春旅②レ島へ

ラ・ロシェルという町と同じく、日本人にはあまりなじみのないレ島。私も今回、初めて知ったのだけど、検索すると日本からここに行ったという人はけっこういるようで、ラ・ロシェルよりも人気なのかなという印象。フランス人にも、ラ・ロシェルへ行くならぜひレ島も訪れるよう勧められた。そんなわけで、ほぼネットの口コミだけを頼りに、海を渡って対岸の島へ。
 

レ島地図

 
レ島へは橋が通っていて、バスでこの橋を渡る。バスの停留所が分からず1本逃してしまったのだけど、ラ・ロシェルの旧市街にあるヴェルダン広場にバスターミナルがあって、そこに案内所兼切符売り場を発見。ガイドブックがなくても行けば何とかなる。目的地へはバスに揺られて1時間ほど、思ったより遠いけれど景色がきれいなので退屈しない。
 

橋

 
地図では小さく見えても、島は実際に行ってみるとイメージよりも大きく感じる。全島にわたって小さな村が点在していて、今回行ったのは、中でも一番にぎわっているというサン・マルタン・ドゥ・レ。この村の壁に島の全景が描かれていたので、これを位置の説明に拝借。
 

レ島全景

 
小さな港にたくさんのヨットが浮かび、その港を取り囲むようにレストランやカフェが並んでいる。写真で見るとラ・ロシェルと似ているけれど、こちらの方がだいぶ小ぢんまりとしていて、のどかな雰囲気。
 

 
港から少し離れると、かわいらしい通りが続く。白い壁に淡いブルーやグリーンの窓、そしてオレンジの屋根。まさに、海のそばの小さな村というイメージそのもの。童話に出てきそうなこの明るい家並みや、道端にさり気なく佇むショップを眺めながらゆっくり歩く。散歩が楽しい場所って大好き。
 

 
でも、レ島の醍醐味が一番味わえるのはサイクリング。青い海を眺めながら村から村へと自転車で回るのが、この島の定番の楽しみ方なのだ。前の晩、レンタルする気満々だったのだけど、寒い。この地方はパリより1~2度気温が高く、天気もよかったものの、連日最高気温約15度。ラ・ロシェルで要塞を見るための観光フェリーに乗っている間はみんな備え付けの毛布をかぶっていたし、この日も風を受けて走るには寒すぎた。村自体は小さくて2時間もあれば見て回れるから、移動できないのは少し退屈だったのだけど、仕方がない。この海沿いの道を自転車で走ったら気持ちいいだろうなあ。それにしても、こっちは冬用のストールとニットの帽子をしっかり活用しているのに、フランス人は半袖に麦わら帽子でバカンスを満喫していた。
 

 
もう一つ残念だったのは食事。こういうリゾート地だと、どうしても観光客用のレストランしかないし、値段も高い。ラ・ロシェルもレ島も海が近いから、フランス人の大好きな牡蠣が名物らしく絶対食べようと思っていたのだけど、1個から食べられる屋台みたいなものはなかったので、あきらめた。私の旅は宿泊と食事にはお金を使わない(使えない)から、バカンス先でもサンドイッチばかり。でもこの村ではなんとパン屋さえ見つけられなかった。ただ、有名なアイスクリーム屋があり、おなかも空いていたので、ここは迷わず店の前へ。実はレ島は塩が名産ということで、塩キャラメルをチョイス。濃厚というよりはさっぱりとした甘さ。確かに美味しい!
 

 
今回の旅で、まあ旅行に必要なフランス語ならそれほど困らないなというのが分かった。3年ほど前にフランス語が公用語のモロッコに行ったときは、簡単なフレーズがまったく出てこないことにショックを受けたから、それに比べると少しは進歩したんだろうと思う。それにしても、旅行すると1週間の休みはあっという間。書きかけのこのブログの記事の続きとか、撮りっぱなしのままの写真の整理とか、いろいろやりたいことがあったのだけど、ほとんど何もできなかった。というのも初日、ラ・ロシェルに向かう途中にメールで宿題が送られてきて、帰ってからはモーパッサンの短編を読むのとヴェルレーヌの詩を暗記するのに追われていたのだ。フランス人のバカンスの過ごし方を少し体感して、再び難解なフランス語に立ち向かう日々が始まった・・・。

 

バスチケット
バスチケットはかわいいケース付き

 

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春旅①ラ・ロシェルへ

2月に春学期が始まって約2カ月、やっとというか、またというか、バカンスが来た。いつもは6週間ごとに休暇があるのだけど、この時期だけは少し間が空くようだ。日本人からすれば、定期的にバカンスがあるだけでもすごいと思うのだけど、確かにこの2カ月間、1日の祝日もなかったから、働いている人にとっては待ちに待った休みなんだろう。私の学校は1週間だけど、4月の初めからバカンス期間に入っているようだったから、もっと長い学校や会社もあるんだと思う。暖かくなってきたことだし、フランス人にならって旅行しなければ!本当は海外に行く予定だったのだけど、諸事情あって今回は2泊3日でフランス国内へお出かけ。こっちにいる間に絶対行っておきたかったラ・ロシェルへ。
 

ラ・ロシェル地図画像引用元:http://www.ryugaku.net/05country/france.html

 
パリからTGVで約3時間、フランス西部にあるラ・ロシェルは、大西洋岸で最も美しいといわれフランス人のバカンス先として人気の港町。青い海があるだけで十分魅力的なのだけど、そこに浮かぶ船やヨット、おとぎ話に出てきそうな塔や大時計門、石造りのアーケードにパティスリーやブティックが立ち並ぶ旧市街なんかを見ていると、確かにフランス人が好きそうだなという気がする。休暇に入ったこの時期、海の近くでのんびりしようという人たちが国内各地から一斉に押し寄せてきていて、町を歩いていても耳に入ってくるのはフランス語ばかり。眺めのいい旧港近くのレストランやカフェのテラス席がにぎわう光景は、まさにフランス。日本人は短期間のフランス旅行であまりこういうところに来ないだろうから、日本のガイドブックでこの町はほとんど紹介されていないし、実際、日本人には一人も出会わなかった(ちなみに中国人のグループとは何度か遭遇)。
 

 
今回なぜこのラ・ロシェルを選んだのかというと、大好きな映画『冒険者たち』に出てくるから。映画、それもフランス映画はけっこう見てきたけれど、この作品は学生時代に見たときからいまだに個人的ランキング1位。清々しく、温かく、切なく、鮮やかできらめくような大人の冒険物語。何度見ても、いいのだ。だから、冒険者たちの一人であるレティシアの夢だったこの町にはいつか行きたいと思い続けていて、やっとそれがかなった。
 

冒険者たち画像引用元:http://asa10.eiga.com/2013/cinema/317.html

 
中でも心に残っているのが、海に浮かぶ要塞フォール・ボワヤール。19世紀、イギリス艦隊から町を守るために築かれたものの、その後は監獄などとして使われながら次第に廃墟となり、そのまま放置されかけたところをテレビ番組に救われるという、数奇な運命をたどってきた孤高の建造物。こんな要塞を見たいなんていう人はそうそういないだろうと思っていたら、そのテレビ番組というのがけっこう人気らしく(宝探しゲームのようなものらしい)、今や有名な観光スポットになっていて港から観光船が出ていた。ただ、現在は番組制作会社が借り上げているので、一般の人は上陸できない。こっちのドラマを見ていてもよくここが舞台になっているから、割と知られた存在なんだろうけど、リノ・ヴァンチュラとアラン・ドロンの爽やかな友情が絶たれた、あの胸を締めつけられるようなラストシーンを思い浮かべる人は今では少ないのかもしれない。実際に目にすると映画の中のイメージとなかなか結びつかなかったのだけど、かなり遠くからでもはっきりと認めることができるその姿は、威風堂々とした外観とは逆に海の中で見捨てられたように悲しく寂しげな印象だった。
 

左上『冒険者たち』より
画像引用元:http://yorimichim.exblog.jp/8612984/

 
さて、陸に戻り旧港を挟んで旧市街と反対方向に歩いていくと、ヨーロッパ最大規模のヨットハーバーが。確かに、すごい数のヨット!このたくさんのヨットが並ぶ絵のような景色を見ながら海沿いを散歩するのは、今回の旅で一番楽しかった。
 

 
時間の関係もあり行かなかったのだけど、近くには水族館があり、そこも展示がユニークで面白いらしい。リゾート地とはいえ、なかなかみどころが多くて3日いてもぜんぜん飽きなかった。ただ、1日はラ・ロシェルから陸続きのレ島へ行ってきたので、それは次回に。

 

ラ・ロシェル駅
ラ・ロシェルの駅にも趣が

大統領選挙目前

5年ごとに行われるフランス大統領選挙の投票がいよいよ迫ってきた。最近ヨーロッパで相次いでいるテロや、深刻なシリア情勢、北朝鮮のミサイル公開など重要なニュースが相次ぐ中、それでもメディアが一番時間を割くのは選挙関連の話題。政見放送も始まったし、他のニュースはほとんどやっていないように見える。個人的にも大いに関心のあるこの選挙について、パリで発行されている日本語新聞OVNI(オヴニー)が4月1日号で特集を組んでいたので、これを部屋の壁に貼って仕組みや各候補の主張などを確認してみた。

 オブニー紙面

 
投票は2回行われることになっていて、第1回が来週4月23日(日)、第2回が5月7日(日)。1回目で過半数の得票を獲得できればその候補が大統領に選出されるけれど、誰も過半数を得られなかった場合、2回目で上位2人の決選投票となる。これまで1回目で決着したことは一度もないらしく、世論調査によると今回も2回目の投票まで当選者が決まらない可能性が大きいとのこと。候補者は11人で、そのうち有力と言われているのは以下5人(アルファベット順)

  

ブノワ・アモン(49歳)中道左派・社会党
オランド政権下で教育相を務めるが、財政緊縮路線などに反対して辞任。低賃金で働く労働者などへの所得補償、原発の削減・廃止などを掲げ、その理由として“FUKUSHIMA”の言葉も。見た目の印象通り、話し方も主張もやわらかい。
[個人的イメージ]鳥越俊太郎

ブノワ・アモン

  

エマニュエル・マクロン(39歳)中道・無所属
大統領府副官房長、経済相を歴任。去年、“左でも右でもない”政治運動 En marche!(進め!)を立ち上げ、経済相を辞任。エリートコースを歩んできたイケメンで話しぶりも堂々としているけれど、大統領には若すぎる印象。同い年というのが笑える。奥さんは20歳以上年上!
[個人的イメージ]細野豪志

エマニュエル・マクロン

  

フランソワ・フィヨン(63歳)中道右派統一候補・共和党
教育相、労働相、首相と重要閣僚を務める。サルコジ前大統領などを押さえて候補者に選ばれたものの、妻子の架空雇用疑惑が浮上し人気急落。年齢的にも経験から考えても一番安定してそうだけど、一時期は連日この疑惑が報道されていて、学校の先生も「なんて不誠実な男なの!」と毎日のように叫んでいた。
[個人的イメージ]舛添要一

フランソワ・フィヨン

  

ジャン=リュック・メランション(65歳)左派党(急進左派)
2回目の立候補。高校教師、記者を経て政治家に。現行のEU条約を変更しない場合のEU離脱や、新しい憲法の下での第6共和制移行などを訴える。毒舌を交えた話術に定評。
[個人的イメージ]志位和夫

メランション

  

マリーヌ・ルペン(48歳)極右・国民戦線
2011年、父ルペン氏の後任として党首に選出。EU離脱を問う国民投票の実施、移民受け入れ制限、外国人雇用者への追加課税などを掲げる。“フランスのトランプ”とも言われる過激な主張は日本でもすでにおなじみ。
[個人的イメージ]高市早苗

マリーヌ・ルペン

 
 
ちなみに、各候補の立ち位置を図にするとこんなかんじ。

 各候補の立場

  

ここに至るまでにも各陣営の候補を決める予備選挙があり、その度にテレビが大騒ぎしていたからまったく構図が見えていなかったのだけど、ようやく全体像が把握できた。今回は、絶対的な有力候補のいない混戦とはいえ、この5人の中でも決選投票に残ると予想されているのがエマニュエル・マクロン氏とマリーヌ・ルペン氏。マクロンさんになったらちょっとうれしいけど、見た目を気にしそうなタイプだし経験不足が心配。かといってルペン氏はあり得ない。この人が大統領になったら留学生に対する待遇も厳しくなりそうだから、それは困る。

ただ、もちろん選挙というのは、実施されるまでどういう結果になるか分からない。去年はイギリスのEU離脱、トランプ大統領誕生と予想外の出来事が相次いで、世界的にナショナリズムが高まりつつあるのは懸念するところ。個人的にはイギリスの意思決定はすごく残念なので、これ以上ヨーロッパの結束が乱れることのないよう願っているけれど、それは外国人としての感じ方だろうし、もちろん投票権がないので見守るしかない。それにしても、国のトップを自分たちで選べるというのはやっぱりうらやましい。日本もこうなれば、少なくとも今よりは政治に関心を持つ人が増えるんじゃないかと思うのだけど・・・。投票できるのは18歳以上、フランス国民がどんな選択をするのか、3週間後にはその結果が出ている。
 

抜粋、参考、画像引用元:
オブニー「フランス大統領選2017 観戦ガイド」
NHK NEWS WEB「フランス大統領選挙2017」

  

オランド大統領
影の薄いオランド現大統領もまだまだ人気!?

 

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