フランス語の発音

前回に続きフランス語について。音の美しさに引かれて勉強を始める人も多いと思うけれど、フランス語の発音は日本人にとって本当に難しい。母音がなんと14もあるのだ。あいうえおしか知らない人間が「う」や「お」のバリエーションをすぐにマスターできるはずがない。フランス語というと「é」とか「ô」という記号付きのアルファベットを見たことがある人も多いと思うけれど、「é」と「e」、「ô」と「o」はそれぞれいつも発音が同じとは限らない。よく英語でも、「a」が入った単語が4つぐらい並んでいて同じ発音のものを選べっていう問題があるけど、実はあれがけっこう得意だ。もちろん最初は違いなんてまったく分からなかったのだけど、高校生のときに辞書を見て自分で発音しながら研究したところ理解できるようになり、発音記号も読めるようになった。慣れるとパターンがあるので、こういう綴りのときはこの発音だなというのが自然に分かるようになる。英語でその経験があったから、フランス語でも同じようにいけるだろうと思っていたのだけど、甘かった。違いが微妙すぎて聞き分けられない。それでも一応パターンというものがあるので、大体はつかめるものの、どう違うのかは分からない状態。

この前、語学学校の選択科目で映画の授業を取っていることを書いたけど、もうひとつ選んだのは発音。このクラスであらためてフランス語のAからZまでの発音を覚え直し、徐々にそれぞれの母音の違いを教えてもらっている。どうやって14もの異なる母音を発音し分けるのかというと、口の開き方や舌の位置をそれぞれ変えるのだ。今やっているのは「y」と「u」の違い。これは日本人には「ユ」「ウ」と聞こえるのだけど、どちらも日本語のそれではない。特に「u」の方は舌を後ろに持っていくとのことで、最初はよく分からなかったけど、毎週先生の口元を見ながら音を聞いているうちにつかめた。こういうことかー。でもこれってかなり難しい。普通の会話の中で本当にみんなこんな風に発音しているんだろうか?先生も、フランス人にとっては意識せず自然にやっていることだから、口の動きを説明するのはなかなか難しいと言っていた。日本語にも無声音というのがあって、たとえば「野球」の「や」や「ソフトバンク」の「フ」「ク」は音には出ないけど、これって外国人はやっぱり自然にできないのだろうか。
 

ヘッドホン

 
さて、母音の違いが理解できたとして、次にやっかいなのが「リエゾン」「アンシェヌマン」「エリズィオン」と呼ばれるもの。そもそもフランス語には、綴りにはあるけど発音しない文字というのがあって、英語で「Paris」と言う場合は最後の s を発音するけど、フランス語では「パリ」。ただ、単独では発音しなくても、次にくる単語が母音で始まっている場合は続けて読むというルールがある。たとえば「les amis」(「友だち」/lesは英語のtheの複数形)は本当なら「レアミ」だけど、sとaをつなげて「レザミ」と読む。これが「リエゾン」で、「アンシェヌマン」も要するに子音と母音を続けて読むこと、「エリズィオン」は母音が重なる場合に前の単語の母音を省略して「’」を付けることなのだけど、まあフランス語を知らない人にはまったくわけが分からないと思う。

ただこの“続けて読む”というのは本当にややこしい。これに対して個人的に効果があった勉強法が、フランス語を聞いてそれを書き取るディクテーションだったのだけど、今でも覚えているのが「l’avion」と「la viande」。前者は「飛行機」で、本来は「le avion」(leはtheの男性形)なのだけど、母音のeとaが重なっているためにエリズィオンでこういう形になっている。そして後者は「肉」(laはtheの女性形)。で、何が問題なのかというと、どっちも発音が「ラヴィオン」と聞こえるのだ(ちなみにviandeの「de」は発音する)。意味がぜんぜん違うから、文脈が分かっていれば推測もできるのだけど、そこまでのレベルに達していなければ判断がつかない。続けて読むために、こうやって別の単語と似たような発音になってしまうというケース、フランス語ではけっこうある。日本語でも「橋」「端」「箸」みたいな同音異義語がたくさん存在するから、きっと外国人にとってはやっかいなんだろうな。
 

手をつなぐ子供たち

 
日本語には数多くの文字があって、それらを使うことで多様な表現が可能だけれど、アルファベットは26文字しかないから、きっと発音を増やしでもしないと限界があるんだろうと勝手に思っている。でもおもしろいもので、同じフランス語をしゃべっているはずなのに、韓国人がしゃべると韓国語に聞こえるし、アメリカ人がしゃべると英語に聞こえる。外国語の発音ってやっぱりどこの国の人にとっても難しいのだ。個人的には、英語もフランス語も「カタカナ読み」ではないと思っているけれど、日本で勉強していると、テキストを見ずに先生の後に続いてリピートするときはみんなきれいな発音なのに、綴りを見た途端カタカナ読みになる人が多かった。だから自分も含め、とりあえず聞こえている通りに発音してみるのが一番いいんじゃないだろうか。

 

テキスト_アルファベット発音
先生の手書きによる”口の開き方”

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