キューバ旅行②

今回、ハバナのほかに行ったのはトリニダーという古い町。キューバには鉄道も走っているようなのだけど、ぜんぜん時間通りに運行しないらしく、移動にはみんなバスを使う。だからどこへ行くにも時間がかかり、このトリニダーはハバナから6時間ぐらい。戻ることを考えると移動だけで2日取られるので、さらにほかの町へ行くことは残念ながらできなかった。このトリニダーはユネスコの世界遺産になっていて、スペイン植民地時代の町並みが残っている。石畳の道、カラフルな家々、馬車。どこまで行っても、こんな風景が続く。
 

 
よかったのは、町の中心部で毎晩行われる野外ライブ。なんと100円ぐらいで入場できて、キューバの伝統的な音楽やサルサダンスが楽しめる。キューバの音楽って大好き。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』も、もちろんリアルタイムで見た。演奏にしてもダンスにしても、キューバ人はリズム感がまったく違って圧倒される。なんてカッコイイんだ。
 

野外ライブ

 
ただ、この町は低い建物ばかりで日陰があまりなく、昼間は暑くて歩いていられない。2日間いたのだけど、こぢんまりしているから1日で歩けてしまうので、2日目は予定を変更してビーチへ。トリニダーからバスで30~40分ほど。この情報も地球の歩き方には載っていなくて、同じ宿の人から聞いたのだ。憧れのカリブ海!遠くから見ると本当にエメラルドグリーンに見えるぐらいきれいだし、人もあまり多くない。この日、おなかをこわしていてけっこうしんどかったのだけど、日陰でずっと本を読んでいたら気分もよくなった。波の音って最高。
 

 
ところで、キューバにはなんと観光客用と国民用の2つの通貨があり、どちらを使うかで物価がぜんぜん違う。観光業が完全に政策として進められているのだ。空港で両替をすると観光客用のCUC(クック)しかもらえなくて、これだと何を買っても日本と同じぐらいする。500ミリリットルのペットボトル1本100円、レストランで食事をすれば500円以上。カサ(民宿)は安いところだと1泊1000円ぐらいだけど、3000円以上のところもけっこうある。こんなに物価が高いとは思っていなくて、あまり現金を持っていってなかったから、だいぶ気を使った。というのも、クレジットカードがほとんど使えない上に、ATMもきちんと動かない場合が多いので、現金を引き出すのも不安だったのだ。ただ、同じ宿に泊まっていた日本人の子は問題なく引き出せたと言っていたから、まあ大丈夫なのかもしれないけれど。
 

左:観光客用クック 右:国民用モネダ

 
観光客が行くような場所は大体クックで支払うようになっているのだけど、クックを国民用のMN(モネダ)に両替することもでき、これだとかなり安い。最後の2日間ぐらいはモネダを使い、地元の人が行くような屋台のごはんを食べてみた。チャーハンみたいなのが30円ぐらい、プリンが15円ぐらい。どれもいい味!
 

 
ちなみに、レストランの食事はヨーロッパと変わらない。高いけど普通においしいし、ほとんど必ず、キューバ音楽の生演奏も楽しめる。
 

 
最初からモネダを使っている人も多かったし、両替できると知ったとき、それならなんでみんなそうしないのだろうと思ったのだけど、地球の歩き方を読んで納得。キューバの社会情政を考えて、節度を持って行動するように。うーん、確かにそうだ。スペインの植民地となり、アメリカの経済制裁を受け、独自の道を歩んできた国。ゲバラやカストロが目指した方向は決して間違っていなかったと思うけれど、その社会主義がうまく機能しているかというと、必ずしもそうではない。今も配給制が残っているとはいえ、生活が厳しいのだろうということは、ただの観光客でも感じることができる。しかし、だからといって資本主義が正解でないことは、今の日本を見れば明らか。それでも、たまたま豊かな国に生まれたためにそれなりに豊かな生活を送れるのであれば、旅行という贅沢のためにここでお金を使うのもまあ仕方ない。とはいえ、このパサパサのサンドイッチが500円っていうのは、さすがにボッたくりだと思うけど。
 

サンドイッチ

 
それにしてもおもしろいのは、同じ旅行者でも過ごし方が人それぞれだということ。郊外も含めて行けるところは全部行く人、街歩きはせず毎日ビーチに泳ぎに行く人など、本当にさまざま。個人的には大きな街を歩くのが好きだから、ハバナにもすっかり魅了された。想像よりずっと楽しくて、パリなのに帰りたくなかった。なんといっても、人がいい。貧しいはずなのに明るいし、やさしいし、あまり状況を悲観していないように見える。あと5年ぐらい早ければもっとよかっただろうし、5年後には激変しているかもしれないけれど、もう一度行きたい。ちなみに日本からだと往復30万円かかると思っていたら、今回会った日本人の子たちに9万円ぐらいだよーと笑われたので、帰ってから早速チェック。確かに、成田からだと約9万円、関空発着でも10万円ぐらいになっている!国交が正常化したことでアメリカとキューバの直行便もできたし、かなり価格が下がったみたい。これなら、日本からでも時間さえあれば行ける(それが一番の問題なのだけど)。帰るときに両替所を間違えるっていうちょっとしたトラブルがあって、キューバの通貨を少し持ってきてしまったので、絶対にまた行かなければ!

 
キューバ旅行①はこちら
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朝焼け
帰りの機内から朝焼けを見る

 

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聞き取りの“壁”

前の記事でも書いたし、ずっと同じことばっかり言ってるけど、やっぱりフランス語が聞けない。先週、聞き取りのテストがあり、それが返ってきたのだけど、20点満点中13.5点。自分ではまあまあ分かったと思ったのに、やっぱり細かい内容になると理解できていなくて、勘で答えたものが全部間違っていた。周りの生徒の点数をちらっと見てみると、大体みんな16点以上で、中には19点という人もいた。全部選択問題だったから、たまたま当たっていたという人もいるかもしれないけど、それにしてもこの差は一体なんなんだろう。確かにみんな難しい単語でもよく知っているから、その分、理解できる力もあるんだろうけれど、自分の単語力がそこまで劣っているとも思わない。じゃあみんなにはどうして意味が分かって、私にはどうして分からないのか。みんなには何が聞こえていて、私には何が聞けていないのか。

 テスト

 
テストの前の週にも練習で別の音声を聞いたのだけど、6回ぐらい聞いても正解が分かるまでには至らなかった。でも後でテキストを見ると、知らない単語がほとんどない。ということは、つまり音が聞き取れていないということ。自分なりにディクテーションをやって何度も聞いて、だいぶ単語の切れ目が分かるようにはなったのだけど、やっぱりまだまだだ。それに、苦手意識があるから緊張してしまい、授業でやるときはいつも以上に聞けなくなってしまう。

きのうの授業では、ついに指名されても答えられなかった。今まではなんとなく分かったふりをしていたのだけど、それも限界。フランスのやり方なのか、学校の方針なのか、先生たちの好みなのか、どの授業でも当てられることは基本的になくて、できる人たちが勝手にどんどん答えていく。このときやっていたのは、セリフのない漫画を見て、各コマを説明する文章を作っていくというもの。「誰がいる?」「何をしている?」「どんな表情?」「何を考えている?」などなど、先生が次々に質問していく。これと同じような授業は前学期のクラスでもあったけど、それとは明らかにレベルが違って、難しい表現を使わないと答えられないような絵になっている。でも、こういうときのみんなの積極性はすごい。知っていても思いつくのに時間がかかるような単語やフレーズがどんどん出てくるし、中には個人的な感想を述べる人もいて、間違っていようが何だろうが、とにかく考えていることを口に出すのにためらいがないのだ。

まあ答える人というのは決まっていて、発言しない人もけっこういるのだけど、何も言わなくても分かっている人と、私みたいにぜんぜんついていけていない人に分かれる。そしてときどき先生が発言していない人を指名するのだけど、それにたまたま当たってしまった。このときは、みんなが言ったことをまとめながら先生が新しい表現を黒板にどんどん書いていて、ノートを取るのと説明を聞くのとで必死だったこともあり、何を聞かれているのか分からない。それならそれで分からないと言えばいいのだけど、それができる余裕もない。黙ってしまうっていう、最悪のパターン。こういうとき日本だと、指名された人が答えるまで待つのが普通だけど、こっちはそんなにのどかじゃない。みんな言いたくてたまらないから横から次々発言し、先生もまたそれに答えていく。つまり、できない人はずっとできないまま、黙ってついていくしかないのだ。

 罫線

 
聞けない原因をいろいろ考えているうちに、思いついたことがあった。一つは、なまりのあるフランス語が分かる生徒が多いなということ。ヒアリングができない理由として、正しい発音を覚えていないから、というのがけっこうあると思うのだけど、私の場合、中国語なまりのフランス語とか、英語なまりのフランス語とか、フランス人以外の話すフランス語が聞き取れない。逆の意味で、思っているのと違う音だからだ。申し訳ないけれど、生徒の中にはどう聞いてもフランス語に聞こえないひどい発音の人がけっこういる。こういうのが聞き取りにくいというのはほかの日本人の生徒たちとも意見が一致したから、同じように感じている人はたくさんいるんじゃないかと思っていたけど、日本人以外はみんな割と普通にフランス語として理解している。フランス人の発音というのも当然、人によって違いがあるので、自分が思っているのと別の音に聞こえる場合は聞き取れないのだけど、いろいろなバリエーションを覚えなければいけないということなんだろうか。もう一つ気づいたのは、読解力。読むときは、何度でも見直せるという安心感があるからなのか、1回目に読んだときは内容があまり頭に入っていなくて、途中で前に戻って読み直すっていうことがよくあるのだけど、読んだ瞬間に理解できる力をつけないと、聞いたときもすぐに意味が頭に入ってこないのかもしれない。

とはいえ、毎日毎日これだけ聞いていると最初のころより多少はマシになっていて、話すのはぜんぜん進歩がないのに比べ、聞き取りの能力は少しずつでも上がっているなと感じる。日本にいるときからずっと何を言っているのか分からないまま聞いていた音声の中に、突然習ったばかりの単語が意味を持って聞こえてきたり。テキストにトレーシングペーパーがかかっていたのが、その単語の箇所だけクリアになるイメージ。この場合は、知らない単語が聞き取れていなかったわけだから、やっぱり語彙を増やすことも必要。それと、来た当初はテレビや映画を見ても5%も分からなかったけど、今は25~30%ぐらいは聞けるようになった気がする。それでも、同じクラスのみんなに比べたらたぶん6割ほどしか理解できていない。

ちなみに今のB1-1のクラスだと、練習用につくられた文章や会話ではなくて、普通のラジオやテレビの音源を使う。だからみんなは普段、これらをけっこう理解できているんじゃないだろうか。それだけ聞けたらだいぶ違うと思うのだけど、どうしたらそこまでいけるんだろう。今、かなり悩んでいる。苦しい。それでも、コツコツやるしかない。この“壁”を越えれば、少し楽になるはず……。

 

TV5MONDEのサイト

聞き取り練習に使っているTV5MONDEのサイト
http://apprendre.tv5monde.com/

授業についていく

春学期が始まって1カ月。授業のペースにもだいぶ慣れてきた。メインの総合フランス語のクラスは初めのころより人数が増えて、今はたぶん17人。前学期に同じクラスだったウクライナとロシアの女性も途中から入ってきた。ただ、これだけいると毎日たいてい誰か1人は休むので、全員そろうことはほとんどない。そして結局、日本人は私ひとりのまま。クラスの雰囲気が分かってきたこともあってもうそれほど寂しいとは思わないけど、やっぱりこれはかなり珍しいことのようで、人に話すと驚かれることが多い。まあ17人いて国籍は本当にばらばらだから、逆におもしろいのだけど。ただ、教室が狭くて窮屈なのはちょっと問題。
 

教室からの眺め
4階にある教室から

 
新学期が始まったときにも少し書いた通り、先生はすごくエネルギッシュで、すごくよくしゃべる。いかにもフランスの女性というかんじ。授業の材料も内容もさまざまで、例えばフリーペーパーの中から好きな記事を1つ選んでプレゼンしたり、サガンの『悲しみよ こんにちは』を読んだり、句読点のついていない文章にそれらを書き込んでいったりと、バラエティー豊か。

この先生は今期の映画の先生でもあるから、メインのクラスでも映画を題材にすることが多く、この前はゴダール『軽蔑』の予告を見てグループでシナリオを書くという課題があった。ゴダール作品のフランス語版の予告なんて初めて見たのだけど、ナレーションが独特で、ストーリーについて語るのではなく、作品に関連した単語がひたすら読まれる。「アルファロメオ」「ギリシャ彫刻」「海」「裏切り」「女優の卵」「愛撫」「復讐」といった具合で、シナリオにもこれらの単語を使わなければいけなかったから、どのグループもかなりドラマティックなストーリーになっていた。でも重要なのは内容ではなく、文法的に正しく、そして楽しくできればいいのだ。

あとは、雑談で政治や歴史の話題がよく出てくるのも特徴的。フランスは今、5月の大統領選挙に向けてかなり盛り上がっているから、各候補者に対する先生の個人的見解が聞けるのはすごく興味深い。それから、みんなで歌も歌う。これはどっちかというと、楽しいから歌おうってかんじなのだけど、フランス語で歌えるようになるのはうれしい。

始まった当初はすごく難しくてどうしようと思ったし、今も必死でついていかなければいけないのは同じなのだけど、だいぶ落ち着いて先生の話を聞けるようになってきた。そうすると、最初のころよりは多少マシで、なんとかやっていけそう。だんだんみんなのレベルも分かってきて、中には私よりしんどそうな人もいるのでちょっとほっとした。

ただ、やっぱり聞き取りは苦手。この先生はしゃべるのが速いから、ぼーっとしていると気づいたときには何か質問されていて、その内容を聞き逃していることがよくある。でも、みんなちゃんと聞き取れていて、即座に答えているのだ。そういう人はしゃべるのも達者で、例えばあまり出てこない単語の意味を質問されたとき、もし知っていてもそれをフランス語で説明するのってすごく難しいのに、それがすぐにできてしまう。なんでそんなにしゃべれるの?って不思議なんだけど、例によってそういう人でも文法問題になるとできない。ときには、初級で習うような内容でも知らなかったりする。赤ちゃんと同じように聞いて覚えたんだと思うけど、文字を見ないで勉強するのってなんだか不安。文法ができていないということは、話すときも活用や時制は間違っているんだろうけど、それはたぶん先生にしか分からないから、すごくしゃべれているように見えてしまう。最近、感じるのは、読み書きの能力と会話の能力ってきっと違うんだろうなということ。やっぱり聞くのと話すのは、半年たってもなかなか上達しない。
 

罫線

 
映画のほかにもう一つ選択授業があり、これはフランスのモードを取っていたのだけど、書き取りのクラスに変更した。モードも悪くなかったけど、ほかの生徒がみんなレベルが高かったからグループワークになるとしんどそうだったし、なんと半分ぐらいが日本人でさすがにうっとうしかった。そして何より、最初の授業のとき、私ってそこまでモードに興味があるかなって思ってしまったのだ。映画に比べると情熱がまったく違う。

パリに語学留学する人にとって、このパリ・カトリック学院(通称パリカト)と同じぐらい人気なのがソルボンヌ大学付属の語学学校なのだけど、ソルボンヌには映画やモードといった幅広い文明講座はおそらくない。だから、興味に応じてピンポイントで学べるのがパリカトの魅力とも言えるのだけど、こういった授業はどうしても先生の講義が中心なので受け身になってしまう。

選択授業には、文明講座のほかに会話や書き取り、そして前学期に取っていた発音など技術的なフランス語を学ぶクラスもあって、このうち会話の授業は、すでに受けたことのある人たちからあまりよくないと聞いていたので選択肢にはなかったのだけど、書き取りの授業は気になっていた。そして実際、替えてみて正解。一般的に、書くレベルはしゃべりより低いらしく、1つ下のA2-2のクラスを取ったのだけど、個人的には書く方が得意なこともあって授業には割と余裕でついていけるし、内容もおもしろい。先生もいい。このクラスは「パリについての書き取り」なので、毎回パリをテーマにした小説や歌を題材に、同じような構成で文章を書く。先週の授業では、午前5時のパリを歌ったシャンソンをピックアップ。ゲイバー、カフェ、エッフェル塔など、パリ各所の午前5時の情景を描いた有名な歌らしく、これと同じように自分が好きな時間のパリを描写するという課題だった。しかも韻を踏んで!普通に文章を書くだけならそれなりにできるけど、こうやって制限されると頭を使うし、発想力も問われる。日本語と同じようにフランス語でもいろいろな表現を使えるといいのだけど、残念ながらまだまだそこまでのレベルには達していない。きっと私たちが書いている文章って、小学生の作文みたいなものなんだろうなあ。
 

ペンのイラスト

 
メインの授業は同じB1-1のレベルでも先生によってだいぶ内容が違うみたいで、ほかのクラスの人に聞いてみると、ペースも遅いし少し退屈だと言っていた。私の場合はかなり大変で退屈する暇なんてないけれど、すごくいい先生だし、よかったと思っている。とはいえ、できれば宿題をたくさん出すのだけはやめてほしいのだけど・・・。

 

セーヌ川沿いの景色
セーヌ川沿いが気持ちのいい季節に

 

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