ヴァンヴの蚤の市

パリといえば蚤の市が名物。そのうちの一つ、今住んでいる場所から近く地元の人にも人気だというヴァンヴの蚤の市へ行ってきた。街路樹に囲まれた気持ちのよい歩道の両側に、たくさんの露店が並ぶ。ガイドブックによると、その数なんと380。せっかく来たからには、当然全部見ないと!
 

蚤の市の様子

 
食器や手作りの服、アンティークの時計にカメラ、アクセサリー、絵、文房具などなど、気になるものがいっぱい!日本ならよくショップのインテリアとして置いてある、装丁の美しい本や凝った装飾のフレームなんかも豊富。蚤の市って古くて安いものばかりかと思っていたけれど、ほかの人が値段を尋ねるのをきいているとそうでもないようで、いいものはそれなりにするようだった。確かにバッグなんかは本当に素敵なものを置いていて、ある店でフランス女優が持っていそうな黒革のハンドバッグを手に取って眺めていると、店主のマダムが「ピエールカルダンよ」と教えてくれた。こういうところに、フランス人のセンスのよさを感じる。
 

 
ヨーロッパの人は古いものを大切に使うけれど、きっと普段から日用品もこういうところで買うんだろう。日本なら新しいものに買い替えるのが一般的だけど、ある人のところで役目を果たした後、今度はまた別の人の役に立つって、なんだかドラマチックだ。まあこっちは日本の100均のように安くて質のいいものってなかなかないから、逆にこういう文化が続いているのかもしれないけれど。

できればアンティークっぽい髪留めと小さい手鏡がほしかったのだけど、残念ながらみつからず。まあ先は長いし、また来ようかな。ほかの蚤の市にも行ってみたいし。ちなみにこのヴァンヴの蚤の市は土・日曜のみ開催で、昼すぎにはもう店じまいを始めているところも多かったから、なるべく早い時間に行くのがおすすめ。日本人観光客がすごく多かった・・・。

 

トラム
こんなトラムに乗っていった

日本から荷物が届く

フランスに来るとき持ってきたのは、飛行機に預け入れできる重量いっぱいの20キロまで入れたスーツケースと、2~3日分の荷物が入ったバックパック、それから普段使い用のデイパック。でも当然それだけでは長期の生活には不十分で、後から段ボール2箱分の荷物を送ってもらい、それが無事届いた。

 荷物ダンボール

 
日本から海外に荷物を送る場合、郵便局を利用するのが一般的だと思う。いろいろ種類があって、船便を選べば1~2カ月かかるけど一番安い。でも郵便局は不安が多かった。もちろん日本はちゃんとしているけれど、ほかの国は決してそうじゃない。例えば一番早いEMSという航空便の場合、フランスでは信用ならない会社が配達を受け持っているらしく、部屋にいるのに不在票が入っていたり、荷物が抜き取られたりといったことがあるそう。それにもし留守だった場合、再配達なんてシステムはなくて郵便局まで取りに行かないといけないのだ。ドイツに住んでいる妹が、荷物を受け取ったはいいものの持って帰れないので、郵便局からタクシーを使ったとか・・・。そんなことになったら、せっかく安く送ってもまったく意味がない。それに何事も適当なフランスでは最悪、荷物が行方不明になることだってあり得る。だからみんな、配達がありそうな日は学校を休んで一日待っているんだって!無料で再配達してもらえる上に時間指定までできる国なんて、きっと日本ぐらいだ。

そんなわけで今回は、クロネコヤマトの留学宅急便というのを利用してみた。郵便局に比べると確かにちょっと割高だけど、まず日本の家まで荷物を取りに来てくれるし、再配達も対応してくれそうだし、トラブルがあっても日本語で問い合わせが可能。何よりブランドの信頼感がある。ちなみに今住んでいるアパートの部屋番号は、こっちに来て正式な契約書を交わすまで分からないシステムになっているので、出国前に荷物を出すことができなかった。だから、日本にいる親に郵便局まで持って行ってもらうことを避けるためにも、クロネコが一番だったのだ。
 ahiato_nekoところで外国に荷物を送るというのは思いのほか大変なことで、まず送れないものが多い。留学宅急便を使ってフランスに送る場合は、水を含む食料全般、コンセントやアダプターの付いた電化製品、香水、カイロなどが一切ダメ。それと郵便局から送る場合でも同じだけど、インボイスという書類の作成が必要。これは税関の検査などのために使われるもので、要するに荷物の中に何が入っているかの明細書なのだけど、これが本当に面倒くさい!コート●●円1枚、靴下●●円5足、といったかんじで、中身すべてを書かなければいけないのだ。しかも手書き、しかも英語(またはフランス語)で。とはいえ、あんまり細かいものまでいちいち書いていられないから適当に端折ったりしたけれど、運悪く中を開けられて書類と違っていた場合、没収されたり日本の自宅まで戻ってきたりするらしい。それから新品のものには税金がかかるので、石けんとか詰め替え用のファンデーションもいちいち一回パッケージを開けて、テープで封をしてみたり・・・。海を越えるだけで、何とも煩雑な手続きが必要なのだ。

届いた荷物は開けられた形跡もなく、かかった日数は日本での発送から9日ほどだった。たまたま部屋にいたタイミングだったし、このアパートは管理事務所があるから不在でも預かっておいてくれたのかも。配達員は中国人っぽい男性で、日本のクロネコドライバーたちと同じく感じがよかった。これでやっと普段の生活らしくなる。とにかく、タオルとタッパーと日本で愛用していたお湯で落とせるマスカラが緊急に必要だったので助かったー。

 

パリ本
パリの本も手元に

 

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なぜパリなのか

留学というと、やっぱり英語圏を思い浮かべる人が多いと思う。英語もそれほどできるわけじゃないのに、なぜフランスなのか。そしてなぜパリなのか。こちらに住んでいる日本人の中には、別にパリでなくてもよかったという人もけっこういるみたいだけど、私は強い思い入れを持ってここに来た。
 

セーヌ河畔

 
パリが好きになったのは、大学時代にフランス映画を見るようになってから。特に1950~60年代にかけてのヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれる作品群にとても衝撃を受けた。フランスは日本と同じ中央集権なので、東京のようにパリに政治、経済、文化とすべてが集まっているのだけど、そのせいかフランス映画にはパリを舞台にしたものがとても多い。中でもヌーヴェル・ヴァーグ作品は、それまでとは違う“ありのまま”のパリを撮ったもので、よくみずみずしいと評されるように本当に空気まで感じられる気がするのだ。これらの映画を見てパリに憧れた人って、ある程度以上の世代にはきっとたくさんいるはず。私も同じようにパリに魅了された一人なのだけど、映画を見てパリのよさを知ったというよりは、元々好きだったものがここに詰まっている!というかんじだった。高さも窓の位置もそろった建物が並ぶ古くて美しい街並み、今でも真似したくなる洗練されたファッション、権力に対する反抗心、人の目を気にすることなく誰もが好きな人生を颯爽と生きている自由な雰囲気・・・。画面を見るだけで、心を奪われて、胸がいっぱいになって、幸せな気持ちになる。だから私にとっては“フランス”というより“パリ”なのだ。
 

画像引用元(左から):
http://d.hatena.ne.jp/apocalypsedone/20120910/1347299897
http://movie.walkerplus.com/mv12863/
http://blog.livedoor.jp/hktsunagetemiru/archives/30762334.html
http://blog.livedoor.jp/stainbeck/archives/51510801.html
http://blog.goo.ne.jp/aili468/e/eadd2534ccab54efd1e388e2ccbbf22f

 
もう15年以上も前、初めて旅行でパリを訪れたとき、映画の中の街がそのまま目の前にあって驚いた。あまりにもイメージ通りのパリだった。それ以来、いつかパリに住んでみたいとずっと思ってきたのだ。今回の2度目のパリは初めて来たときと変わらず、街並みを見た瞬間に心がときめいた。正確には、住んでいるのはパリではなく郊外なんだけど、それでも毎日この街に来ることができる!学生のときであればまた違ったことを吸収できていただろうけれど、結果的には今でよかった。ある程度社会の厳しさも経験した年齢だからこそ得られるものがたくさんあるはずだし、何より世間に揉まれたおかげで少々のことではめげない自信がある。
 

青い自転車

 
映画で見たパリの景色は今もここにあるけれど、時代とともに空気は変わっているだろう。スクリーンの中の街が私の心に残したものを探しながら、短い間だけれどここで生きて、今のパリの空気を感じたいと思う。
 

ポン・ヌフとエッフェル塔

 

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