アロカシオンの申請②

前々回の記事のつづき。書類関係のトラブルが多いフランスだけど、この住宅手当アロカシオンの申請もうまくいかないことが多いようで、ネット上には数カ月も不毛なやりとりをしたと嘆いている人がけっこういる。ところが、私の場合は驚くほど順調。必要書類を郵送してから1週間で配達証明が届き、アロカを管理する機関CAFのホームページから自分専用のページにアクセスしてみると、書類が受理されたという表示が出ている。なんてスピーディー。それから2、3日後には、支給開始決定とその金額の通知がきた。ちなみにこの専用ページ、新しい書類が届いてもそれを知らせてくれるシステムがないので、全部の項目を開いてみて初めて気づいたのだけど。

支給金額は、住んでいる場所や建物、個人の事情によって決まるから人それぞれなのだけど、私の場合は家賃の3分の1ぐらい。毎月の食事代が賄えるぐらいだから、かなり助かる。ひと安心したものの、書類をよく見ると、支給が今年の1月分からになっている。おかしい。確か入居の翌月分、つまり10月分からもらえるはずなのに。考えた末、申請したのが1月だったからなのではと思い当たった。でも留学業者のサイトなんかにも、申請が遅れた場合はさかのぼって支払われると書いてあるし、CAFのホームページで調べてみたところ、やっぱり入居翌月分から受給の権利があるとなっている。ただ、そこには「権利を失いたくなかったら早く申請することをおすすめします」とあるだけで、遅れた分は支払うとも支払わないとも書かれていない。3カ月分とはいえ、そのままあきらめるには金額が大きいので、一度問い合わせてみることにした。手紙にしようかとも思ったけど面倒だし、内容から考えて一蹴される恐れもある。ここは直接、行ってみなければ。そんなわけで、何度も出てくる“本当に来所が必要ですか?”という表示を無視してホームページから訪問の予約を取り、パリ郊外のVal-de-MarneにあるCAFへ向かった。

 CAF外観

 
入り口には10人ほどが並んでいて、予約がない人は容赦なく追い返されている。こういう場面、こっちでは本当によく見る。そんな中、スマホの予約画面を提示して番号札をもらい、彼らの横を抜けて建物の中へ。15分ほどで呼ばれて窓口へ行くと、目の前にはもう引退間近と思われるおばさんが。私の書類を確認して「何が問題なの?」。事情を説明すると「ああ、大したことじゃないわよ。申請した月から支給するっていうルールになっているから」と一言。いやいや、大したことじゃなくない。だって申請には滞在許可証が必要なのだ。滞在許可証は移民局の都合で呼び出されるまでもらえないわけだから、そのために申請が遅れたってこっちのせいじゃない。ということをつたないフランス語で繰り返し訴えたけれど「そう決まっているから」「説明したでしょ。もう終わり」とピシャリ。

しまいには、信じられないことに笑い出した!しかも大声で!一瞬、何が起こったのか分からなかったけど、おそらく少し離れたところにいたのであろう同僚の方を向き「この外人、いつまでもおかしなこと言ってるわよ~」と話しかけているような調子。なんなんだ、この対応。今、日本の役所でこんなことをすれば、所長がテレビカメラの前で謝罪する事態になりかねない。その後も同じようなやりとりが続いておばさんは合計3回ぐらい大笑いし、ついには「おしまい」と言って席を立ってしまった。残された私は「C’est pas vrai!(ありえない)」「C’est pas gentil!(不親切)」などと、フランス人がよく口にするフレーズを連発してみたけれど、相手がいないので何ともならない。どうしよう。このまま帰るのも悔しいし・・・と思っていると、おばさんが若いお姉さんと一緒に戻ってきた。

このお姉さんがすごくいい人で、事情を理解すると「あなたの言っていることはとてもよく分かるけど・・・」と言って、丁寧に説明を始めた。正直、この辺りのフランス語はほとんど分からなかったのだけど、まあ結局はだめなんだろうなと予想し、もうフランス語を話すのも疲れてきたので思わず英語で返事をしてしまうと、なんとお姉さんも英語に切り替えてくれた。その後のやりとりはほぼ完璧に理解できて、もし納得がいかないならうまくいくかどうかは分からないけど手紙で苦情を訴えるといいこと、そしてフランス語で書くのが難しいようなら専門家のサポートも受けられることを教えてくれた。ああ、最初からこういう“普通の対応”をしてくれれば、こっちだって冷静になれるのに。お姉さんのおかげでなんとか落ち着いて話ができたものの、あのおばさんには本当に気分が悪くなった。仕事をしていたときにもよく思っていたけれど、同じことを言うのにも言い方ってものがある。
 

ライン

 
結局、その後に体調をくずしたこともあって、手紙はまだ書いていない。そもそもこのアロカは、もちろんフランス人の払った税金が財源になっているので、私のように本当の意味でお金に困っていない留学生にとってはおまけみたいなものなのだ。実際、裕福な留学生に補助金を出すことに対して、フランス人の間には批判の声もあるらしい。それを考えると、あまりこだわるのもどうかなという気がする。ただまあ、権利があるからにはいったんは主張してみるべきだと思うけど。それにしてもおかしなシステムだ。確かに、滞在許可証はもらえた時点で提出すればよく、ネット上での申請(というか登録?)には必要ないのだけど、それはやってみるまで分からない。学校で聞いてみても支給開始月はばらばらで、ちゃんと入居翌月分からもらえている人もいれば、私と同じように申請した月の分からしか出ていない人もいる。つまり、管轄のCAF、あるいは担当者によって判断が違うということ。日本では考えられないこんな適当な対応が当たり前のフランス、とりあえず手続き関係は何でも早めにやっておくようにしよう。

 

書類
CAFから届いた書類。雑な折り方にびっくり

 

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