オペラ・バスティーユでバレエを見る

昔やっていたこともあってバレエが大好き。日本でも、外国のバレエ団が公演に来るたびに一人で見にいっていたぐらい。だからパリにいる間にオペラ座でバレエを見たいというのは、単なる憧れや好奇心ではなく、純粋にこの最高の芸術を本場で楽しみたいという気持ちだった。そして、その望みが早くもかなった!

 
トゥ・シューズ

 
パリのオペラ座というと真っ先に思い浮かぶのが壮麗なオペラ・ガルニエだと思うけれど、残念ながら今回はここではなく、バスティーユにあるオペラ座。1989年に建てられたホールで、近代的なデザインと最新の舞台技術が特徴だとのこと。このオペラ・バスティーユ、名前だけは知っていてガルニエ宮との関係をぜんぜん把握していなかったのだけど、どちらもオペラとバレエの両方を上演するのだそう。どういう使い分けをしているのかは分からないけれど、バスティーユの方が収容人数がだいぶ多いようだから、人気のある公演はこちらでやるのかもしれない。ただ、ここはまあ大都市ならどこにでもあるような劇場と同じで、新しくなった大阪のフェスティバルホールの方が豪華かも。
 

 
プログラムは、バレエを知らない人でも知っている「白鳥の湖」。だいぶ前からホームページでチェックしていたのに、そのときはまだ迷いがあってぐずぐずしているうちに忘れてしまい、気づいたときにはチケットが完売してしまっていた。歴史の古いオペラ座といえども、今はネット上で世界中どこからでも買えるようになっているから、人気のあるものはあっという間に席がなくなってしまう。それにしても、ほぼ1カ月間ずっとやっているのに、全部売り切れなんて!でもまあ、考えてみたらこっちはバカンスだし、きっと年末はシーズンなのだ。だからこんなに大きな演目をやっているんだろう。

当日券が出るらしいとネットに出ていたので一度、バスティーユのチケット売場にいってみたのだけど、もう残っていないといわれて落胆。それでもあきらめきれず、後日もう一度詳しく検索してみると、この売場とは別に当日券を買うための列があるらしく、開演2、3時間前にいってそれに並べばまだ望みがあるということが分かった(チケット売場のお姉さんはなんで教えてくれなかったんだろう)。

ところが、トライしようと思っていた日の昼すぎ、試しにオペラ座のホームページを見てみると、なんとキャンセル戻りのチケットが出ている!それも50ユーロの席!急いで手続きして、無事入手。公演は当日の19時半開始だったから、まさに直前だ。この瞬間、100ユーロ以上の席もいくつか残っていたのだけど、手続きを終えて最初のページに戻ってみると、もうなくなっていた。きっと私と同じような人がたくさんいたんだと思う。だって、オペラ座の白鳥全幕なんてめったに見られないのだ。この先もコンテンポラリーダンスのプログラムが多く、古典作品を見られる機会自体が少ないから、チケットが取れたときは興奮して手が震えてしまった。

ちなみにこのホームページ、残っている席の中から自動で一番いい席を選んでくれて、舞台の見え方まで写真で確かめることができる。もちろん変更も可能。チケットはスマホでダウンロードして画面を見せるだけでOK。でも希望すれば、手数料がかかるけれどなんと海外まで送ってくれるから、日本の自宅でも受け取ることができる。なかなか素敵なシステム。
 

ホームページ画面
選んだ席から舞台がどう見えるかが分かる

 
日本ではまだまだバレエというと敷居が高いイメージがあると思うけれど、ヨーロッパでは文化として根付いていて、それほど高い金額を払わなくても見ることができる。もちろん、日本と同じように2、3万円する席もあるけれど、価格帯が幅広くて、一番安い席はなんと5ユーロ!ただ、この席からどれぐらい舞台が見えるのかは分からない。私が買った50ユーロという席は、日本でオペラ座公演を見るならたぶん存在しないか、一番安い席になると思うけど、オペラ・バスティーユでは後ろの方だったもののなんと1階で、なかなかよく見えた。ところで、このバスティーユのホールには補助席というのがあって、どうやら階段側の席がこれになっているよう。ホームページから予約するときに「OPTIMA」と出ていたらこの席になるのだけど、今回は幸いにも、この補助席の1つ隣の席だった。せっかくなら普通の席に座りたい。ちなみに服装はというと、特に着飾る必要はなく、普段着で大丈夫。この辺は日本と同じだ。足元はブーツにしてみたけれど、気軽にスニーカーで来ている人もいっぱいいた。

 
補助席

 
さて、オペラ座みたいな一流のバレエ団になると専属のオーケストラがあって、クラシックの演目なら音楽はすべて生演奏される。つまり、バレエと生オーケストラの両方を同時に楽しめるのだ。バレエは途中でダンサーがお辞儀をしたり、このステップを踏むのと同時に曲が始まる、というタイミングがあるから、指揮者は舞台の進行を見ながらタクトを振る。もちろん、演奏も超一流。白鳥の湖なら特に、第1幕の王子と白鳥のパ・ド・ドゥ、この場面のハープとバイオリンの美しさといったらない。踊りだけでなく、その音色にまで心を奪われてしまう。日本を含む海外で公演があるときにはこのオーケストラも一緒に付いていくから、その経費を考えると、どうしてもパリでやるときと比べて高くなってしまうことになる。ただ、いくら名高いオペラ座専属とはいえ、あくまでもバレエやオペラが主役というポジションについて演奏家たちがどう思っているのかは気になるところ。

肝心の舞台はというと、やっぱりよかった。堪能した。オペラ座は世界三大バレエ団のひとつともいわれているぐらいそもそものレベルが高いし、派手すぎない上品な演出もいい。白鳥の湖って、みんな同じ白の衣装だし、白鳥たちが出てくる場面は背景も暗いから、子供のころはつまらないと思っていたけれど、今はこれが古典バレエの傑作といわれるのがよく分かる。ただ残念だったのは、主役の白鳥を踊ったバレリーナが私好みではなかったこと。もちろん踊りは完璧だし素晴らしかったのだけど、上手いというだけで“特別”ではなかった。主役につく「エトワール」と呼ばれるダンサーというのは、華というかオーラというか、出てきた瞬間に群舞のダンサーたちとは明らかに違うと分かる何かがある。でも彼女には最後までそれが感じられなくて不思議に思っていたところ、あとで調べてみて納得。元々、主役をやるはずだったエトワールがけがをしたため、私が見たのは代役だったようなのだ。まあこれもよくあることなのだけど。代わりに踊った彼女はなんと、優れたバレエ関係者に贈られる「ブノワ賞」を今年受賞して話題になった、日本人とニュージーランド人のハーフ、オニール八菜さん。残念ながらまだエトワールではないようで、たくさんバレエを見続けてきた目に狂いはなかったけれど、代役であれだけ見事に舞台をこなすのだからやっぱり大したものだ。

 白鳥ライン

 
私と同じように映画好き、本好き、アート好きなら周りにもけっこういるけれど、さすがにバレエ好きとなるとなかなかいない。値段を考えると、試しに一回、とも気軽に誘えないのが悲しいところなのだけど、こんなに美しいものを知らないでいるなんて本当にもったいない。パリに来た日本人全員にぜひ見てほしい。日本と比べると夢のような“格安”なのだから!そして今度はガルニエ宮の公演を忘れずに予約しよう。

 
ブラック・スワン フライヤー

この映画を見れば「白鳥の湖」が少し分かる
画像引用元:http://eiga.com/movie/55751/

 

記事のタイトルまたは日付をクリックすると、コメントしていただけます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください