パリ20区歩き ―7区―

7区位置

 
パリに来たら誰もが必ず訪れるであろうエリアのひとつ、7区。パリのシンボルとも言えるエッフェル塔があるのがこの地区だ。7区歩きは、やっぱりここからスタート。

 エッフェル塔

 
エッフェル塔は1889年に開催されたパリ万博のモニュメントとして建てられたもので、当時の建築技術の粋を集めたものだったけれど、素材や形が斬新すぎて当初はかなりの批判があったそう。今では世界中の誰もが知っていると言えるぐらい、パリになくてはならない存在だけど、今パリの人たちがこのエッフェル塔をどんな風に思っているかは分からない。こっちに来て仲良くなった日本人の女の子が、近くで見ると細かい装飾があってびっくりしたと言っていた。確かにそうなのだ。形は似ているけれど、東京タワーとは違う。上がればもちろん展望台があって、パリが一望の下に。それにしても塔の周りは観光客でいっぱい!

映画の中でもエッフェル塔は人気で『パリの恋人』『愛と哀しみのボレロ』なんかが思い浮かぶけど、特に印象的なのが『大人は判ってくれない』。こうやって建物の間からちらちらと見える感じ、冒頭のシーンに似ている。どこから撮ったんだろう。
 

 
この辺りは住宅街が多いようで、なんだかとっても雰囲気がいい。通りは広すぎず狭すぎず、ごみごみしている様子もないし、なんと言うか、いい意味で生活感にあふれている。小さなショップや感じのいいレストランがあちこちにあって、活気がある。この辺に住んだら楽しそう。エッフェル塔の近くというのが何より素敵。
 

 
7区でもう一つ外せないのがオルセー美術館。ルーヴル美術館は広すぎるし作品もあまり好みじゃないけれど、多くの日本人と同じように印象派好きなので、ここは楽しい。前回15年以上前に初めて訪れたときは、割とこぢんまりしているなと思ったのだけど、先月再訪してみると記憶の中のイメージより大きかった。印象派の作品を見て回るだけでも2時間。前回見てすごく心に残っていたルノワールの『ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット』がなぜかなかったのは残念。ちなみにパリでは、多くの美術館が毎月第一日曜は入館無料になる。ただ、このときは人が多いだろうと思って避けたのだけど、オルセーぐらい人気の美術館になると人が多いのはいつも一緒だった。これからは無料の日に行こう。
 

 
観光名所を堪能した後はショッピングへ。世界最古のデパートだというル・ボン・マルシェをリサーチ。パリでは、大きなスーパーやブティックに入るときには必ず荷物検査があるので、これが面倒で今までデパートは避けていたのだけど、入ってみるとやっぱり楽しかった。特に、豊富な食材がそろった別館はずっと歩いていてもぜんぜん飽きない。野菜、お菓子、総菜、ワインなどなど、とにかく何でもある。商品をその場で注文、試食できる小さなカウンターもあちこちにあって、けっこうたくさんの人が味見を楽しんでいる。確かにこんなにいろいろ見ていると、食べたくなってくるのも分かる。日本では最近、デパートが不振だけど、ここは大人気のようでかなりの人出だった。
 

 
再び静かな通りへ入り、ガイドブックを見て気になっていたライフスタイルショップ、イネス・ドゥ・ラ・フレサンジュに向かう。外観からわくわくして中に入ると、ファッション小物や文房具、雑貨など素敵なものがいっぱい!特に気になったのはやっぱり洋服。シンプルだけどちょっと遊び心の効いた、ありそうであまりないオリジナリティーあふれるアイテムたち。まさにパリジェンヌが着ていそうなデザインだ。普段使いにぴったりのシャツやジャケットが豊富で、かなり真剣に見ていたらお店のお兄さんに「買いますか?」と聞かれてしまった。もちろん「ノン」と答えるしかない。値札が付いていなかったから値段は分からないけど、安くはないだろうなあ。でもここはすごく気に入った。

 イネス外観

 
こんなおもしろいお店も発見。映画『ミッドナイト・イン・パリ』でも使われた、はく製や標本を扱う老舗デロール。あらゆる動物のはく製や美しい蝶の標本が置かれていて、大学教授の部屋みたい。建物も古くて趣があるし、まさに映画の中に入り込んだようだ。残念ながら写真撮影は禁止だったのだけど、有名なお店のようでお客さんも多かった。
 

デロール外観

 
最後にここ、映画のポスター専門店シネ・イマージュ。ポスター自体にはあまり興味がないので外からのぞいただけなのだけど、かなりの数を所蔵しているらしい。貴重なものや珍しいものもあるようで、ここを目指してくる人もけっこういるんじゃないかな。こういうお店、まさにパリらしい。
 

 

今まで歩いた中で7区は一番楽しかった。雰囲気のいい通り、楽しいデパート、何度でも訪れたい美術館やショップ、そして何よりエッフェル塔がある!住むのにも遊ぶのにもちょうどいいという印象。神戸の三宮辺りにちょっと似ているかなあ。
 

 
『夜霧の恋人たち』窓からエッフェル塔の見える部屋が憧れ
-映画『夜霧の恋人たち』より-

 

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期末テスト

9月から始まった秋学期が今月で終わるので、新年早々テストがあった。実はテストはこれまでにも2週間ごとにあって、そのうち半分はミニテスト、残りの半分は少し大きめのテスト、そして今回は習った範囲がすべて含まれる一番大きなテスト。その全部の結果を総合して、各生徒の次学期のレベルを先生が判断する。最初にこの学校に来たとき、レベル分けのテストを受けたけれど、今度はそれは受けなくていいことになる。考えてみたら、今のクラスは前学期から継続して受けている生徒が半分ぐらいいるのに、それにしてはレベルの差がありすぎる。先生によって各レベルの認識が違うんだろうか。

 ペンと消しゴム

 
それにしても、テストというのはいくつになってもいやなもの。しかも今回のものは今週と来週の2部に分かれていて、来週は会話のテストが待っている。今週行われた文法、読解、聞き取り、作文のテストはなんと3時間。まあ実際にはそんなに時間は必要なく、できた人から帰ってよかったのだけど、3時間と考えるだけで精神的に疲れる。ただ、テストのための勉強というのは特にしなかった。今のクラスの文法や読解は私にとってはそんなに難しくないし、実際すぐに採点、返却されたテストも文法についてはほとんどできていた。苦手の聞き取りも選択問題だったこともあり、なんとかクリア。ただ、読解はかなりレベルが高かったのと、書き取りで小さなミスが多かったのとで、点数は予想よりも低かったのだけど・・・。まあでも、それはあんまり関係ない。大学生は単位が取れるかどうかに関わってくるのでテストの結果をかなり気にしているけれど、私のような元社会人にとってはテストなんて最悪、受けなくてもいいぐらいのものなのだ。それより、実際にフランス語を使えるかどうかの方が重要。

来週の会話のテストは、与えられたテーマについて先生と2人で話すというものらしい。担当するのも、いつもの先生とは別の先生になる。これに備えて今週は、話す練習を授業でやった。いくつかのテーマが用意されていて、その中から好きなものを選び、隣の席の生徒や先生を相手に自分の考えや状況を説明する。といってもそんなに難しい内容ではなく、家族について、週末の過ごし方について、自分の国の習慣について、など、今のレベルでなんとか話せる程度のもの。こういう授業、前からやってほしかった。書くのはできるけれど話すのはできない、という日本人に多い傾向について、フランスに来てからいろいろ考えてみたけれど、自分のペースで考えられて修正もできる作文とは違い、話すときは自分の意思を伝えるための単語や表現を瞬間的にみつけなければならない、というのがやっぱり一番大きい気がする。そのための練習が多くの日本人には徹底的に欠けているんだと思う。しかも、語学学校に通う生徒にとってたいていの場合、フランス語で話す相手はそれほど親しくないし、緊張や焦りもある。その中で自分の知っている表現を使ってなんとか意思疎通する訓練、それが少なくとも私にとっては特に必要。だから授業で補ってくれるのはありがたい。
 

吹き出し

 
ところでこの会話の授業中、楽しい場面があった。友だちと待ち合わせをしているけれど、彼(女)が乗っているはずの電車が到着しないというシチュエーションでのロールプレイング。駅で友だちを待っていて駅員に遅延の原因を尋ねる役を日本人の男の子が、そしてそれに答える駅員をロシア人の女性がやることになった。この日本人の男の子は大学生で、普段から口数が少なくおとなしいタイプ。一方のロシア人女性は小さな子供を持つお母さんで、特に気が強いというわけではないけれど、ヨーロッパ人らしく思ったことははっきり言うタイプ。

    ロシア人女性(駅員): Bonjour.(ボンジュール)
    日本人の男の子(尋ねる客): Bonjour.(ボンジュール)

会話のスタート。まずは尋ねる役の男の子の方からあいさつするのが普通なのに、女性主導で始まってしまったので、ここですでに先生も含めてみんな苦笑い。

    ロシア人女性(駅員): Qu’est-ce que vous voulez?(何かご用?)
    日本人の男の子(尋ねる客): ・・・

ここも本来、男の子から始めるべき場面なのだけど、女性がにこりともせずスパッと言ってしまったのがおかしく、しかもお客さんを相手にあまり適切な表現ではなかったので、先生も笑いながら「その言い方はちょっとキツイから」と、丁寧な表現に直す。

    日本人の男の子(尋ねる客): Pourquoi le métro est en retard?
                  (どうして電車が遅れているんですか?)
    ロシア人女性(駅員): C’est la France.(それがフランスよ)

ここでクラス全員、大爆笑。まあこれは、2人のキャラと、電車なんて遅れるのが普通だというフランスの“常識”をみんなが共有しているからこそ起きた笑いなのだけど。でもこうやって、いろいろな国の人たちと同じ時間を過ごしてみて感じるのは、日常で憂鬱になったり、笑ったり、いら立ったりする場面はみんな一緒なのだということ。テストがいやだと思うのも、強い女性の前で男の子がたじろぐ様子がおかしいのも、時間通りに来ない電車に腹が立つのも、みんな同じ。国籍も年齢もフランスにいる理由もまったく違うのに、やっぱり人間って中身は変わらないのだ。周りに外国人が少ない日本人にとっては少し不思議で、すごく素敵。来週のテストのことを考えるとちょっと気が重いけど、こんなに楽しい時間が過ごせたのだから、いやなことばかりというわけでもなかったかな。

 

リュクサンブール公園
寒くても外でくつろぐのがフランス流

パリの年末年始

新しい年が明けた。日本では今、お正月飾りが静かに街を彩っていると思うけれど、パリでは相変わらずイルミネーションが輝いている。このきらびやかな光が街にあふれだすのは日本と同じ11月下旬ごろからなのだけど、クリスマスが終われば即、姿を消すわけではなく、それどころかいまだにクリスマスツリーも立ったまま。日本ではクリスマスというと24、25日だけのイベントのような感覚だけど、キリスト教の祝日はいろいろあるらしく、特にこの2日間だけが大事というわけではないよう。テレビでも「encore Noël!(まだまだクリスマス!)」といっている。26日から完全にお正月モードになる日本とはぜんぜん違うので、これには少し驚いた。ただこのイルミネーション、思ったより派手ではなく、どちらかというとシンプル。日本の方が凝っているしゴージャスかも。
 

 
バカンス中でもあるクリスマスは、フランス人にとって家族と過ごす時間。この時期、日本の年末年始と同じように、小さな子供と一緒に大きな荷物を持って電車に乗る人をたくさん見かけた。意外だったのは、レストランが閉まっていること。日本ではクリスマスにレストランでちょっと豪華な食事をするという人も多いけど、こちらではクリスマスには家に集まってみんなで食事をする習慣があるので、お店も閉まっているのだそうだ。学校の授業で先生に聞いてびっくりしたのだけど、24、25日の2日間は実際に電気の消えたレストランが多くて、通りも閑散としていた。
 

テレビでは、日本でもおなじみ「ブッシュ・ド・ノエル」の特集も

 
そんなクリスマスとは逆に年明けのカウントダウンは、友だちや恋人と一緒ににぎやかに迎えるものだそう。シャンゼリゼ通りの人出はすごいと聞いていたけれど、テレビで見るだけでも本当にすごい。このときは凱旋門もプロジェクションマッピングによる楽しい演出があったようだけど、この人ごみを見るととても行く気にはなれない。ニュースでは日本でやるのと同じように、先に新しい年を迎えた国の年明けの瞬間の様子を伝えていたけれど、中国や台湾も含め、どこも音楽を鳴らし花火を打ち上げて派手にお祝いしている。このアパートの近くでも、少し花火の音が聞こえた。個人的には、冬空に鐘の音が響く日本の情緒ある年明けが好きだけど、そういう静かなお正月は世界では珍しいのかもしれない。
 

シャンゼリゼ通りの人出

 
バカンスに入ったころはまだ10度を超える日も多くてそれほど寒くなかったけれど、クリスマスを過ぎてから一気に寒波がきた。ここ何日かは最低気温マイナス3度、最高気温2度ぐらいの日が続いていて、本当に寒い。しかも、明日からは学校だ。2週間も休んだのに、新年こんなに早く普段の生活が始まるとぜんぜん休んだ気にならないし、お正月気分もまったくない。まあ一人暮らしをしていると、実家に帰らなければお雑煮もおせちもないのは日本にいても一緒なのだけど。

 

年明けの凱旋門
素敵な一年になりますように

 

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