授業についていく

春学期が始まって1カ月。授業のペースにもだいぶ慣れてきた。メインの総合フランス語のクラスは初めのころより人数が増えて、今はたぶん17人。前学期に同じクラスだったウクライナとロシアの女性も途中から入ってきた。ただ、これだけいると毎日たいてい誰か1人は休むので、全員そろうことはほとんどない。そして結局、日本人は私ひとりのまま。クラスの雰囲気が分かってきたこともあってもうそれほど寂しいとは思わないけど、やっぱりこれはかなり珍しいことのようで、人に話すと驚かれることが多い。まあ17人いて国籍は本当にばらばらだから、逆におもしろいのだけど。ただ、教室が狭くて窮屈なのはちょっと問題。
 

教室からの眺め
4階にある教室から

 
新学期が始まったときにも少し書いた通り、先生はすごくエネルギッシュで、すごくよくしゃべる。いかにもフランスの女性というかんじ。授業の材料も内容もさまざまで、例えばフリーペーパーの中から好きな記事を1つ選んでプレゼンしたり、サガンの『悲しみよ こんにちは』を読んだり、句読点のついていない文章にそれらを書き込んでいったりと、バラエティー豊か。

この先生は今期の映画の先生でもあるから、メインのクラスでも映画を題材にすることが多く、この前はゴダール『軽蔑』の予告を見てグループでシナリオを書くという課題があった。ゴダール作品のフランス語版の予告なんて初めて見たのだけど、ナレーションが独特で、ストーリーについて語るのではなく、作品に関連した単語がひたすら読まれる。「アルファロメオ」「ギリシャ彫刻」「海」「裏切り」「女優の卵」「愛撫」「復讐」といった具合で、シナリオにもこれらの単語を使わなければいけなかったから、どのグループもかなりドラマティックなストーリーになっていた。でも重要なのは内容ではなく、文法的に正しく、そして楽しくできればいいのだ。

あとは、雑談で政治や歴史の話題がよく出てくるのも特徴的。フランスは今、5月の大統領選挙に向けてかなり盛り上がっているから、各候補者に対する先生の個人的見解が聞けるのはすごく興味深い。それから、みんなで歌も歌う。これはどっちかというと、楽しいから歌おうってかんじなのだけど、フランス語で歌えるようになるのはうれしい。

始まった当初はすごく難しくてどうしようと思ったし、今も必死でついていかなければいけないのは同じなのだけど、だいぶ落ち着いて先生の話を聞けるようになってきた。そうすると、最初のころよりは多少マシで、なんとかやっていけそう。だんだんみんなのレベルも分かってきて、中には私よりしんどそうな人もいるのでちょっとほっとした。

ただ、やっぱり聞き取りは苦手。この先生はしゃべるのが速いから、ぼーっとしていると気づいたときには何か質問されていて、その内容を聞き逃していることがよくある。でも、みんなちゃんと聞き取れていて、即座に答えているのだ。そういう人はしゃべるのも達者で、例えばあまり出てこない単語の意味を質問されたとき、もし知っていてもそれをフランス語で説明するのってすごく難しいのに、それがすぐにできてしまう。なんでそんなにしゃべれるの?って不思議なんだけど、例によってそういう人でも文法問題になるとできない。ときには、初級で習うような内容でも知らなかったりする。赤ちゃんと同じように聞いて覚えたんだと思うけど、文字を見ないで勉強するのってなんだか不安。文法ができていないということは、話すときも活用や時制は間違っているんだろうけど、それはたぶん先生にしか分からないから、すごくしゃべれているように見えてしまう。最近、感じるのは、読み書きの能力と会話の能力ってきっと違うんだろうなということ。やっぱり聞くのと話すのは、半年たってもなかなか上達しない。
 

罫線

 
映画のほかにもう一つ選択授業があり、これはフランスのモードを取っていたのだけど、書き取りのクラスに変更した。モードも悪くなかったけど、ほかの生徒がみんなレベルが高かったからグループワークになるとしんどそうだったし、なんと半分ぐらいが日本人でさすがにうっとうしかった。そして何より、最初の授業のとき、私ってそこまでモードに興味があるかなって思ってしまったのだ。映画に比べると情熱がまったく違う。

パリに語学留学する人にとって、このパリ・カトリック学院(通称パリカト)と同じぐらい人気なのがソルボンヌ大学付属の語学学校なのだけど、ソルボンヌには映画やモードといった幅広い文明講座はおそらくない。だから、興味に応じてピンポイントで学べるのがパリカトの魅力とも言えるのだけど、こういった授業はどうしても先生の講義が中心なので受け身になってしまう。

選択授業には、文明講座のほかに会話や書き取り、そして前学期に取っていた発音など技術的なフランス語を学ぶクラスもあって、このうち会話の授業は、すでに受けたことのある人たちからあまりよくないと聞いていたので選択肢にはなかったのだけど、書き取りの授業は気になっていた。そして実際、替えてみて正解。一般的に、書くレベルはしゃべりより低いらしく、1つ下のA2-2のクラスを取ったのだけど、個人的には書く方が得意なこともあって授業には割と余裕でついていけるし、内容もおもしろい。先生もいい。このクラスは「パリについての書き取り」なので、毎回パリをテーマにした小説や歌を題材に、同じような構成で文章を書く。先週の授業では、午前5時のパリを歌ったシャンソンをピックアップ。ゲイバー、カフェ、エッフェル塔など、パリ各所の午前5時の情景を描いた有名な歌らしく、これと同じように自分が好きな時間のパリを描写するという課題だった。しかも韻を踏んで!普通に文章を書くだけならそれなりにできるけど、こうやって制限されると頭を使うし、発想力も問われる。日本語と同じようにフランス語でもいろいろな表現を使えるといいのだけど、残念ながらまだまだそこまでのレベルには達していない。きっと私たちが書いている文章って、小学生の作文みたいなものなんだろうなあ。
 

ペンのイラスト

 
メインの授業は同じB1-1のレベルでも先生によってだいぶ内容が違うみたいで、ほかのクラスの人に聞いてみると、ペースも遅いし少し退屈だと言っていた。私の場合はかなり大変で退屈する暇なんてないけれど、すごくいい先生だし、よかったと思っている。とはいえ、できれば宿題をたくさん出すのだけはやめてほしいのだけど・・・。

 

セーヌ川沿いの景色
セーヌ川沿いが気持ちのいい季節に

 

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