滞在許可証をもらいにいく

だいぶ前のことになってしまったけれど、移民局に書類を送るのつづき。フランスに3カ月以上滞在する場合、日本で取得したビザだけでは不十分で、入国後に滞在許可証をもらわなければいけない。そのための第一段階として、9月中旬にフランス移民局OFIIに必要書類を送ったというのが前回の記事だった。それから約3カ月半、ようやく手続きが完了。

フランスはいうまでもなく先進国だし、ヨーロッパだし、何事もきちんとしてそうなイメージがあるかもしれないけれど、実はぜんぜん違う。特に書類関係、役所関係の仕事のいい加減さは有名で、留学生の間でもトラブルが絶えない。提出したはずの書類が届かない、なんていうのは日常茶飯事で、最悪、紛失したといわれるケースも多いよう。日本の留学業者のホームページにも、フランスでは3回に1回書類がなくなるので必ずコピーしておくように、とか普通に書いてあるぐらいだ。だから今回送った書類もかなり不安だった。実際、郵送した1週間後に郵便局からの配達証明は来たものの、それ以後はまったく音沙汰なし。9月は一番、留学生が多い時期だし、返事が遅れるだろうということは予想していたものの、2カ月たってさすがに不安になり始めたころにやっと移民局から1通の封筒が届いた。ところがこれは、こちらから送った書類を受け取ったという確認のみ。2カ月もたって受け取り証明って!こんなのでよく仕事が回っているもんだと不思議でしょうがない。そしてそれから約3週間後、ようやく召喚状が来た。ネット上では、最初に書類を送ってから6カ月後、10カ月後にやっとこれを受け取ったという人もいるから、3カ月後というのは早い方なのかも。
 

移民局からの召喚状

 
この移民局というのは地域ごとにいくつかあるようで、住んでいる場所によって管轄も違う。私の場合は、家から1時間ほどかかるパリ郊外のCréteilという町までいかなければいけなかった。バカンス中の12月最終週、しかも朝の8時半集合。日時は変更できないので、まあ授業を休まなくてすんだのはよかったのだけど。ぎりぎりに到着すると、入口前にはすでに30人ぐらい集まっている。ヨーロッパは夜が明けるのが遅いから、8時でようやくうっすらと光が差し始め、30分たってやっと日が昇ったなというぐらい。当然、寒い。みんな一体どれぐらい待っていたんだろう。8時半にドアが開いたけれど、1人ずつ身分証の確認と荷物チェックをするから、入るまでに20分かかった。並んでいた人の中には、この日が指定日じゃない人もけっこういて、来週は来れないから今日にしてほしいと訴えている。結局追い返されていたけれど、日本人にはなかなかない身勝手さというか強引さというか。外国ではこういう光景、よく見る。
 

移民局の建物

 
やっと中に入ってもまた順番待ち。着いたのが遅かったら最後のグループだったけど、まあ寒い中、外で待つよりはましだ。まずは上半身裸になってレントゲン、その後、視力検査、靴を履いたままの身長・体重測定などがあって、途中フランス語でいろいろ聞かれるけれど、学校の先生のフランス語とは違ってぜんぜん分からないので適当に答えておく。うわさに聞いていた尿検査はなし。そして健康診断が終わると書類(パスポート、証明写真、住居証明、指定額の切手のようなもの)を提出し、ようやく滞在許可証をもらえる。といっても、パスポートにシールを貼ってもらうだけなのだけど。これで、ビザの有効期間である1年間は合法的にフランスにいられることになる。1年たって滞在を延長する場合は、またここに来て新たな許可証を申請しなければいけないというわけ。
追記:更新手続きを行うのはここ移民局ではなく、正しくは警察署だった)
 

滞在許可証

 
フランスに語学留学する場合、学生ビザを取得するのが一般的だけど、若ければワーホリビザ、そして年齢制限のないビジタービザというのもある。学費を払い入学許可を得る必要がある学生ビザとは違い、ビジタービザの場合は必ずしも学校にいく必要はなく、何をしてもいい。ただひとつ、フランスで働くことだけを除いては。学生ビザは時間に上限があるもののアルバイトは可能だけれど、ビジタービザの場合は許可されていない。お金があって、ちょっとフランスに住んでみたいなという人向け。学生ビザは条件が厳しくて申請しても却下されることがあるから、そういう場合にはビジタービザを申請するという手もある。ただ、こちらに来てから移民局で滞在許可証をもらわなければいけないというのは同じみたい。

さて、無事に滞在許可証をもらい、時計を見ると11時すぎ。意外に早かったなと思いながら、ほっとして帰ろうとすると「あ!予防接種受けてね」とお姉さんに呼び止められた。来た。これは事前にいろんな人のブログを見たり、業者に聞いたりして知っていたから、ここでは驚かない。予防接種というのはジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオを防ぐための四種混合ワクチンで、フランスでは大人でも何年かおきに、これら全部かどうかは分からないけれど予防注射を受けることが義務づけられているようなのだ。衛生環境のよくないアフリカからの移民も多いし、街も清潔とはいえないから、日本とはこれらの病気に対する感覚がだいぶ違うんだろう。ただこの予防接種は、移民局にいけば勧められるけど実際には受けなくていいとみんなブログに書いていたので、無視して帰ろうとすると、なんとドアを出たところでさっきのお姉さんが追いかけて来た!これにはさすがにびっくり。絶対に受けなければいけないのかと聞いたところ「絶対」。注射なんて体質があるから受けたくない人だっているはずなのに、そんな発想はなさそう。まあ事前に何のワクチンか知っていたからまた20分待って結局打ってもらったものの、知らなければ逃げていたと思う。けっこう痛かったし、最後に意外な落とし穴が待っていたけれど、とりあえずこれで、やっかいな手続きがまたひとつ終わった。

 

timbre

提出したtimbre(切手のようなもの)は60ユーロ分

オペラ・バスティーユでバレエを見る

昔やっていたこともあってバレエが大好き。日本でも、外国のバレエ団が公演に来るたびに一人で見にいっていたぐらい。だからパリにいる間にオペラ座でバレエを見たいというのは、単なる憧れや好奇心ではなく、純粋にこの最高の芸術を本場で楽しみたいという気持ちだった。そして、その望みが早くもかなった!

 
トゥ・シューズ

 
パリのオペラ座というと真っ先に思い浮かぶのが壮麗なオペラ・ガルニエだと思うけれど、残念ながら今回はここではなく、バスティーユにあるオペラ座。1989年に建てられたホールで、近代的なデザインと最新の舞台技術が特徴だとのこと。このオペラ・バスティーユ、名前だけは知っていてガルニエ宮との関係をぜんぜん把握していなかったのだけど、どちらもオペラとバレエの両方を上演するのだそう。どういう使い分けをしているのかは分からないけれど、バスティーユの方が収容人数がだいぶ多いようだから、人気のある公演はこちらでやるのかもしれない。ただ、ここはまあ大都市ならどこにでもあるような劇場と同じで、新しくなった大阪のフェスティバルホールの方が豪華かも。
 

 
プログラムは、バレエを知らない人でも知っている「白鳥の湖」。だいぶ前からホームページでチェックしていたのに、そのときはまだ迷いがあってぐずぐずしているうちに忘れてしまい、気づいたときにはチケットが完売してしまっていた。歴史の古いオペラ座といえども、今はネット上で世界中どこからでも買えるようになっているから、人気のあるものはあっという間に席がなくなってしまう。それにしても、ほぼ1カ月間ずっとやっているのに、全部売り切れなんて!でもまあ、考えてみたらこっちはバカンスだし、きっと年末はシーズンなのだ。だからこんなに大きな演目をやっているんだろう。

当日券が出るらしいとネットに出ていたので一度、バスティーユのチケット売場にいってみたのだけど、もう残っていないといわれて落胆。それでもあきらめきれず、後日もう一度詳しく検索してみると、この売場とは別に当日券を買うための列があるらしく、開演2、3時間前にいってそれに並べばまだ望みがあるということが分かった(チケット売場のお姉さんはなんで教えてくれなかったんだろう)。

ところが、トライしようと思っていた日の昼すぎ、試しにオペラ座のホームページを見てみると、なんとキャンセル戻りのチケットが出ている!それも50ユーロの席!急いで手続きして、無事入手。公演は当日の19時半開始だったから、まさに直前だ。この瞬間、100ユーロ以上の席もいくつか残っていたのだけど、手続きを終えて最初のページに戻ってみると、もうなくなっていた。きっと私と同じような人がたくさんいたんだと思う。だって、オペラ座の白鳥全幕なんてめったに見られないのだ。この先もコンテンポラリーダンスのプログラムが多く、古典作品を見られる機会自体が少ないから、チケットが取れたときは興奮して手が震えてしまった。

ちなみにこのホームページ、残っている席の中から自動で一番いい席を選んでくれて、舞台の見え方まで写真で確かめることができる。もちろん変更も可能。チケットはスマホでダウンロードして画面を見せるだけでOK。でも希望すれば、手数料がかかるけれどなんと海外まで送ってくれるから、日本の自宅でも受け取ることができる。なかなか素敵なシステム。
 

ホームページ画面
選んだ席から舞台がどう見えるかが分かる

 
日本ではまだまだバレエというと敷居が高いイメージがあると思うけれど、ヨーロッパでは文化として根付いていて、それほど高い金額を払わなくても見ることができる。もちろん、日本と同じように2、3万円する席もあるけれど、価格帯が幅広くて、一番安い席はなんと5ユーロ!ただ、この席からどれぐらい舞台が見えるのかは分からない。私が買った50ユーロという席は、日本でオペラ座公演を見るならたぶん存在しないか、一番安い席になると思うけど、オペラ・バスティーユでは後ろの方だったもののなんと1階で、なかなかよく見えた。ところで、このバスティーユのホールには補助席というのがあって、どうやら階段側の席がこれになっているよう。ホームページから予約するときに「OPTIMA」と出ていたらこの席になるのだけど、今回は幸いにも、この補助席の1つ隣の席だった。せっかくなら普通の席に座りたい。ちなみに服装はというと、特に着飾る必要はなく、普段着で大丈夫。この辺は日本と同じだ。足元はブーツにしてみたけれど、気軽にスニーカーで来ている人もいっぱいいた。

 
補助席

 
さて、オペラ座みたいな一流のバレエ団になると専属のオーケストラがあって、クラシックの演目なら音楽はすべて生演奏される。つまり、バレエと生オーケストラの両方を同時に楽しめるのだ。バレエは途中でダンサーがお辞儀をしたり、このステップを踏むのと同時に曲が始まる、というタイミングがあるから、指揮者は舞台の進行を見ながらタクトを振る。もちろん、演奏も超一流。白鳥の湖なら特に、第1幕の王子と白鳥のパ・ド・ドゥ、この場面のハープとバイオリンの美しさといったらない。踊りだけでなく、その音色にまで心を奪われてしまう。日本を含む海外で公演があるときにはこのオーケストラも一緒に付いていくから、その経費を考えると、どうしてもパリでやるときと比べて高くなってしまうことになる。ただ、いくら名高いオペラ座専属とはいえ、あくまでもバレエやオペラが主役というポジションについて演奏家たちがどう思っているのかは気になるところ。

肝心の舞台はというと、やっぱりよかった。堪能した。オペラ座は世界三大バレエ団のひとつともいわれているぐらいそもそものレベルが高いし、派手すぎない上品な演出もいい。白鳥の湖って、みんな同じ白の衣装だし、白鳥たちが出てくる場面は背景も暗いから、子供のころはつまらないと思っていたけれど、今はこれが古典バレエの傑作といわれるのがよく分かる。ただ残念だったのは、主役の白鳥を踊ったバレリーナが私好みではなかったこと。もちろん踊りは完璧だし素晴らしかったのだけど、上手いというだけで“特別”ではなかった。主役につく「エトワール」と呼ばれるダンサーというのは、華というかオーラというか、出てきた瞬間に群舞のダンサーたちとは明らかに違うと分かる何かがある。でも彼女には最後までそれが感じられなくて不思議に思っていたところ、あとで調べてみて納得。元々、主役をやるはずだったエトワールがけがをしたため、私が見たのは代役だったようなのだ。まあこれもよくあることなのだけど。代わりに踊った彼女はなんと、優れたバレエ関係者に贈られる「ブノワ賞」を今年受賞して話題になった、日本人とニュージーランド人のハーフ、オニール八菜さん。残念ながらまだエトワールではないようで、たくさんバレエを見続けてきた目に狂いはなかったけれど、代役であれだけ見事に舞台をこなすのだからやっぱり大したものだ。

 白鳥ライン

 
私と同じように映画好き、本好き、アート好きなら周りにもけっこういるけれど、さすがにバレエ好きとなるとなかなかいない。値段を考えると、試しに一回、とも気軽に誘えないのが悲しいところなのだけど、こんなに美しいものを知らないでいるなんて本当にもったいない。パリに来た日本人全員にぜひ見てほしい。日本と比べると夢のような“格安”なのだから!そして今度はガルニエ宮の公演を忘れずに予約しよう。

 
ブラック・スワン フライヤー

この映画を見れば「白鳥の湖」が少し分かる
画像引用元:http://eiga.com/movie/55751/

 

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パリのレストラン①

バカンス1日目、同じクラスの日本人女性Cさんと一緒に4区のフレンチレストラン「PAMELA POPO」へいってきた。ここは日本人向けのフリーペーパーでチェックしていたお店。若いカップルが2人でやっているようで、対応もいい。このときは土曜日だったからなのか、お昼だったからなのか、ほとんどお客さんがいなくて、すごくゆっくりと過ごすことができた。

 
外観

 
記事に書かれていた通り、洗練されたインテリアが印象的でとても居心地がいい。映画に出てきそうな雰囲気だ。前菜とメイン、それにデザートはそれぞれ2種類だったので、全部1つずつ頼んで2人でシェア。前菜はスープと鴨肉入りのサラダみたいなの、メインは羊肉と何かの魚、デザートはアップルパイとレモンのマカロン。なんとなく、料理はこってりした味付けを想像していたのだけど、肉、魚、野菜、それぞれの素材のよさがしっかり楽しめる上品な味わいで、量もちょうどよかった。
 

 
値段は、食前の飲み物と食後のコーヒーを含めて30ユーロちょっと。この日のランチメニューが書かれた黒板に「19ユーロ」とあったので、これ全部で19ユーロって安い!と話していたのだけど、それは大きな勘違いで、前菜とメインの料理+パンで19ユーロだった。こう考えると少し高い気がするけど、まあトータルで30ユーロなら日本でちょっと贅沢なランチをするときと同じぐらいだ。普段は本当に粗食だから、たまにはこういうのも楽しまないと!残念ながら2人ともお酒がだめなのでソフトドリンクだったのだけど、ワインの品ぞろえがいいらしいから、それを目当てにいくのもありかも。

 
PAMELA POPO
15 rue François Miron, 75004 Paris

 

車
入口にあるお店の車もかわいい