スペインより⑦

やってしまった。数々あるこれまでの旅の失敗の中でも、これはけっこう大きいかも。本当に、なんでこんなに適当なんだろうか。自分がまったく信用できない。

今日はバルセロナから飛行機で次の街グラナダへ移動。フライトは午後なので、朝もゆっくり。同じ部屋にいた人たちは全員同じ日にチェックインし、みんな今日、同時にチェックアウト。そのうち2人は朝5時ごろ出ていった。ドミトリーだと必ずこういうことがあるのでゆっくり寝られないけど、まあ値段を考えればしょうがない。

先週、パリから到着したときと同じバルセロナ=エル・プラット空港へ向かう。最初は地下鉄が便利だったから地下鉄で来たのだけど、今朝までいたホステルの近くにあるサンツ駅からは、国鉄renfe(レンフェ)近郊線というのが出ていて、これでも空港まで行ける。しかも地下鉄よりちょっと安い。地下鉄は毎日乗ったし、最後にこのrenfe近郊線に乗ってみよう、と思ったのが間違いのもと。確かに通過駅もあるし、路線もいろいろあってややこしそうな気はしたので、きのうちゃんと見に行って、確認しといたのに。なんとなく予感していた通り、こうなってしまった。

切符を買い、ホームの番号を確かめたところまではOK。大きな荷物を抱えた人がたくさんいたから、みんな空港に向かうのだろうと安心していた。ただ、表示がすごく不親切。ホームに降りてしまうと表示板は全部スペイン語だし、何時にどこ行きの列車が来るのかぜんぜんわからない。案内放送もなし。今考えれば、切符を買ったときに駅の表示板できちんと時間を確認しておけばよかったのだけど、けっこう待ったこともあって、やっと来た列車に迷いながらも乗り込んでしまった。でも、乗る前に見たモニターには、空港って書いてあったんだけどなあ。あれは何だったんだろうか。

 renfe近郊線

 
人がいっぱいなので、座席には座らずデッキへ。気づけば、列車はけっこうなスピードでまったく止まらずどんどん走っていく。ちょっと不安に思いながら、それでもあまり深く考えず地球の歩き方を読んでいた。そして30分ぐらいたったころ、車掌さんが検札に。おそるおそる切符を出すと、案の定「どこ行くの?」と聞かれる。当然「空港」と答えたのだけど、車掌さんはゆっくり首を振って「空港へは行かないよ。次はタラゴーナ。フライトは何時?」「13時20分です」するとまた首を振って、タラゴーナに着く時間、そしてタラゴーナからの列車がバルセロナに着く時間を教えてくれた。確かに、ぜんぜん間に合わない。車掌さんも、残念だね、という風にかなり同情してくれたのだけど、無理なものは無理。なんとなく、こういうやり取りになるような気がしていたから、デッキにいたのだ。周りの人に聞かれなくてよかった。急いで地球の歩き方の地図を確認すると、確かにバルセロナの近くにタラゴーナという街がある。ビーチがあるようで、窓の外には海も見えている。

 地図

 
タラゴーナに到着。バルセロナ出発からすでに1時間。どうするか、必死で考える。こういうとき、ネットが使えないのはつらい。幸い、タラゴーナの駅ですぐにフリーwi-fiがつながったので、グラナダ行きのフライトを確認。まだ今日の便がいくつかあり、しかも思っていたより安い。列車という手もあるにはあるのだけど、バルセロナからグラナダまでは早くても8時間弱。こういうことがあるから事前に予定は決めておきたくないのだけど、残念なことに、もう明日以降の予約を全部してきてしまっている。なんとしてでも、今日中にグラナダへ行かなければ。ただ、このときもやっぱり公共のwi-fi環境だったから、クレジットカード情報を入力して航空券を買うわけにはいかない。でも突然、航空券って空港でも買えるのでは?と思いつき、とりあえず空港まで行ってみることにして、タラゴーナ到着から10分後のバルセロナ行きに飛び乗る。こういうときの自分の決断力と行動力はすごいんだけどなあ。

 列車の中から見える海

 
また1時間、むだに列車の旅をしてバルセロナに逆戻り。やられっぱなしは悔しいから、そのままrenfe近郊線で空港までリベンジしようかと思ったのだけど、この路線は30分に1本しかなく、ちょうど着いたと同時に出るところだったので、30分待つよりは地下鉄でいこうと判断。まったく迷うことなく40分ほどかかって無事、空港に到着。最初からこうしとけばよかったんだよなー。

次のフライトは17時5分で、空港に着いたのが15時前。時間的には余裕だけど、本当にここで買えるのかどうか分からないし、航空券を手に入れるまでは不安だから、本来なら13時20分の便に乗るはずだったスペインの格安航空会社、ブエリング航空のカウンターを必死で探す。すると、チェックインカウンターの一番端の方に、あった!チケット売り場。しかもけっこうなスペースだし。

 チケットカウンター

 
このブエリング航空は毎日スペイン各地にたくさんの便を飛ばしているようで、グラナダ行きも今日あと3便残っていた。無事、17時5分発のチケットを購入。ただ直前だから、タラゴーナ駅でネットで見たときよりもだいぶ高かった……。安全なネット環境があれば、そのときの値段で買えたのになあ。ネットって便利だけど、使えないと本当に不利だ。結局、だいぶ前にかなり安く手に入れたチケットの倍以上の額を払って、もう1枚買うはめになってしまった。それにしても、空港でチケットを買う人って本当にいるのだ。よく映画なんかでは見るけど、実際、航空券がないのに荷物を用意して空港まで行くって、自分ではなかなかなさそうな状況。

とりあえずほっとしたところで、やっと今日最初の食事。この時点で15時半近く。本当は、13時20分のフライト前にゆっくり空港でブランチしようと思っていたのだ。でも、空港の店で食事するのって生まれて初めてで、高い上にまずいということが分かった。これからはやめよう。

 ブランチ

 
搭乗時間まで、迷っていたプリペイドsimカードを買おうと店を探す。かなり歩き回ったけど、それらしいものはみつからなかった。調べたら空港にあるって書いてあったんだけど。バルセロナであきらめたグエル公園といい、ネットがないことの弊害が大きくなってきたから、やっぱりsimカードがあった方が便利だ。

さて、フライトは順調で、予定より早く1時間15分ほどでグラナダに到着。ホテルから街までバスで約30分、そして街からホステルまでもスムーズだったのだけど、やっと部屋に落ち着いたのは20時半。予定では、夕方からちょっと街歩きするつもりだったのになあ。このあとは、けっこうぎりぎりのスケジュールを組んでしまったから、失敗は許されない。きっちり下調べをして、迷うことのないようにしないと。

そんなわけで今日は一日、乗り物で移動ばかりしていた。それにしても悔しい!せっかくいろいろ安く手配したのに、台無しだ。さすがに、予約した乗り物に遅れたことは今回が初めてだけど、まあもう、これはいい勉強になったと思って前向きにとらえるしかない。お金は働けば何とかなるけど、またここに来られる機会はあるかどうか分からない。何しろ明日はいよいよアルハンブラ宮殿。この予約があったから、今日のグラナダ入りは絶対だったのだ。時間に遅れないよう、慎重に行動しよう。

 

グラナダ
グラナダは21時でも35度

スペインより⑥

バルセロナ最終日。10時になるまで6人部屋の誰一人起きず、目を覚ましてびっくり。といっても、やっぱり相部屋だとうるさいしよく寝られなくて、夜中に何度も目を覚ますから、このときも寝ているような起きているような状態だったのだけど。今日も気持ちのいい快晴。外に出た途端、皮膚がじりじり焼かれるような暑さ。肩の日焼けの熱がずっと収まらないので、2軒の薬局で湿布がないか聞いてみたのだけど、どうも日本のような湿布というもの自体があまり存在しないよう……。もう少しよくなるまで半袖で我慢しよう。

今日はどこに行こうと宿を出てから考えて、まだ行っていない新市街を見てみることに決定。4日目のグエル公園に入れなかったのが心残りだから、きのう日本にいる妹にスカイプを通してクレジットカード情報を伝え、家の安全なネット環境でチケットを取ってもらおうとしたのだけど、なぜか支払いが拒否されてしまった。実はスペイン国鉄のチケットをネットで予約するときに、スペイン以外で発行されたカードだと通らないというのが有名なのだけど、これも同じ現象かも……。世界の観光地とは思えないこの不親切さ。でも、この時点でもう17時半以降の予約しか取れなかったから、直接行っても何時に入れるか分からないし、潔くあきらめることに。残念。

新市街には大学地区があり、その名の通りZona Universitària駅で降りると、確かに大通りの両側にアカデミックな建物が立ち並ぶ。学生の姿もいっぱい。パリ14区のCité Universitaire駅の近くもまさにこんな雰囲気。若々しくていいなあ。ただ、いくつかの大学がここに集中しているのか、1つの大学の各学部なのかはよく分からないけど。
 

 
ちょうどお昼どきだったから、学校前にたくさんある安い惣菜店やパン屋に学生たちがあふれていた。こういう光景はどこの国でも変わらない。

大学地区の隣は団地のようになっていて、これもたくさんのマンションが連なっている。旧市街にあったような独特のバルコニーの付いた建物ではなく、日本でもよく見かけるモダンなマンション。色使いがスタイリッシュ。
 

 
すごく閑静で住みやすそう。これこれ、こういう普通の住宅街、現地の人が普段通り生活しているところを歩くのって、なんか面白い。観光客がぜんぜんおらず、本来の雰囲気を味わえるからだろうけど、きっとそういうのって無意識に感じ取っているものなんだと思う。

激しく道に迷いながらも、近くにあるグエル別邸にたどり着く。実業家グエル氏の週末の邸宅で、ガウディが増改築を手がけたとのこと。このバルセロナでは、グエルとガウディの名前が本当によく出てくる。今は大学建築部の講座本部に使われているようだけど、見学もできるみたいで、何人か入っていくのを見かけた。

 グエル別邸

 
だいぶうろうろしたけど、ほかにみどころは特になく、あとは旧市街やランブラス通りに戻ってぶらぶら。最後にカタルーニャ音楽堂へ行ってみる。設計者は、ガウディ作カサ・バトリョの隣にあったカサ・アマトリェールを手がけたリュイス・ドメネク・イ・モンタネール。彫刻やカラフルな模様が美しい。こういうユニークなデザインや石造りのざらざらした質感がいかにもスペイン。内部見学はガイドツアーに参加しないとできないということだったから、なんだか面倒でやめてしまった。ちょうど30分後にフランス語のツアーがあったのでそれでもいいかなと思ったのだけど、きっとスペイン人のフランス語だし。
 

 
さて、こんなところでバルセロナは終了。大体6日もいれば、なんとなくどこに何があるかぐらいは分かるようになるものなのに、毎日違うところに行っていたせいもあってぜんぜんダメだった。たぶんバルセロナは今回の旅行で一番大きな街のはず。初めに大変なところが終わったので、こんな言い方も変だけどちょっとほっとしている。でも、大きい大きいと書いていたバルセロナ、今調べてみたら、パリよりほんの少し小さいそう。パリの方がよく知っているからということを除いて考えても、やっぱりバルセロナの方が大きく感じるなあ。モダンで、開放的で、ダイナミックな印象。ただ、みどころは多いけどやっぱり歩いていて楽しい街ではなかったのが残念。もちろん、あくまでも個人的な感想だけど。

明日は次の街へ移動。予習しておかなければ……。

 

トラム
トラムはたぶんパリと同じ

スペインより⑤

バルセロナ5日目。太陽の国と言われるだけあって、引き続きいい天気。まだ30度まではいってないと思うけど、やっぱり外を歩いているとかなりの暑さ。まあ日本のような湿気はないから、不快な暑さではないのだけど。いったんノースリーブで出たものの、きのうの日焼けがまだ熱を持っていたので、結局いつもデイパックに入れている長袖シャツの袖をロールアップしてずっと着ていた。でも短パンに変えるとかなり涼しい。

今日はモンジュイックの丘へ。まずは地下鉄のエスパーニャ駅を出ると、広大なスペイン広場が。どーんと大きないくつかの建物が周りを取り囲んでいる。

 スペイン広場

 
ここから、見本市会場が並ぶ大通りを進みカタルーニャ美術館に向かって歩く。この華麗な建物をずっと正面に見ながら。なかなか壮観。元々、1929年の万博の際に政府館として建てられたものだそう。展示されている品も興味深い。

 カタルーニャ美術館

 
この辺りで、バルセロナの小学生たちが街頭インタビューをやっていて、私も声を掛けられた。学校の宿題ということで、英語でいくつか質問され、しかもiPadで録画まで。今どきだなあ。一応、それなりに答えられたけど、ちょっと聞き取れないところもあり、見当違いのこと言ってしまったかも。それに、今はやっぱりフランス語の方が先に出てくるから、英語でどう言うんやっけ?と考えても出てこなくて、結局YESかNOしか答えられなかったり。授業であんなの流されたら恥ずかしい。というか、使えないと判断されてボツになるかもしれないけど。それにしてもバルセロナの小学生たち、もう完全に英語を使いこなせている。さすが。

さて、美術館に近づいたところでいったん右へ曲がり、スペイン村というテーマパークの前まで行ってみた。スペイン各地の町並みが再現されているそうで、入ろうかどうか迷った末に、ここはやめた。こんなところでわざわざお金を払ってテーマパークに入ることもないし、スペイン各地はこれから行くし。

 
スペイン村

 
美術館の方へ戻り、今度は左へ進む。ここも散策コースのようになっていて、途中、気持ちのいい公園を通り抜ける。

 公園

 
公園から出ると、ここにあるのはミロ美術館。あんまりよく知らないけど、たぶん私好みの画家ではないのでまあいいか。

 ミロ美術館

 
ようやく、モンジュイックの丘に上るためのゴンドラ乗り場に到着。ゴンドラとかロープウェイって楽しい。上に到着するまで10分ほど。景色が最高。
 

 
着いた先のモンジュイックの丘は、1992年バルセロナ・オリンピックのメイン会場になったそう。今はそんな名残はないけれど。ゴンドラを降りるとすぐにモンジュイック城があり、ここにはもちろん入場。

 モンジュイック城1

 
モンジュイック城は18世紀後半に築かれた要塞とのこと。さすがに見晴らしがいい。ここから見える青い海は地中海。
 

 
丘の上だからなのか海沿いだからなのか、けっこう風があって気持ちよかった。日陰で休んだり、城の周りを歩いてみたり、今日もゆっくり過ごす。
 

 
こうやって見下ろしてみても、バルセロナには大きな建物が多くて、すごく大きな街だなという印象。そしてダイナミックなみどころがあちこちにある。

5日間過ごしてみて気づいたことは、まずパリより少し物価が安い。サンドイッチを買ってもいつもより少ない金額で済むので、なんか得した気分。それから、パリに比べると観光地によってはあまり食べ物の売店がない。だからなのか、外で物を食べている人もほとんどいない。パリはベンチではもちろん、歩きながら、そしてメトロの中でさえみんなよくお菓子やバゲットを食べているけど、バルセロナは公園のベンチでも食事しているような人は見かけないから、なんかちょっとためらってしまう。まあ今日、気にせずタコスを食べたけど。それとこれ、地下鉄にクーラーがついている!日本じゃ当たり前だけど、パリはおそらく真夏でもメトロもバスも空調してないから(たまに窓が開いている)、もう今の時期から暑くて気分が悪くなるほど。日本の感覚で、電車に乗る前には無意識に、涼しいところに入れるって思ってしまうのだけど、乗った途端にパリだったことを思い出してがっかりする。だから、日本と同じようにクーラーがきいているっていうのは快適。地下鉄自体、新しいようで、パリのものとはぜんぜん違うし。

バルセロナで行きたいところはもう一通り行ってしまって、街の雰囲気も分かってきたのだけど、明日もう一日ある。さて、どうしようか……。

 

フニクラ
帰りはこのフニクラで地下鉄の駅まで