秋のバカンス

フランスでは、日本のように短い周期で祝祭日が訪れるということはない代わりに、休みになるときは長い。たいてい6週間続けて働いたり勉強したりした後、長期休暇になるというサイクルなのだそうだ。9月に授業が始まってちょうど6週間、初めてのバカンスに入った。11月1日が「トゥーサン=諸聖人の日」と呼ばれる国民の祝日に当たり、毎年この時期は「トゥーサン休暇」になるとのこと。「諸聖人の日」はカトリックの祝日で、亡くなった人に菊の花を捧げる習慣があるというから、日本で言うお盆のようなものなのだろう。私の学校は1週間だけど2週間休みになるところもあるらしく、クラスの中には子供がすでに休暇に入り面倒を見る人がいないために授業を休む人もいた。

 洋菊

 
バカンス大国として知られるフランスだけれど、この前たまたま授業で有給休暇の話題が出てきて、なんとこの国には5週間の有休があるということを知った。元々は2週間から始まって、3週間、4週間と増え続け、1982年に5週間休む権利が認められたというから、フランス人にとって休暇がどれだけ大事なのかが分かる。何よりうらやましいのは、それを全部消化するのが普通だということ。日本に比べたら何百年も先をいっている。今メインの授業を担当している先生は、かつて日本の大学で4年働いていたことがあるそうで、そのときに休暇を申請したけど認められなかったと言っていた。日本人の私にとっても、権利があるのに休みを取らない(取れない)というのはすごく不思議なのに、フランス人にとってはまったく奇妙なこととしか思えないだろう。休暇が取りにくいという事実は、個人的に日本で働くことの窮屈さを感じている大きな理由の一つなのだけど、多くの日本人はいまだにこれを当たり前だとか仕方がないと思っているみたいだから、変わることを期待するのは難しい。ただ台湾の生徒も、休みが少なく残業が多いと言っていたから、アジアでは休みに対する意識や状況が似ているのかもしれない。

 パリと飛行機

 
休暇中はクラスでも旅行に行く人が多いようで、どこに行くのかという話題がけっこう出ていたけれど、私は遠出の予定はない。寒いというのもあるし、お金の問題もある。ただ、暖かくなってもっと長い休みに入れば行きたいところもあるから、それまではおとなしくしているつもり。そもそも、バカンスといっても別にうれしくない。だって、パリにいて仕事もしなくていい今の状況そのものが、すでにバカンスなのだ。学校だってそんなに大変なわけではなく、水曜は休みなので週休3日だし、月曜と金曜は午前中で終わる。宿題がものすごく多くて大変と聞いていたのだけど、私のクラスはたまたま家庭や仕事を持っている人が多いせいもあるのか、普段から大した量じゃないし、この休暇中も課題は出なかった。だから、フランス語に触れる機会が減ってむしろ残念に感じているぐらい。まあでも、せっかくパリにいるのだ。街歩きを楽しもう。人生のバカンスを過ごす場所として、ここを選んだのだから。

 

教室からの景色
教室から見える景色も秋らしく

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