実感済みなのだけど、日本にいるときは、フランス語もそれなりに書けるのになんでしゃべれないのだろうと、もどかしく感じていた。でも、今思えば基礎があやふやだったのだ。パリカトであらためて文法を学んだことで、ようやくかみ合ってきた気がする。書くスピードが少しずつ上がるのにつれて、話す能力も高まってきているのだと信じたい。

ただ、ましになってきたとはいえ、スムーズに言葉が出てくるというにはほど遠いし、聞き取りに関してはまったくできるようになった気がしない。話す練習というのは通常の授業では基本的にないのだけど、前より楽になったのは、ボランティアの先生たちによる会話のクラスに出続けたこともあるかもしれない。これは週に1、2回と頻度は高くなかったものの、やっぱり積み重ねなのか、フランス語で考えて言葉にする機会が定期的にあったことが大きいのだと思う。逆に聞き取りは、授業の中でもよく練習問題をやらされたけれど、いつまでたってもさっぱり分からない状態。まあ授業では、何度か音声を聞いて答え合わせをして終わりだから、これは大きな課題として今後も自分で集中的に取り組まなければ。“ある日、突然聞こえるようになる”という感覚は、残念ながらまだ来ていないし、きっとこれからも来ないだろうなあ。

それにしても不思議なのは、人によって上達のスピードがぜんぜん違うこと。短い期間でびっくりするぐらいできるようになる人もいれば、逆に1年経ったけど失礼ながらあんまり変わってないのかなーという人もいる。これは年齢や国籍に関係なく、できる人はできるし、できない人はできない。言葉というのは、自然に身に付けられればそれに越したことはないけれど、母語を獲得したあとに他の言語を学ぶ場合には「勉強」になってしまうので、どうしても得意な人とそうでない人が出てきてしまう。それほど苦労しなくてもなぜかどんどん吸収できる人もいれば、私が理数系はまったくダメなように、いくらやっても語学が苦手という人も少なくないはずだから、人によって習得具合に差が出るのは仕方のないことだし、ある程度時間がかかるのも当たり前。とはいえ、それなりに語学が得意でコツコツ勉強を続けてきた自分を1年足らずで追い越してしまう人を見るとやっぱり悔しいし、なかなか思うようにレベルが上がらないことに焦りも感じる。言葉の勉強に終わりはないのだろうけど、本当にどれだけやれば身に付くんだろうか。外国語を習得するのと、例えば司法試験に合格するのと、一体どっちが難しいんだろうとどうでもいいことを考えてしまったりする。

 罫線

 
1年間を振り返って感じるのは、今さらだけどやっぱり必死で勉強しないと上達は難しいんだろうなということ。毎日、学校に通っているだけでは不十分だし、家で宿題をやるだけでも不十分。それこそ受験勉強のように、できる限りの時間を使って本気でやらなければ、言語を習得することなんてできないのだ。というのも、行き詰まりを感じてネットで他の人の学習方法を調べたりすると、語学の上達に成功した人というのはみんなそんな風に勉強しているようだから。これだけやっているのに、と思いがちだけど、まだまだそんなことを言えるほどやっていない。

留学したら、ではなくて、一定期間集中して勉強すればレベルアップするはず。フランスに来る前にはそんな風に考えていたけれど、まあその通りだった。留学自体にそれほど効果があるわけじゃなく、結局は自分で努力することが大事だということは分かっていたのだけど、パリで生活することも目的の一つだったから、その欲求通り遊びもほどほどに楽しんでいる。だって、やっと思いがかなってここに住んでいるのに、勉強するだけなんてもったいない。それなら仕事を辞めれば日本でだってできるし。・・・なんて思っているから、上達もほどほどなんだろうな。

 

最終日の授業はやっぱり打ち上げ

 

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2件のコメント

  1. 今年9月よりノルマンディー地方に語学留学してます。
    私は英語は全く出来ず、フランス語はダラダラ続けているけど文章が読めない、書けない。
    文章構造を理解する能力に欠けているんですよね、、、あと語彙力も。
    今のクラスはB1、作文課題が全然ダメです。
    もっと頑張らないと…
    ペンさんの記事、非常に共感する部分が多く、いつも更新を楽しみにしてます。

    パリと同様に、こちらも雨が多いです。
    ペンさんの訪れたパリの風景を、学校が休みの時に訪れてみたいですね。

    1. こんにちは。コメントありがとうございます。いつも読んでいただいているとのこと、とてもうれしいです。
      文章構造を理解・・・そういうことを考えなければいけないところに、外国語を学ぶことの難しさがありますよね。日本語がこんなにも自動的であることが不思議に思えてきます。
      ノルマンディー、前から行きたいと思いつつ、天気の問題もあって(笑)いまだに実現していません。
      パリは本当に美しい街ですよ。機会があればぜひ来てくださいね。

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