なぜパリなのか

留学というと、やっぱり英語圏を思い浮かべる人が多いと思う。英語もそれほどできるわけじゃないのに、なぜフランスなのか。そしてなぜパリなのか。こちらに住んでいる日本人の中には、別にパリでなくてもよかったという人もけっこういるみたいだけど、私は強い思い入れを持ってここに来た。
 

セーヌ河畔

 
パリが好きになったのは、大学時代にフランス映画を見るようになってから。特に1950~60年代にかけてのヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれる作品群にとても衝撃を受けた。フランスは日本と同じ中央集権なので、東京のようにパリに政治、経済、文化とすべてが集まっているのだけど、そのせいかフランス映画にはパリを舞台にしたものがとても多い。中でもヌーヴェル・ヴァーグ作品は、それまでとは違う“ありのまま”のパリを撮ったもので、よくみずみずしいと評されるように本当に空気まで感じられる気がするのだ。これらの映画を見てパリに憧れた人って、ある程度以上の世代にはきっとたくさんいるはず。私も同じようにパリに魅了された一人なのだけど、映画を見てパリのよさを知ったというよりは、元々好きだったものがここに詰まっている!というかんじだった。高さも窓の位置もそろった建物が並ぶ古くて美しい街並み、今でも真似したくなる洗練されたファッション、権力に対する反抗心、人の目を気にすることなく誰もが好きな人生を颯爽と生きている自由な雰囲気・・・。画面を見るだけで、心を奪われて、胸がいっぱいになって、幸せな気持ちになる。だから私にとっては“フランス”というより“パリ”なのだ。
 

画像引用元(左から):
http://d.hatena.ne.jp/apocalypsedone/20120910/1347299897
http://movie.walkerplus.com/mv12863/
http://blog.livedoor.jp/hktsunagetemiru/archives/30762334.html
http://blog.livedoor.jp/stainbeck/archives/51510801.html
http://blog.goo.ne.jp/aili468/e/eadd2534ccab54efd1e388e2ccbbf22f

 
もう15年以上も前、初めて旅行でパリを訪れたとき、映画の中の街がそのまま目の前にあって驚いた。あまりにもイメージ通りのパリだった。それ以来、いつかパリに住んでみたいとずっと思ってきたのだ。今回の2度目のパリは初めて来たときと変わらず、街並みを見た瞬間に心がときめいた。正確には、住んでいるのはパリではなく郊外なんだけど、それでも毎日この街に来ることができる!学生のときであればまた違ったことを吸収できていただろうけれど、結果的には今でよかった。ある程度社会の厳しさも経験した年齢だからこそ得られるものがたくさんあるはずだし、何より世間に揉まれたおかげで少々のことではめげない自信がある。
 

青い自転車

 
映画で見たパリの景色は今もここにあるけれど、時代とともに空気は変わっているだろう。スクリーンの中の街が私の心に残したものを探しながら、短い間だけれどここで生きて、今のパリの空気を感じたいと思う。
 

ポン・ヌフとエッフェル塔

 

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