サマータイムが終了

まったく意識していなかったけど、今までは夏時間で毎日が動いていた。ヨーロッパは日が暮れるのが遅く、来たばかりの9月は夜9時ぐらいまで明るくて、10月半ばになっても7時ごろにやっと暗くなり始めるほど。でもなるほど、これは標準時間より時計を1時間進めていたためだったのだ。ほかのヨーロッパの国でも同じだと思うけれど、サマータイムは毎年10月の最終日曜までで、早朝3時(土曜の深夜3時)を2時に変更するとのこと。つまり、この日は25時間になるというわけ。パソコンとスマホは自動的に時間を合わせるよう設定しているので、30日の日曜に起きるとちゃんとこちらの時間になっていたけれど、腕時計と目覚まし時計は手動で1時間戻した。日本との時差も7時間だったのが8時間になった。今までは、夕方の3時から5時ごろにかけてが一番明るく暖かくて変な感じだったのだけど、これが1時間早まって通常の感覚通りになり、日が暮れる時刻も日本とほぼ同じに。またこれまでは、暗くなるのが遅い分、明るくなるのも遅くて、朝8時ぐらいになってもまだ夜が明けきっていなかったのが、標準時間に戻ったことで解消された。

 時計

 
サマータイムというのはよく知られている通り、夏の長い日中時間を有効活用して、省エネや余暇の充実に結び付けようというもの。調べてみると歴史はとても古いようで、第一次世界大戦中の1916年、ドイツが節電のために始めたのが最初だそう。その後、ヨーロッパだけでなくアメリカやニュージーランドなどにも広がり、現在は世界で約70の国がサマータイムを実施しているとのこと。フランスでももうすっかり当たり前のことになってしまったのか、私の知る限り、学校でもテレビでもサマータイム終了に関するアナウンスなどはまったくなかった。たまたま以前、例によって留学していた人のブログを読んでいたときに、サマータイムのことを知らず大変な目にあったという記事があったので、それを思い出し事前に調べていたから慌てずに済んだのだ。でもこれ、少なくともアジアの学生には知らせるべきなんじゃないだろうか。
 
 
夏の光

日本で何年か前にサマータイムの導入が話題になっていたとき、かなり興味を持ってニュースを見ていた。実は戦後、アメリカの占領下で1948年から4年間実施されたことがあるそうだけど、今ではまったくなじみがないこの制度。日本で導入が実現しない大きな理由の一つは、残業が多い“伝統的”なビジネススタイルにあるそう。確かに、明るい時間に終業時刻を迎えても、定時に帰れることがほとんどない今の日本の会社では、確実に残業が増えるだけだろう。それに、真夏は早朝でもクーラーなしではいられないし、日本ではあまり省エネにも結び付かないんじゃないかと思う。だから、きのうまでの8時が今日からは7時になるっていうこの不思議な制度が体感できたことは、けっこう貴重なのかもしれない。

 

夜のセーヌ川
パリの夜を現代アートで彩るニュイ・ブランシュ

 

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秋のバカンス

フランスでは、日本のように短い周期で祝祭日が訪れるということはない代わりに、休みになるときは長い。たいてい6週間続けて働いたり勉強したりした後、長期休暇になるというサイクルなのだそうだ。9月に授業が始まってちょうど6週間、初めてのバカンスに入った。11月1日が「トゥーサン=諸聖人の日」と呼ばれる国民の祝日に当たり、毎年この時期は「トゥーサン休暇」になるとのこと。「諸聖人の日」はカトリックの祝日で、亡くなった人に菊の花を捧げる習慣があるというから、日本で言うお盆のようなものなのだろう。私の学校は1週間だけど2週間休みになるところもあるらしく、クラスの中には子供がすでに休暇に入り面倒を見る人がいないために授業を休む人もいた。

 洋菊

 
バカンス大国として知られるフランスだけれど、この前たまたま授業で有給休暇の話題が出てきて、なんとこの国には5週間の有休があるということを知った。元々は2週間から始まって、3週間、4週間と増え続け、1982年に5週間休む権利が認められたというから、フランス人にとって休暇がどれだけ大事なのかが分かる。何よりうらやましいのは、それを全部消化するのが普通だということ。日本に比べたら何百年も先をいっている。今メインの授業を担当している先生は、かつて日本の大学で4年働いていたことがあるそうで、そのときに休暇を申請したけど認められなかったと言っていた。日本人の私にとっても、権利があるのに休みを取らない(取れない)というのはすごく不思議なのに、フランス人にとってはまったく奇妙なこととしか思えないだろう。休暇が取りにくいという事実は、個人的に日本で働くことの窮屈さを感じている大きな理由の一つなのだけど、多くの日本人はいまだにこれを当たり前だとか仕方がないと思っているみたいだから、変わることを期待するのは難しい。ただ台湾の生徒も、休みが少なく残業が多いと言っていたから、アジアでは休みに対する意識や状況が似ているのかもしれない。

 パリと飛行機

 
休暇中はクラスでも旅行に行く人が多いようで、どこに行くのかという話題がけっこう出ていたけれど、私は遠出の予定はない。寒いというのもあるし、お金の問題もある。ただ、暖かくなってもっと長い休みに入れば行きたいところもあるから、それまではおとなしくしているつもり。そもそも、バカンスといっても別にうれしくない。だって、パリにいて仕事もしなくていい今の状況そのものが、すでにバカンスなのだ。学校だってそんなに大変なわけではなく、水曜は休みなので週休3日だし、月曜と金曜は午前中で終わる。宿題がものすごく多くて大変と聞いていたのだけど、私のクラスはたまたま家庭や仕事を持っている人が多いせいもあるのか、普段から大した量じゃないし、この休暇中も課題は出なかった。だから、フランス語に触れる機会が減ってむしろ残念に感じているぐらい。まあでも、せっかくパリにいるのだ。街歩きを楽しもう。人生のバカンスを過ごす場所として、ここを選んだのだから。

 

教室からの景色
教室から見える景色も秋らしく

デジタルな授業

日本ではスマホやパソコンがすっかり日常的になったけれど、世界中から生徒が集まる語学学校に通っていると、どうやらほかの国も同じらしいということがよく分かる。今やどこの出身であってもみんなスマホやタブレットを持っていて、休憩時間に画面を眺めている人も多い。9月に学校が始まったとき、授業の時間や教室が書かれた登録用紙をもらったのだけど、最初のころは学校に行く度にいちいちバッグからその紙を出していた。ところが、みんなスマホで写真を撮って手元で見られるようにしているので試しにやってみたら、すごく便利。紙を取り出す手間がいらないどころか、持ち歩く必要もないのだ。これって今は普通のことだと思うけど、フランスに来る前はガラケーだったし、あまりカメラ機能を利用することもなかったから、こういう使い方があることを初めて知った。担当の先生に登録用紙を見せてと言われたときにもタブレットをそのまま渡す人が多いのだけど、もはや誰も驚かない。
 

デジタル端末

 
そんなわけで、授業にもデジタル教材が多数登場する。授業と言えば黒板やホワイトボードが当たり前、というのは昔の話で、もちろんボードはあるけれど、私のクラスの場合はほとんど使わない。先生は手書きするのではなくすべてiPadに入力し、授業の間は画面をプロジェクターで映し出しておいて終わると全員にメールで送ってくれる。これなら字が雑で読めないということもないし、ノートを取りそびれても大丈夫。たまに先生が手書きしたときや別の媒体を使ったときは、写真を撮ればOK。

この前、自分の部屋の見取り図を描き、それを見ながら家具などの「位置」の言い方を習う授業があったのだけど、先生がその場で何人かの図面を撮影してプロジェクターで映し出し、それを素材にしてしまった。絵がすごく上手い人もいて、それをみんなで一緒に発見できるというのはなかなかおもしろい体験だった。

また、あるテーマについて全員がパソコンで短い文章を書き、それぞれが書いたものを同じ画面で見ながら間違った表現を直していくというのもよくやる。もちろん学校のシステムを使うのだけど、これがよくできていて、フェイスブックのようにクラス全員の“投稿”が見られるし、一人ひとりの文章にコメントすることもできるようになっている。

それから、個別に発音練習ができるラボでは、これもテーマに沿ってそれぞれ自分で作った文章を読んで録音し、その音声をみんなで聞きながら正しい表現と発音を学ぶ。これをやるとみんなの発音や話し方もよく分かるし、何より内容が興味深い。

そして映画の授業。生徒たちが知らない作品も多く、全部を一緒に見るわけにはいかないから、先生が一言「YouTubeで探して見ておいて」。確かに、それが一番早いしお金もかからない。
 

デジタル空間

 
今の子供たちにとっては当たり前のことなのだろうけれど、私の世代はパソコンを使い始めたのもケータイが一般的になりだしたのも大学生のときで、人生で受けてきた授業というもののほとんどはアナログだった。それに比べるとものすごい変化だ。ただ、こういう技術や設備を使うのは仕事の場でも同じだったから、違和感はない。むしろ世界中ですでに同じ状況だということが驚きだった。個人的には、少なくとも何かを学ぶ場において、デジタル機器というものはかなり有効だと思う。瞬時に、正確に、幅広く情報を得ることができるし、圧倒的に理解しやすいからだ。その場で共有することによって、時間と資源の節約にもなる。小さいときからこういう環境で教育を受けている現代の子供たちには、どんな風にこの世界が見えているのだろう。
 

国旗

 
日本にいるときはスマホなんてまったく必要なかったし、今でもこういう状況じゃなければガラケーで十分なのだけど、カメラを忘れても撮影できるし、ガイドブックに載っていない情報もその場ですぐに調べられるので、街を歩くときはやっぱり便利だなと感じている。ただフランスでは、電車の中でスマホを見ている人は少ない。日本では最近、車両にいる人の8割ぐらいがスマホに釘付けという光景も珍しくはないけれど、こっちでは新聞や紙の本を読んでいる人もけっこういる。私の場合は、残念ながら地下に入るとネットがぜんぜんつながらないし、まあ特に必要もないので、メトロでスマホは見ない。でも、生活する上でスマホもパソコンもすでに手放せなくなっているのは事実だ。授業以外では、あまりデジタルに染まらないようにしたいと思っているのだけど・・・。

 

校舎
校舎は古いけど授業はハイテク

 

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