アロカシオンの申請①

フランスで生活する人にとって重要なもの、その一つがアロカシオンと呼ばれる社会保障制度。家族手当や失業手当、そして私のような留学生にも関係のある住宅手当がある。これはつまり家賃補助で、留学生の間では略してアロカと呼んでいる。国籍に関係なく、フランスで学生をしている人なら受け取る権利があるという、なんともありがたい、そして充実した制度。ただ、申請するには条件がある。

①3カ月以上滞在する場合に必要な滞在許可証があること
(ただしワーホリビザやビジタービザの場合は不可)
②一定以上の収入がないこと
③それなりに快適な住居であること(質素すぎてもNG)
それから、補助金は銀行振り込みなので、フランスの銀行口座を持っていることも必須。

このアロカという制度、留学の準備を始めた早い段階で知っていたのだけど、もう10年以上社会人をやっている自分は②に当てはまらないので関係ないと思い込み、ぜんぜん情報を調べずにいた。ところがこれは、どうもフランス国内での収入のことらしいと気づき、出発直前に留学業者に確認してみたところ「対象になりますよ」とのこと。ここまでに思ったよりお金を使ってしまっていたので、フランス政府に感謝。

アロカの受給資格があるのは入居の翌月から。私は9月入居だから、10月分からもらえるはず。とはいえ、滞在許可証をもらえたのが12月末だったから、それまではどうせ申請できないしと思い放っておいた。何しろ、着いた当初はまだ生活にも慣れていなかったし、ほかの手続きもあったし、いっぺんにいろいろ考えられなかったのだ。それに何より、このアロカの申請については、あんなに大金を払ったにもかかわらず業者の留学プログラムに含まれていないとのことで、まったくの一から自分で全部やらなければいけなかったから(まあ、ほとんどの人はそうしていると思うのだけど)、つい後回しにしてしまった。ただ、経験者のブログなんかを見ていると、申請が遅れても3カ月分まではさかのぼって支払われると書いてあったので、まあ大丈夫だろうと軽く考えていた。でもこれが、後で予想外の結果を招くことになる。

申請手続きは、アロカを管理するCAFという機関に対して行う。事務所まで申請書をもらいに行く、ホームページからダウンロードするなどいくつか方法があるようだけど、私が選んだのはもっとも手軽なネット上での申請。ただこれ、ものすごく分かりにくい。まず、トップページからどこにいけばいいのかで迷ってしまう。ブログなどでもあまり情報がなく、このややこしさも放置していた理由。やっと滞在許可証をもらえたときも、日本の感覚でなんとなく年末には聞きづらくて、年が明けてからまずはダメ元で業者の現地サポーターに連絡。ただ訳してほしかっただけなのだけど、案の定「やったことないので(=サポート内容に含まれてないから)」とやんわり断れ、仕方なくこのアパートの管理事務所にパソコンごと持ち込んで最初から教えてもらった。思った通り、記入するべきページ自体、間違っていたのだけど、アパートの区割り番号だとか部屋の面積だとか、知らない内容まで入力しなければいけなかったから、一人では絶対に無理だった。契約は全部業者を通したので、家賃さえこのとき初めて知ったのだ。
 

CAFホームページ
CAFホームページのトップページ(http://www.caf.fr/

 
幸い、ここの管理事務所の人たちはとてもやさしくて、30分ぐらいかかってようやく完了するまで付き合ってくれた。滞在許可証の番号などがいるのかと思っていたけど記入の必要はなし。登録が終わるとすぐにSMSでパスワードが届き、これを使ってCAFのホームページから自分だけの専用ページにアクセスできる。次に、入力したばかりの個人情報が記載されたPDFをダウンロードし、パスポートのコピー、滞在許可証のコピー、出生証明書とともにCAFに提出するのだけど、ここでまた問題発生。

出生証明書というのは日本でいう戸籍のことで、原本とフランス語に訳したもの自体は日本でビザを申請するときにも必要だったからそのまま持ってきたものの、発行が7カ月前。みんなのブログでは、3カ月以内とか半年以内とか、最近のものじゃないといけないとなっている。たださらに検索してみると、発行日は問われないとか、そもそもこの出生証明書の提出自体、必要なかったという人もいて、まあ適当なフランスのことだし、とりあえず持っているものをそのまま出してみることにした。ちなみに、翻訳も誰がしてもいいわけじゃなくて、公的に認められた機関や専門家によるものじゃないといけないんだそう。まあ、さすがに私の業者はその辺はちゃんとしていたのだけど。パリにある日本大使館でも翻訳はしてくれるけれど(有料)、6カ月以内に発行された原本が必要。だからこれを日本から持ってくるのを忘れると、なかなかやっかいだ。

さて、書類がそろったところで提出。これも、郵送すると紛失する可能性があるし、書類に不備があると時間がかかるから、直接行って渡した方がいいとたくさんの人が書いている。ところが、私の地区を管轄するVal-de-MarneというところにあるCAFはすべて予約制になっていて、予約を取るまでに“本当に来所が必要ですか?”みたいな表示が何度も出てくる。ここまでされるとさすがに提出のためだけに行くのはためらわれて、結局郵送することにした。ただ、普通郵便だと心配なので、以前、移民局へ書類を送ったときに利用した受領証付き書留を使うことに。でも、このときは日本人サポーターが一緒でほとんど全部やってくれたから、やり方がぜんぜん分からない。仕方なく郵便局のおばさんに聞いてみたところ、ちゃんと一つずつ教えてくれて、無事手続き完了。フランス人は冷たいというイメージを持っている人もいまだに多いかもしれないけれど、私は今のところ、まったくそんな実感はない。むしろ、知らない人とでも気軽に会話が始まったりするところは、日本より人間味にあふれている気がする。そんなわけで、ここまでは順調にきたアロカ申請、次回以降につづく

 

家族をイメージしていると思われるアロカのロゴ

 

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春学期がスタート

旅行にいくと3週間の休みもあっという間。まだ真冬の寒さが続く中、新学期が始まった。初日は私も含めて生徒12人。秋学期に引き続き、かなり多いなという印象。年齢、国籍もまたさまざまで、学生から50代近くと思われる人まで、中国や韓国、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどアジア人はもちろん、スウェーデン、コロンビア、シリアなどの学生もいる。そして驚いたことに、日本人が私一人!こんなことってあり得るんだろうか。今まではどのクラスにいっても必ず自分のほかに日本人がいたのに。なんだかこれってけっこう心細い。前学期のメインのクラスで一緒だった人たちは、同じレベルでも曜日と時間が異なるクラスに登録したようで誰もいないし。ただ、映画のクラスで一緒だった生徒が3人いるので、ちょっと安心。前学期に同じ授業を受けていた人とは、校内で偶然会ったときもうれしくてつい「Ça va?(元気?)」と声を掛けてしまう。高校までは毎年クラス替えがあったから、新学期が始まってしばらくは知った顔を見ると別に仲良くなくてもほっとしていたけれど、まさに今、そんなかんじだ。
 

文房具

 
今度の先生は女性で、すごく明るく、すごく早口。前の先生は穏やかにしゃべってくれたから内容もほとんど聞き取れたのだけど、この先生の言うことはたぶん半分ぐらいしか理解できていない。それに、前の先生みたいに授業中はiPadを使って後からメールで送ってくれるんじゃなく、昔ながらの黒板にチョークで、どんどん消しながらどんどん新しいことを書いていくから、ノートを取っている間は話を聞けず、逆に話を聞いていると書き切れないことも多い。うーん、これはなかなか思っていたより難しい。先生にもよると思うけど、前学期とは明らかにレベルが違う。発言どころか、ついていくのに必死で、何を質問されているのかさえ分からないことも多いのだ。しかも例によって、周りのみんなは聞き取りはよくできているようだから、私と同じように感じている人はあまりいなさそう。だからよけいに、日本人がいないことが寂しい。

まだ2日目だけど、今度の先生はテキストを使わず、授業の進め方もかなり独特。でも内容自体はおもしろくて、特に今日はフランスの雑誌や新聞の話題だったから、興味を持って話を聞けた。ただ、せっかく専門ともいえる分野なのに、発言する余裕がぜんぜんなかったのは残念だけど・・・。ちなみにこの先生は今学期の映画の先生でもあるので、どんなかんじの授業なのか楽しみでもあり、ちょっと不安でもある。いずれにしろ、前学期と同じく最初の2週間はお試し期間で、授業を受けてみていまいちならクラスを替えることもできるし、レベルを替えることもできる。ただ私は、少なくともレベルを変更するという選択肢はないから、しんどくてもここで頑張るしかない。でもまあ、この2週間に日本人が一人でも入ってきてくれるとうれしいなあ。

 

授業で使ったフリーペーパー。表紙の写真がいい授業で使ったフリーペーパー。表紙の写真がいい

突然の旅計画

バカンスに入った先週、フランスが中央になっている世界地図をたまたま目にした。何気なく見ていたけれど、よく観察してみると、キューバが近い。キューバといえば、もう何年も前から行きたいと思っていた国。でも何しろ日本からは遠いので、片道だけで1日かかる上に、航空券も高い。格安のものでも常に往復30万円ぐらいだから、さすがになかなか手が出なかった。フランスに来る前も、日本が真ん中になった地図を見慣れていたためにヨーロッパからはカリブ海がけっこう近いということに気付かなかったし、フランスからわざわざ行くこともないだろうと思い、この留学中にキューバを旅行することはまったく考えていなかった。

でも、試しに航空券を調べてみると、なんと往復7万円!安くはないけど、日本から行くのに比べたら格安だ。しかも直行便。今はたとえトランジットでもアメリカ行きの便には乗りたくないし、10時間以内で行けるのはうれしい。すぐに決断、その場でチケットを予約しようと思ったけれど、いったん冷静になって情報収集。国によってはビザや予防接種が必要なので、もしキューバがそうだった場合、チケットを取っても出発までに間に合わない可能性があるからだ。早速、パリのジュンク堂で『地球の歩き方』を買ってきた。やっぱり事前に調べてよかった。キューバに入国するには①ツーリストカード②海外旅行保険の英文の契約証明書(ただしアメリカ系保険会社のものは不可)がいると書いてある。
 

地球の歩き方

 
①はよく分からないので後からやることにして、まずは②から。そういえば、留学中の海外旅行の場合、保険ってどうするんだろう?ここに来る前、留学用の長期海外旅行保険には入ってきたけれど、これが有効なのはフランス国内のみ。クレジットカード付帯の海外旅行保険は出国から90日間が対象だから、これも使えない。まあ今どき、空港に行けば保険の自動販売機があるけれど、不確実なことはできれば避けたい。ネット上で入れるものもたくさんあるとはいえ、海外から日本の保険会社と契約することはできないし、パリにある日本の旅行代理店に頼もうかとも考えてみたけれど、結局はそこまで悩む必要はなかった。ネットで航空券を予約するときに保険加入の有無を確認する項目があり、そこから手続きできたからだ。たまたまだったのかアメリカ系ではなかったし、英文の契約証明書もすぐにメールで送られてきた。ただ探してみると、海外から入れる日本語の保険サイトもあったので、次に旅行するときも心配する必要はなさそう。海外旅行保険は入るべきかどうか迷うところだけど、7年ぐらい前にブエノスアイレスでリュックごと全貴重品を盗まれるというアクシデントに遭遇してからは、必ず入るようにしている。このときはだいぶ補償してもらえたので助かった。

次に①のツーリストカード。ビザのようなものらしいけど、入国の際は滞在期間に関わらず必要だとのこと。でもこれ、入手方法が面倒くさい。地球の歩き方には、日本で入手する場合、旅行会社に頼むか東京のキューバ大使館に申請すると書いてある。じゃあパリで手に入れるには?これもパリにあるH.I.S.やJTBに問い合わせようか考えてみたけれど、ホームページを見る限り、キューバ旅行まで扱っていなさそう。悩んだ結果、パリのキューバ大使館に行けばいいのではと思い当たった。ホームページを調べてみると、ちゃんとツーリストカードの申請について書いてある。よかった。というわけで翌日、15区にあるキューバ大使館へ。
 

キューバ大使館

 
写真右側の屋根だけ見えている白い建物の中に入ると、意外にも20人ぐらいの人が待っている。ホームページには、ツーリストカードの申請に必要なものが書かれてあったのだけど、事前にこの箇所を見つけられなくて、まあ大使館に入るのだから身分証明書ぐらいいるだろうと思いパスポートを持っていったのは正しい判断だった。担当のお姉さんに「パスポートとBDA(ベーデーエー)を出して」と言われて「BDAって何?」と聞き返したら、billet d’avion=航空券のことだった。前日、保険契約書とツーリストカードが何とかなりそうだと分かった時点で購入済みだったので、スマホの画面を提示。日本語だったのだけど、日付と空港だけはこちらの人にも分かる表記だったので「ああ、オッケー」と簡単に納得してくれた。数字とアルファベットが世界共通でよかった。無事、ツーリストカードをもらえたのだけど、実はこれ、ただじゃない。こうやって直接取りにいっても22ユーロ、郵送してもらったり旅行代理店で頼んだりした場合はもっと高くつく。それにしても面倒な制度だ。けっこういろいろな国に行ってきたけれど、こんなのは初めて。空港によってはこのツーリストカードを置いて(売って)いたり、機内で配ってくれるところもあるらしいけど、なんで全部そうしてくれないんだろうか。まあたとえ持っていなくても、キューバの空港でなんとかなりそうな気もするけど……。
 

ツーリストカード

 
さて、これで最低限のことは確認できた。今、悩んでいるのは荷物。私は断然バックパック派で、もう20年近く愛用している大容量のバックパックがあるのだけど、ここにはスーツケースで来てしまったから、そのバックパックは今、日本のトランクルームで眠っている。今回、スーツケースというものを生まれて初めて使ったのだけど、まあ使いにくい。しかも、かなり大きなサイズのものを選んでしまったので、ぜんぜん思うように動かせないし、宿を求めてうろうろ歩き回る旅にはまったく向いていない。実際には重量制限があるから、サイズを大きくしたところで荷物はそこまで入れられないのだけど、使い慣れていないからそんなこと知らなかった。ただこのスーツケースは今、タンス代わりになっているから、これはこれで便利なのだけど。

そんなわけで、今はおそらく30Lと少し小さめの登山用バックパックしかない(しかも人から借りたもの)。2、3日の旅行ならこれで十分なのだけど、荷物を最小限にしてみてもけっこうぎりぎりだ。このバックパック問題は来る前から予想していて、新しいものを買おうか悩んでいるけど、日本に帰るときはスーツケースだから、買っても持って帰れないしもったいない。一番やっかいなのはコート。今までこういう旅はしたことないのだけど、寒い国から暑い国に行くときってみんなどうしているんだろう。コートは家と空港との往復時にだけ必要で、現地では完全に邪魔な荷物。コートがなければこのバックパックでなんとかなりそうなのに、これだけでかなりスペースを取る。もう最悪、寒いのは我慢して着ていかないか、いろいろ考え中。
 

バックパック

 
キューバは今、平均気温22度ぐらいで、かなり過ごしやすそう。治安もヨーロッパよりいいぐらいかも。何より、おととしアメリカとの国交が正常化したことで、キューバらしさが急速に失われていくのではと焦っていたから、ここで訪れるチャンスがあって本当によかった。いつもながら突然思い立った旅だけど、まあ行けばなんとかなる。ということで、最近、更新を怠りがちなこのブログもさらにお休み。いざ、キューバへ冒険に!

 

エアカライベスHP
初めて使う航空会社。ホームページがかわいい

 

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