停滞期

楽しみに待っている“突然フランス語が聞き取れるようになる日”はまだ訪れないけれど、11月第1週のバカンス前には少し耳が慣れてきて、授業でもだいぶ発言できるようになっていた。でも、そう思ったのもつかの間で、また逆戻り。最近、またついていけなくなっている。先生はクラスのレベルに合わせてしゃべってくれるから、先生の話すことは初めから大体理解できていたのだけど、なんだかこの頃は不安定。それに加えて、テキストでも知らない単語が大量に出てくることが続き、授業ではまったく座っているだけの状態だ。学校はもちろん、街に出てもフランス語だらけだし、移動中はフランス語の音声を聞いていたり、自分の部屋でもずっとテレビをつけっぱなしにしているのに、ぜんぜん分かるようにならない。2カ月半前に日本を出発したときと比べて、何も変わっていない気がする。意味が分からない言葉はまるで音楽のよう。

 音符

 
ちょっと焦りが出てきて、なぜ聞き取れないのか、何が問題なのかを自分なりに分析してみた。このテーマは日本人にとって関心が高いようで、検索するとたくさんのサイトが出てくる(ただし英語のヒアリングに関して)。おもしろいのでいくつか見てみたところ、日本人が英語(またはフランス語)を聞いても理解できない理由としては、例えばこんなものが挙げられるらしい。

①音(単語)が聞き取れない
②音(単語)は聞き取れるけれどその言葉自体を知らない
③スピードが速すぎて意味を理解するのが追いつかない

確かにどれも納得。英語は②と③が大きいと思うけれど、フランス語はまあ全部だ。ただ今の問題は、同じ文章でも書いてあるものを読めば分かるのに、聞いた場合は理解できないということ。つまり①と③になるわけだけど、おそらく①の方が深刻。要するに、文字と音が一致していないのだ。以前にフランス語の発音の中で少し書いたけれど、この①に関してはディクテーションをすることによってかなり解決できた部分がある。フランス語の文章を聞き、聞こえたものを書き取っていくことで、間違って覚えていた発音や、「続けて読む」ルールによって意味を取り違えていたフレーズをたくさん発見できた。ただ、それでもまだこのフランス語独特のルールに惑わされてしまっている。英語も似ているけれど、続けて読むことでそれぞれの単語が単独で発音するときとは違った音になるから、知っている単語も知らない言葉に変わるのだ。場合によっては別の単語やフレーズと同じ発音になってしまうし、そもそも音の連なりの中で何個の単語が読まれているのかさえ分からない。だから、ある単語が別の単語と並んだとき、どういう発音になるのかを知っておかないと、例え一つひとつの単語の意味が全部分かっていたとしても、文章として聞いたときに理解できないことになる。
 

単語帳

 
困るのは、こんな風に不調が続くと、積極的に発言できない“日本人病”が出てくること。自分としてはだいぶ頑張っているつもりだけど、それでも普段から発言は少ない方なのに、自信がなくなるとさらに無口になってしまう。今のクラスは11人で、そのうち日本人は5人もいるのに、みんなおとなしいから半分もいるとは思えないほど存在感がない。ただ時間にはきっちりしていて、朝、授業が始まるときは日本人の生徒しかいないということもけっこうあるのだけど、質問に答えてくれる人がいないからどきどきしてしまう。1人、アメリカの大学に通っていて、さらに今はパリに留学中という女の子だけはすごく積極的に意見を言う。元々の性格もあるんだろうけど、日本と違って授業中に発言することが当たり前の環境にいると、自然とそういう姿勢が身につくのかも。話すためには聞けるようにならなければいけないから、必然的に聞き取り力もアップしそうだし。文法だけなら日本人はトップクラスだと思うけど、文法ができてもしゃべれるわけじゃないし、何より積極性がないと外国語は上達しないというのはわかっているのだけど・・・。

 マスキングテープ

 
それにしてもネット上には、あらゆるリスニング対策があふれている。たくさん聞くのがいいとか、それより同じものを何度も聞くのがいいとか、聞くよりも読解力を高めた方がいいなどなど、サイトごとに個性的な方法を紹介していて、なかなか参考になる。まあ要するに、特効薬はないということ。私の場合、今はディクテーションが一番効果がありそうなので、できるだけやるようにしているけれど、元々iPodに入れていたものはテキストを持ってこなかったから正解がない。意味が分からないものを聞き続けていても仕方がないので、何かのついでに家から送ってもらうことにしようか考え中。

 

マカロン
頭の回転がよくないときは甘いものが効果的

 

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パリは危険か

あの衝撃的な事件から13日で1年。日本人の記憶にもまだ新しいと思われるパリの同時多発テロでは130人が亡くなった。フランスには今も、治安当局の権限を強化する非常事態宣言が出されている。出発前に治安を心配する声もあったし、私自身、去年このニュースを知った後、行くのをやめようか迷ったのも事実。

日本ではこちらの状況が想像しにくいと思うけど、もちろんテロがあるかもしれないからといってみんな家にこもっているわけではなく、普通に学校に行ったり会社に行ったりしている。観光地に行けば観光客であふれているし、留学で来ている人だってやっぱりたくさんいる。別に日本と変わらない日常だ。あんな惨事があったなんて信じられないほど。ただ、スーパーやデパートに入るときには荷物チェックがあるし、学校だって以前は2つあったという入口が1つになり、しかも学生証がないと入れない。せっかくだからいろんな大学を見てみたいと思っていたけど、それも難しそうだ。人が多い街なかや駅ではこういう兵士の姿もよく見る。

 兵士

 
悲劇の後に必ず聞くようになったのが「テロに負けない」という合言葉。いつもと変わらない生活を続けて、テロの現場にも足を運ぶ市民の姿を、日本でもよくニュースで見ていた。でも、日本人の私にとってはテロなんて非日常的すぎるし、いくらパリが好きだといっても街を守るために立ち向かうよりは命を守るために、何か起こればしばらくは家でじっとしていようと考える。そもそも「テロに負けない」という言葉には、以前から違和感があった。もちろん、大勢の人を無差別に殺害するという行為自体も、それを行う人間たちも許すことはまったくできないけれど、なぜ彼らのような存在がこんなに大きくなってしまったのかを考えたとき、「テロとの戦い」ばかり強調するのは何か違う気がするのだ。現実には、テロリストたちを“掃討”することが脅威を取り除く最善の方法なんだろうけど、それはとりあえずの手段であって、根本からの解決にはならない。なんだか今の報道あるいは社会では、その視点があまりにも欠けているように思われる。日本人だから、そんなのんびりしたことを考えてしまうだけなんだろうか。

 キャンドル

 
パリが危険かどうか、それに答えることはなかなか難しい。実際にはここに住んで、生活を楽しんでいるわけだけど、危険と言われれば危険なのかもしれない。外務省からもフランス在住の日本人に向けて、注意喚起メールが時々送られてくる。でも結局は、いつどこで何が起こるかは誰にも分からない。日本にいたって事故にあったり地震にあったりするかもしれないのだ。まあそう思ってここまで来てしまったけれど、もし何かあれば「テロとの戦い」を主張するような人たちにも、こんな危ない時期に行くのが悪い、自己責任だ、とか言われるんだろうな。

 

学校
1年前も同じであっただろう学校の風景

パリ20区歩き ―3区―

3区位置

 
古い建物を利用したファッションブティックやカフェ、美術館などが集まり、おしゃれなエリアとしてガイドブックにも紹介されている3区。この辺りはかつて湿地帯だったことから、マレ(沼地)地区と呼ばれるのだそう。通りを歩いていると、本気でほしいものを探したくなるようなスタイリッシュなお店がたくさんある。まるで日本でショッピングしているような気分!

まずは、再生紙を使用したという文具がそろう「パピエ・ティーグル」へ。パリ発のブランドで、このショップが1号店だそう。紙モノ好きとしては、ついつい入らずにはいられない。中には、おみやげにもぴったりのきれいなカードやメモ帳がたくさん!ただ、日本から文房具と無印のノートを大量に持ってきたので、残念だけどここは我慢した。ちなみにフランスは、ペンなんかは日本に比べると種類が少なく、しかもかなり割高。mtのマスキングテープはよく見るけれど、柄はあんまりない。
 

 
服やバッグもどんなかんじか見てみたい。このときは秋・冬物が出始めたころで、一番豊富な時期だった。買いたいものがどんどん出てきて危険なので、長居は禁物。1区は高級ブティックが多かったけれど、この辺りのお店は高価すぎず、かといってファスト・ファッションみたいに手軽すぎず、気に入ったものを長く使いたい30代以上向けというかんじ。まさに日本で好きだったショップと同じだ!置いてあるものも日本とそう変わらないけれど、トレンドを押さえつつスタンダードとして使えるような、そしてこだわりのある人がじっくり選びにくるような、洗練されたデザインのものが多かった。もしパリで仕事をしていたら、絶対この辺に買い物に来ると思う。
 

 
こんなお店もあった。パリ初のシュークリーム専門店「ポプリーニ」。シュークリームってフランスでは時代遅れらしく、流行を復活させたいという女性が始めたとのこと。チョコ、バニラ、カフェなど多彩な種類のキュートなプチシューがそろっているようだ。無駄遣いを避けるためガイドブックの情報しか紹介できないのだけど、ガラス越しに覗いてみたら色とりどりのかわいらしいシュークリームが!でもこんなお店、日本ならいっぱいあるような・・・。
 

ポプリーニ外観

 
さらに歩いていくと、静かな通りにピカソ美術館が佇んでいる。ピカソには興味ないけど、ここは敬愛するエリック・ロメールの映画『パリのランデブー』の舞台になった場所だそう。そして別の通りでは、アート関連の書籍を扱うレトロな外観の本屋を発見。ここもまた本屋好きとしては覗かずにはいられない。入ってみると美術書やグラフィック関係の分厚い本が所狭しと並んでいて、フランス語または英語が堪能ならばじっくり見たいものが満載だった。
 

 
最後に、大通りに面した「メルシー」へ。ここはパリで有名なセレクトショップで、中にはたくさんの人が。服、インテリア、文房具、食器など、確かにシンプルで使いやすそう。ただまあ、こういうショップも日本にいっぱいあるし、種類も多いかも。
 

メルシー外観

 
お店は多いけれど、集中して一つの場所にあるのではなく、歩いているとぽつぽつと出会う。人も多すぎず、落ち着いた雰囲気の中にセンスのよいショップが点在するかんじは、まさに大阪の南船場だ!デザイナーなどアート関係の人も多く住んでいるらしいから、そういうところも似ている気がする。この辺はいつかぜひ買い物に来たいなあ。

 

メルシーカフェ
メルシーにはこんな素敵なカフェも

 

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