フランスのテレビ番組①

来たばかりのころはテレビなんて見る余裕も興味もなかったけど、ニュースだけは知っておきたいと思い、特に最初はニュース番組ばかり見ていた。24時間ずっとニュースを流しているチャンネルもいくつかあり、今も1日1回はチェックするようにしている。最近のトップニュースは、いよいよ投票日が目前に迫ったアメリカ大統領選挙。日本と同じように、識者による予想や投票の仕組みの解説もある。こちらに着いたときからすでに討論会の様子なんかがたびたび報道されていたから、フランスにとってもやはり大きな関心事なんだろう。

 
次に多いのがテロ関連。こっちに来てすぐに、ノートルダム寺院の近くでガス缶を積んだ不審な車両が発見されたというニュースがあり、2、3日ずっとその車両の映像が流れていた。ただ、詳細を知ったのは2週間ぐらいたってからで、車両発見の2日後に何も知らずにノートルダムに行ってしまった。観光客だらけだったけど、考えてみたらニュースって旅行中はあまり見ないから、観光客は知らないのかも・・・。その後もよく「テロリスト」という単語が出てきて、そこだけは聞き取れる。7月にニースで起きたテロから3カ月後に行われた追悼式の様子も流れていた。去年のパリのテロもあと1週間で丸1年になるから、関連のニュースも多くなりそう。

 
その名前と容貌で日本人にも印象の強いサルコジ前大統領もよく登場する。彼は来年予定されている大統領選への出馬を表明していて、自らが率いる野党・共和党の大統領候補を決める予備選が今月行われるのだそうだ。オランド大統領の与党・社会党との力関係が分からないのだけど、この予備選に向けてのものだと思われる候補者討論会なんかもやっていて、扱いも大きい。フランス語が分かればかなり面白そうなのになあ。日本で民進党の蓮舫代表が選ばれたときはもういなかったから、国籍問題についての記事をこっちでいくつか読んだだけだった。残念。

 
もちろん楽しい話題もあって、ボブ・ディランのノーベル賞受賞が決まったときは現地のリポーターもかなりロックな感じでおかしかった。こっちでは日本のワイドショーのようなものはないのか、芸能ニュースなどはやっていないのだけど、硬い番組の中でブラピとアンジーの離婚のニュースが流れたのには笑った。それもけっこうな時間を割いていて、2人が結婚式を挙げたのがフランスだったからフランス人にも思い入れがあるのかなと想像。俳優といえば、インタビューも時々やっている。偶然見つけてラッキーだったのは、日本でも人気のマリオン・コティヤール。

 
番組の中で討論していることも多いのだけど、面白いのはサッカーについて。日本なら、解説者が一方的に話すだけだけど、こっちでは何人かが1つの試合についてああだこうだ言っている。かなり白熱している場面もあるから、監督の戦術や選手の判断についてそれぞれが思うところを主張し合っているんだろう。さすがサッカー好きのヨーロッパ。

サッカー議論

 
残念ながら日本のニュースというのは少なくて、まだ一度も安倍さんの映像は見ていない。今、日本で大きく報道されていると思われる韓国大統領関連のニュースも、こっちではやっていない。逆に、日本では少ないシリアやイラク、それに移民のニュースは毎日のように見る。ただ、日本に関する話題はけっこうあって、ロボットコンテストや“イクメン”特集をやっているのをたまたま見た。フランス人のタレントが片言の日本語を話したりもしているから、日本への関心は割と高いのだろう。

 
日本でも欠かさずチェックしていた天気予報は、ざっくりしすぎていてかなり分かりにくい。大地の色がなぜか黄色で表現されているから、雲が多くても晴れのように見えてしまうのだ。日本のように各地の詳しい天気はないし、降水確率が出ないのも残念なところ。でも、キャスターさんたちの衣装がなかなかファッショナブルなので、毎回楽しみ。

天気予報

 
ここまで書いてきたけれど、実は今住んでいるアパートにはテレビは付いておらず、どうしようか迷った末、結局買っていない。配線なども面倒だし何となくもういいかなと思っていたのだけど、フランスではなんとオンエア中の番組の多くがネットで同時配信されているらしく、全部パソコンで見ている。いつから、どのぐらいの割合の番組が見られるのかなど、調べてみたけど詳しいことは分からず、本当に同時配信なのか検証することもできないけど、番組内の時刻表示やトピックなどから想像する限り、今あるいは数分前の番組を視聴できていると考えてよさそう。日本で最近、ちょうどこの同時配信がニュースになっていたけれど、フランスではすでに実現していることになる。テレビがあるとテレビ税がかかるらしいから、パソコンで十分だ。何より、早く聞き取れるようにならなければ!

 

キャスター
お気に入りのイケメンキャスター

ランチにお呼ばれ

先日、語学学校で同じクラスの日本人女性Cさんの家にご招待いただいた。こちらも同じクラスの日本人大学生Mさんと一緒にお伺いし、なんとも豪華なランチをごちそうになった。こんなに家庭的で日本らしい食事は久しぶり。パリでもちゃんとやればこんなのできるんだなー。サンドイッチも悪くないけど、やっぱりお味噌汁とごはんがあるとほっとする。

 
ランチ

 
Cさんのアパートは15区にあり、大きな窓からセーヌ川が見える。以前は知り合いの日本人家族が住んでいて、彼らが出た後ここに入ったとのこと。向きの加減で残念ながらエッフェル塔は見えないけれど、位置的にはかなり近いので、通りに出るとその姿をとらえることができる。周りにはスーパーも多いし、なかなか住みやすそうだ。彼女は私より少し年上で、旦那さんの転勤で1年半ほど前にパリに来て、今は小学生の息子さんと3人でここに住んでいる。来た当初はフランス語もほぼまったくできず、街に出るのも買い物に行くのもいやで、鬱状態になったのだそうだ。いつも明るくとても勉強熱心だから、そんな時期があったなんて意外だけど、なんとか普通に生活できるようになるまでかなり時間がかかったと言っていた。そして息子さんも日本語しかできない状態でパリに来て、今はインターナショナルスクールに通っているから授業は基本的に英語、その中にフランス語と日本語の授業があり、全部を同時に勉強しているそう。部屋には今習っている漢字表もあった。心からエールを送りたい。

 
窓からの景色

 
私も大学生のMさんも、それなりに努力と苦労をしているとはいえ、自分の意志でパリに来た。特に私の場合はホームシックみたいなものもまったくなく、気楽にここでの生活を満喫している。でも、来なければいけなくなってここに来た人もいるのだ。クラスの中にはほかにも、旦那さんの仕事の都合でパリに住んでいるという人が何人かいるから、彼女たちも人知れず大変な思いをしているのかもしれない。けれど、Cさんも含めみんなちゃんと学校に来てフランス語を勉強しているのだから、本当に尊敬する。言い方は悪いけど、自分が望んだのではないことを“やらされている”とも取れるのに、時間がかかったとしてもそれを受け入れているのだ。私自身は、同じ場所にとどまっていることが好きじゃないのに加え、一応は経験を増やし視野を広げたいという思いもあって能動的にいろいろやってきたけれど、自分から行動することだけが人生をつくっていくことではないんだな。また一つ、新たなものの見方を学ぶことができた気がする。今まで考えたこともなかったけど、自分なら同じ状況でやっていけるだろうか。仕事を辞めて留学するというのも確かに大きな決断だけど、それはあくまでも自分が望んだこと。意志とは関係なく、言葉も通じない場所で小さな子供を抱えながら一生懸命生きている彼女たちの方が、よっぽどすごいと思う。フランス語でよく使う表現に 「C’est la vie(これが人生)」というフレーズがあるのだけど、まさにそれだ。

 花びら

 
食後のデザートは、ラ・パティスリー・デ・レーヴというショップのケーキ、サントノーレ。日本でも東京や京都に店舗があって人気のようだけど、ガイドブックなんかをつくっていた割にグルメ情報には疎いので、ぜんぜん知らなかった。このアパートの近くにボーグルネルという大きなショッピングモールがあり、そこにショップが入っているというのを前日に知って、試しに買ってみたのだった。まあおいしかった。日本でも話題になるはずだ。
 

 
本当は、一番有名なパリブレストというのがあったからそれが欲しいと店員さんに言ったのだけど、なぜかその日はだめだと言われた。なぜだめなのかについて3回ぐらい説明してくれたけれど、結局分からず。料理もフランス語も人生も、まだまだ勉強が必要だ。

 

お蕎麦
おみやげにお蕎麦までいただく

 

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遠足と古本市

バカンスに入る前の先週の映画の授業は、先生と生徒全員で外出した。パリを舞台にした映画を見ながらその場所について学ぶことがこの授業のテーマの一つなので、じゃあ実際に行ってみようという楽しい試み。留学生を対象にしたパリツアーはたくさんあるけれど、そういうのには参加したことがないので、ほかの生徒と出かけるのは初めて。すでに自分でも歩いてみた1区のパレ・ロワイヤルやヴァンドーム広場、初めて入る9区の百貨店ギャルリー・ラファイエットなどをめぐり、最後は4区の端にあるバスティーユ広場を通って近くのカフェへ。みんなでバスやメトロに乗ってパリ市内を一緒に移動し、テラス席に並んでコーヒーを飲むという、なかなか体験できない3時間だった。
 

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このクラスの生徒は11人で、日本人は私を入れて4人、アメリカ人は2人いるけど、ほかはみんな違う国の出身。このうち英語をしゃべれる何人かはすでに友だちになっていて、普段から一緒に行動することもあるようだけど、ほとんどの人がこのときに初めてほかの生徒と話をしたんじゃないかと思う。そういう私も同じで、週に1度、顔を合わせているのに、言葉を交わしたことはなかったなという人ばかりだった。それで気づいたのだけど、こういうときなぜかアジア人はアジア人同士、仲良くなるのが早い。個人的にも、ヨーロッパ人やアメリカ人より、韓国人や中国人と接する方がなんとなく気軽に感じる。韓国人は日本人と感覚が似ているから安心するのかもしれないけれど、中国人にはどちらかといえばあまりいい印象を持っていないのに、こういう場面ではまったく関係ない。彼らの方でも同じことを感じているようで、やっぱり最初は同じアジア出身の生徒に話しかけている。でも、一緒に行動するうちにだんだん雰囲気に慣れてきて、クラス全体が少しずつ打ち解けていったようだった。なんだかこの日で一気にみんなとの距離が縮まった気がする。そして、やっぱりこうやって会話することで話す力と聞く力がついていくんだなとあらためて実感。
 

行進イラスト

 
こうして初めての“遠足”が終わった後、先生が近くで開かれている古本市のチケットを持っているというので、ほかの生徒2人と一緒について行った。もう夕方だったし、次の日も朝から授業があったので帰るつもりだったのだけど、チケットにあった「古い紙の本」というフランス語に引かれ、つい行くと言ってしまった。でもこれが大正解。すごくおもしろかった。
 

 
運河沿いの両岸にテントが連なっていて、セーヌ川の古本市と似ているけれど、規模が大きく店も多い。そして何より、いい景色!どうやらこの場所で定期的に開かれているみたい。フランスの古い本や雑誌、ポスターはもちろん、日本の浮世絵や現代アートなんかもあって、紙好きや本好きならきっと長居してしまうはず。先生もこういうところによく顔を出すようで、たくさんの知り合いに声をかけられていた。普段とは違うプライベートな一面を目撃して、先生の素顔も少し知ることができた気がする。

 

橋
趣のある橋を渡って対岸へ