2月に春学期が始まって約2カ月、やっとというか、またというか、バカンスが来た。いつもは6週間ごとに休暇があるのだけど、この時期だけは少し間が空くようだ。日本人からすれば、定期的にバカンスがあるだけでもすごいと思うのだけど、確かにこの2カ月間、1日の祝日もなかったから、働いている人にとっては待ちに待った休みなんだろう。私の学校は1週間だけど、4月の初めからバカンス期間に入っているようだったから、もっと長い学校や会社もあるんだと思う。暖かくなってきたことだし、フランス人にならって旅行しなければ!本当は海外に行く予定だったのだけど、諸事情あって今回は2泊3日でフランス国内へお出かけ。こっちにいる間に絶対行っておきたかったラ・ロシェルへ。
画像引用元:http://www.ryugaku.net/05country/france.html
パリからTGVで約3時間、フランス西部にあるラ・ロシェルは、大西洋岸で最も美しいといわれフランス人のバカンス先として人気の港町。青い海があるだけで十分魅力的なのだけど、そこに浮かぶ船やヨット、おとぎ話に出てきそうな塔や大時計門、石造りのアーケードにパティスリーやブティックが立ち並ぶ旧市街なんかを見ていると、確かにフランス人が好きそうだなという気がする。休暇に入ったこの時期、海の近くでのんびりしようという人たちが国内各地から一斉に押し寄せてきていて、町を歩いていても耳に入ってくるのはフランス語ばかり。眺めのいい旧港近くのレストランやカフェのテラス席がにぎわう光景は、まさにフランス。日本人は短期間のフランス旅行であまりこういうところに来ないだろうから、日本のガイドブックでこの町はほとんど紹介されていないし、実際、日本人には一人も出会わなかった(ちなみに中国人のグループとは何度か遭遇)。
今回なぜこのラ・ロシェルを選んだのかというと、大好きな映画『冒険者たち』に出てくるから。映画、それもフランス映画はけっこう見てきたけれど、この作品は学生時代に見たときからいまだに個人的ランキング1位。清々しく、温かく、切なく、鮮やかできらめくような大人の冒険物語。何度見ても、いいのだ。だから、冒険者たちの一人であるレティシアの夢だったこの町にはいつか行きたいと思い続けていて、やっとそれがかなった。
画像引用元:http://asa10.eiga.com/2013/cinema/317.html
中でも心に残っているのが、海に浮かぶ要塞フォール・ボワヤール。19世紀、イギリス艦隊から町を守るために築かれたものの、その後は監獄などとして使われながら次第に廃墟となり、そのまま放置されかけたところをテレビ番組に救われるという、数奇な運命をたどってきた孤高の建造物。こんな要塞を見たいなんていう人はそうそういないだろうと思っていたら、そのテレビ番組というのがけっこう人気らしく(宝探しゲームのようなものらしい)、今や有名な観光スポットになっていて港から観光船が出ていた。ただ、現在は番組制作会社が借り上げているので、一般の人は上陸できない。こっちのドラマを見ていてもよくここが舞台になっているから、割と知られた存在なんだろうけど、リノ・ヴァンチュラとアラン・ドロンの爽やかな友情が絶たれた、あの胸を締めつけられるようなラストシーンを思い浮かべる人は今では少ないのかもしれない。実際に目にすると映画の中のイメージとなかなか結びつかなかったのだけど、かなり遠くからでもはっきりと認めることができるその姿は、威風堂々とした外観とは逆に海の中で見捨てられたように悲しく寂しげな印象だった。
左上『冒険者たち』より
画像引用元:http://yorimichim.exblog.jp/8612984/
さて、陸に戻り旧港を挟んで旧市街と反対方向に歩いていくと、ヨーロッパ最大規模のヨットハーバーが。確かに、すごい数のヨット!このたくさんのヨットが並ぶ絵のような景色を見ながら海沿いを散歩するのは、今回の旅で一番楽しかった。
時間の関係もあり行かなかったのだけど、近くには水族館があり、そこも展示がユニークで面白いらしい。リゾート地とはいえ、なかなかみどころが多くて3日いてもぜんぜん飽きなかった。ただ、1日はラ・ロシェルから陸続きのレ島へ行ってきたので、それは次回に。