リスボンより①

マドリードから寝台夜行で約10時間半。ぐっすり寝て、起きるともうすっかり朝。40分前に車掌さんが起こしに来てくれた。ポルトガルはフランスやスペインと時差があり、1時間遅い。睡眠時間が1時間長くなるのか短くなるのかだいぶ考えた末、長く寝られることが分かって得した気分。寝台列車っていいなあ。こういう景色、アガサ・クリスティーの小説みたい。

 トレンホテル

 
時間通りにリスボンのオリエンテ駅に到着。すごくモダンで大きな駅。そして外に出た途端、寒い。まあ朝だからということもあるんだろうけど、それでも空気がスペインとは違う。マドリードよりも南にあるのに、こんなに気温が下がるとは。
 

 
ポルトガルって日本人にはおそらくフランスやスペイン、イタリアなんかよりなじみがなくて、ポルトガルだけ目指して出かける人も少ないんじゃないかと思う。今回の旅行もスペインがメインで、まあせっかくだからリスボンにも寄って帰ろうぐらいのかんじだったのだけど、調べているうちにここはきっと自分が好きな街、それもスペインより気に入るんじゃないかと思うようになった。だから、グラナダ以降の日程を少し窮屈にしてでも、リスボンに日数を割いたのだ。

ところで、悩んだのはガイドブック。スペインと2冊持っていくのは避けたいけど、観光情報だけならネットでも調べられるものの、交通機関とか駅からのアクセスとか、細かいことまで全部まとめて載っているのはやっぱりガイドブックしかない。そういう意味では、どれだけネットが発達しても、情報を整理する編集という職業は必要だ。試しにパリのジュンク堂に行ってみたけれど、たまたまポルトガルのガイドブックが品切れ。そこで、初めて地球の歩き方の電子書籍を購入してみた。これはなかなか便利。

 電子書籍

 
本がそのままPDFデータになっただけで、書き込みやブックマークなんかはできないのだけど、かさばらないのはありがたい。それにパリで本を買うと高いから、どこで買っても同じ値段の電子書籍版は経済的にも助かる。今回のスペインのように、ガイドブックを見て行きたいところをピックアップする場合は絶対に紙の方が見やすいし使いやすいけれど、1都市だけだからむしろこの方がいい。ただ、いざというときに紙の本がないのは不安なので、本当は紙とデータの両方あるのが理想だと思うけど。世界一周する人はどうしているんだろう。

着いたのが朝早かったので、少し駅で休憩してブログを書いてから宿へ。今さらだけど、駅にケータイショップがあったのでプリペイドSIMカードを購入した。2週間分だからちょっともったいないけど、やっぱりあると便利だ。今日からさっそく、街歩きに活用。これで普段ほど迷わずに済む。スペインでもこうしていたら、数々の失敗はなかったかもしれない・・・。

リスボンの地下鉄はカードを購入し、これにチャージしたり一定料金を払って乗り放題にしたりできる仕組み。バスや市電にも使える。カードといっても紙だけど、これを改札にかざすとちゃんとピッと反応する。

 地下鉄カード

 
地下鉄の駅は近代的だけど、列車自体はレトロ。でもクーラーはきいている。こうやってほかの国の地下鉄を見てみると、パリのメトロってヨーロッパの中でもかなり古いし汚いかも。

 地下鉄

リスボンの下調べをちゃんとしていなかったので、とりあえずぶらぶら旧市街方面へ。大通りを歩いていると、カラフルでかわいい建物がいっぱい。少し道を外れると、静かで雰囲気もいいし。やっぱり予想通り、リスボン好きだなあ。楽しさがスペインとぜんぜん違うのだ。足が弾んで、どんどん歩きたくなる。
 

 
さっそく市電に乗ってみよう。これぞ、リスボンの象徴。昔ながらの石畳の街並みに、ゆっくりと車両が走る情緒たっぷりの風景。
 

 
ただ、乗り心地はあまりよくない。というのも、乗ったのは観光客に人気の28番路線で、確かに観光客だらけだったのだ。座れないし、暑いし、景色もぜんぜん見えない。きっと外から見た方がいいんだな。

 市電の中

 
おまけに、市電といえども線路があるのは車も通る普通の道路だから、渋滞していると止まる。

 通り

 
ただ、リスボンは坂が多いから、上るときはやっぱり乗った方が楽だ。観光客向けのバイクタクシーみたいなのもたくさん走っている。

 バイクタクシー

 
上の方まで行ったところでグーグルマップを頼りに降車。どこの駅なのかまったく分からないのだけど、観光スポットがあるところは運転士さんが駅名とそのスポット名を叫んでくれるので、みんな慌てて降りたりする。こういうところが日本とは違う。

近くに展望台があるというので行ってみると、わー素敵。なんてかわいらしい家並み。サン・ジョルジェ城とテージョ川も見える。きれいな街だなあ。
 

 
帰りは下りなので市電の線路に沿って歩いていく。この辺りは通りも雰囲気があって本当に楽しい。また明日からじっくり散策してみよう。
 

 
そしてここの宿は今までで一番よかった。口コミ評価がかなり高かったので選んだのだけど、きれいなのはもちろん、使い勝手がよくて、こういうところに泊まる人の気持ちをちゃんと考えてくれているなという気がする。
 

 
しかも朝食付き!バルセロナより安いのに、これは助かる。水も自由に飲めるから、もう必死でスーパーを探さなくても大丈夫だ。リスボンは最後の街だから、快適なホステルでよかった。

 

ホステルからの眺め
ホステルのリビングからはこんな景色が

スペインより⑮

前回からのつづき。無事にチェックアウト後、しばらく宿のフリースペースにいてこの終わったばかりの初体験をさっそくブログに書き始めるものの、掃除のため追い出されたので、せっかくシャワーを浴びた肌に日焼け止めを塗って今日もマドリードの街へ。出発は夜だから、丸一日ある。寝てないのでかなりしんどいけど、楽しまなければ。

マドリードには美術館がたくさんあり、美術館めぐりが主要な楽しみ方の一つ。でも、今回はいい。パリにもびっくりするぐらいたくさんの美術館があるのにぜんぜん行けていないし、見ておきたいものもなさそうだから。こういう人にとってマドリードはバルセロナに比べると観光スポットが少ないのだけど、それでも街歩きは断然こちらの方が楽しい。

向かったのはマドリード最大の公園カサ・デ・カンポのテレフェリコ(ロープウェイ)乗り場。高いところが好きなので、上がれるところには絶対に上がってしまう。このロープウェイはよかった。市内とそれを見渡すような美しい王宮をずっと眺めながら空中散歩。展望台に特に何もなかったのが残念だったけど。
 

 
またロープウェイで戻った後は少し街歩き。というか、本当は暑いし、疲れていたからメトロに乗るはずが、駅までなかなかたどり着かないので結局歩いたのだ。でもこの川沿いや、橋の向こうに見える王宮、周辺にある住宅街はすごくいい雰囲気。閑静で、ある程度にぎわいもあって、住みやすそうな地域だ。川辺の景色は京都の鴨川沿いに少し似ている。
 

 
やっと地下鉄に乗れて、やって来たのはソフィア王妃芸術センター。ピカソやダリなどの20世紀現代アートが展示されているそうで『ゲルニカ』だけでも見ておこうかなと思ったのだけど、もうこの時点で疲れ切っていたのでやめた。暑すぎる。

 ソフィア王妃芸術センター

 
近くには大きなプエルタ・デ・アトーチャ駅がある。セビーリャから高速列車アベに乗ってマドリードに来たとき、この駅に着いたはずなのだけど、あのときはすぐに地下鉄に乗ってしまったから中をぜんぜん見ていなかった。熱帯植物が置かれた待合室が特徴的。
 

 
ここからプラド通りや王立植物園沿いを歩きながらプラド美術館を目指す。緑があると気持ちがいい。暑いけど。パリのセーヌ川沿いにあるような古本市も出ていて、やっぱりこの辺は文化的な薫りがする。風格のある建物が並ぶ通りも落ち着いた雰囲気。
 

 
着いた、プラド美術館。

 プラド美術館1

 
パリのルーブル美術館、ロンドンの大英博物館ぐらいマドリードの定番観光地だと思うけど、せっかく来たにもかかわらずここもパス。好きな絵もあるとは思うのだけど、絶対に見ておきたいものはなさそうだし、入るなら丸一日かけないともったいない。でもこの場所はすごくいい。大通り沿いだけど、美術館らしい非日常的な静けさに包まれている。時代が変わっても、この建物はずっと変わらずここにあって多くの作品を守ってきた時間の積み重なりが感じられる。
 

プラド美術館2
左側に見える建物がプラド美術館

 
プラド美術館のすぐ先にあるシベーレス宮殿。かつて中央郵便局として使われていたそうで、現在は市役所本部になっているとのこと。普段は無料で見られる常設展示があるらしいのだけど、残念ながら工事中。ヨーロッパって本当にこれが多い。

 シベーレス宮殿

 
宮殿前の噴水は、レアル・マドリードが優勝したときにファンが集まる場所として有名だそう。

 宮殿前の噴水

 
さて、もういい時間だ。宿に戻ってひと息つき、また出発。やって来たのはチャマルティン駅。夕方に見たプエルタ・デ・アトーチャ駅よりも小さい印象。

 チャマルティン駅

 
これから乗るのは寝台夜行トレンホテル。ちゃんとして寝台車って初めてだ。向かう先は、ポルトガルの首都リスボン。

 リスボン位置

 
この寝台車にもいくつかクラスがあって、一番いいのは食堂車での夕食と部屋ごとのシャワー付き。安いのはドミトリーで、同性4人部屋。ドミトリーにしようか迷ったけど、きっとすごく狭いし、相部屋になるだろうから面倒だし、思い切って夕食なしの個室Cama Preferenteを取った。個室といっても本当は2人部屋なのだけど、1人で予約すると1人で使え、知らない人と2人になることはないそう。この辺りはものすごく検索して調べてから予約。ただ、移動とホテルの一石二鳥とはいえ、ドミトリーで1泊してLCCで移動するのと結局同じぐらいの値段なのだけど。
 

 
国境を超えるものの、ここでもパスポートのチェックはなし。部屋は狭いけど、1人なら快適。コンセントもある。ただ、シャワー付きの部屋だと思っていたのに、それは違ったみたい。この辺はきっと列車によって異なるので、実際に乗ってみないと分からないのかも。でも、物置き台のようなところに水道のマークがあって、開けてみるとなんと、お湯が出る!おー素晴らしい。これならシャワーはなくても体を洗えるし、歯磨きもここでできるじゃないか。もうこれで十分だ。何より、ベッドがあるからやっとちゃんと寝られる。
 

 
これでいよいよ、スペインともお別れ。

 

車窓からの景色
車窓から最後のスペインの景色を望む

 

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スペインより⑭

やってしまった。今日もまた。というか、もうきのうのことだけど。別に、あとで思い出に残るからわざとやってるわけではなくて、普通にしていてこうなってしまうのだ。

マドリードからちょっと足を延ばして近郊の町へ。この場合、バスか電車で30分~1時間半の世界遺産トレドが人気で、ずっとここに行こうと思っていたのだけど、あらためてガイドブックを読んでみて考え直した。カテドラル、教会、そしてたぶん石畳の道に古い家が立ち並ぶ・・・。なんか、大体想像できて、面白くないなと思ったのだ。そういうきれいなヨーロッパの町ってけっこう見てきたから、どうせならまだ知らない風景に出会いたい。ということで目を付けたのが、丘の上に風車が並ぶコンスエグラという村。

 コンスエグラ位置

 
またこういうところ、行きにくいんじゃないかと思って読み飛ばしていたのだけど、ちゃんと見てみるとマドリードからバスで約2時間。なんだ、ぜんぜん日帰りで行けそう。ただ、トレドに比べると圧倒的に情報は少ない。ここに行ったという人のブログもあまり多くはなく、それでもなんとか最低限のことは調べられた。でも、バスの時間がよく分からない。コンスエグラまではSamarまたはAisaという2社がバスを運行しているのだけど、翌日のことなのにホームページでもちゃんと時刻表が出ず、いらいら。まあスペインだししょうがない。行ってみれば何とかなる。

バスが出るのはマドリードの南ターミナル。ホステルから地下鉄ですぐなのだけど、場所がすごく分かりにくい。案内表示も駅を出た途端なくなるし。例によっていったん違う方向に少し歩いた後、反対側に引き返してやっと見つけた。小さく見えるけど、中はけっこう広い。
 

 
まずはSamar社の窓口へ。行きはホームページに出ていた通り、11時発がある。行った人のブログでは、みんな9時ぐらいの早いバスに乗ったということだったのだけど、9時なんて無理。よかった、ゆっくりめのがあって。でも帰りが問題。18時発。たぶん小さな村だから、時間が余る気がする。もう少し早く帰りたいなあ。Aisa社なら17時ぐらいのがあったはずなので、確認しようと隣のAisaのカウンターを見てみると、閉まっている!なんでだ。でもバス自体は運行されているみたいで、出発案内板にも表示が出ている。よく分からない。自動券売機もないし。結局、Samarで行きのチケットだけ買って、帰りは現地で聞いてみることにした。

さすがにマドリードだけあって、グラナダのターミナルより止まっているバスの数が多い。そしてまたこれだ。チケットに降車駅は書いてあるけれど、どこ行きのバスに乗ればいいのかが分からない。Samar社の11時発は2本。表示板には停車駅も出ているのだけど、なぜかどちらにもコンスエグラがない。幸い、2台は近いところにいるので、間違っていてもすぐに乗り換えられそう。適当に並び運転手さんに確認すると、その列のバスで合っていた。というか、これはトレドまでで、トレドで別のバスに乗り換えるよう。なんだトレドにも行くのか。ということは早起きすれば、トレドとコンスエグラどちらにも2~3時間ずつ滞在できたんじゃないんだろうか。そう考えるともったいない。

トレドまでは1時間。町並みを見て、すぐにここだと分かった。ガイドブックとまったく同じ。素通りするのは残念だったけど、ちょうどバスが上の方に上がっていったので、高い位置から見渡すことができた。確かにきれいだ。町歩きも楽しそう。まあこうやって見られたからよかった。

 トレド1

 
地球の歩き方によると、コンスエグラまではトレドからまた1時間。Samarのホームページでは13時半着となっていたけれど、出発したのが12時20分だから、13時20分に着くのかなあ。この、近い時間にいくつかの停車駅があるっていうパターン、迷うからいやなのだ。そしてまさにそのいやなかんじが的中。

13時20分、ちょっと大きな町に到着。降りる人が多いし、観光客っぽい人もいる。ここだ、とつられて降りたものの、前日に調べておいた観光案内所らしきものは見当たらない。降りた人たちもすでに目的地に向かっていって、散り散りになってしまった。これはどうやら・・・降り間違えたみたい。運転手さんに聞けばよかった、まったく。でもさっき、丘の上に風車が見えたから、あれじゃないのかなあ。それに、バスであと10分ほどで着くのであれば、そんなに遠くないはず。と考えて、とりあえず大きな道路に向かって歩き出すものの、なんかこの辺、畑ばっかりだ。あの向こうの方に風車が見えるんだけど、ガイドブックの写真とはちょっと違うかも。

 畑と風車

 
いざ歩いていこうとしたものの、方向が分からない。見えていれば向かっていけばいいのだけど、あの風車じゃないとしたら、それらしき場所はぜんぜん見えない。ここでありがたいことにグーグルマップがフリーwi-fiに反応してくれた。あれ?まだトレドとコンスエグラのちょうど中間ぐらい。いや、でもそんなはずない。コンスエグラに近いんじゃないのか。まあグーグルマップはときどき頼りにならないからとりあえず気にせず、方向を確認。やっと歩き出した先には道路標識が。・・・CONSUEGRA。おーあった。こっちで合っている。

 コンスエグラ標識

 
張り切って歩き出すと、しばらくしてまた表示板。うん、方向は大丈夫。でも、横にある24っていう数字はなんだろう。まさか、24キロ?という疑惑はまさにその通りで、しばらく歩くと今度は22。まだ2キロって、何時間かかる?夕方までには着ける?と不安が渦巻くのだけど、ここにはタクシーもないし、バスも止まらないし、歩く以外にない。

それにしても、引き続き暑い。日陰がぜんぜんないし、景色も面白くない。体中、汗でべたべたになりながらも必死で歩く。とにかく到着すること以外、考えられない。歩きながら、何度も思い浮かべていたこと。ヒッチハイク。この状況といい、頻繁に通るトラックの数といい、まさに車を止めるのにぴったり。もちろん、やったことは一度もないけど、そうするしかないんじゃないだろうか。
 

 
うんざりしながら1時間半ほど歩いて、ようやく田舎道らしい景色が見えてきた。北海道みたいだと思いながらのんきに写真を撮っていると、こちらに向かって走っていた乗用車がゆっくり止まる。乗っていたのはやさしそうなおじさん。どうやら、こんなところを歩くなんて暑いし、時間もかかるよ、と言っているよう。で、そのまま行ってしまうのかと思いきや、乗るかい?と座席を指さしてくれた!おーやったー!なんて親切な。まあもちろん、簡単にこういうのについていってはいけないのだけど、もう疲れ果てていたし、こんな人通りのないところで女子を物色するはずもないし、やっぱり先進国だから人の感覚というのは日本と変わらないなと思っていたので、ためらわずに乗り込む。

わざわざUターンして飛ばしてくれた。おじさんは少しフランス語が話せるというので、久々にフランス語で会話。しばらく行くと、丘の上に並ぶ風車が見えてきた。ああ、あれだ。めっちゃ遠いし。この距離を徒歩で行こうとしていたとは。おそろしい。

 車の中からの景色

 
15時15分、村の中心に無事到着。結局15分ぐらいかかった。ああ救われた。本当に助かった。旅ってこういうことがあるんだよなー。しかもここ、すごく雰囲気もよさそうだし。

 広場入口

 
さっそく風車、の前に、帰りのチケットを確保しに少し戻って観光案内所へ。ところが、ここも閉まっている!時間を確認すると、今は昼休み+シエスタのよう。夕方まで開かない。これはスペインではたぶん一般的なことだから、仕方がない。まあバスに乗れないってことはないだろう。18時にあるのは確実なんだし。

 観光案内所

 
早く風車に行きたい。でもこの村もなかなかかわいらしい。観光客がすごく少なくて、店もぜんぜんやっていない。これもシエスタかな。
 

 
なんとなく上の方に向かって歩いていくと、階段の上に風車が見える!おー、やっとここまで来た。丘の上へは途中から野原みたいになっているけど、こういうのもなかなか楽しい。ちなみに、車が通れる舗装された道路もある。

 階段と風車

 
村に近い風車の一つは売店になっていて、ここでファンタを買う。一気飲みできそうなぐらい、のどがからからだ。この売店のおじさんは、片言の変な日本語をたくさん知っていた。ここに来た日本人が教えていったんだろうな。そしてこの風車は階段を上がって中を見せてもらえる。
 

 
小さな窓からの景色がまるで絵みたい。
 

 
そして上から眺めたこの村の風景!きれいじゃないか。みどころは風車だけなんて書いてあるサイトもあったけど、失礼な。
 

 
もっと遠くまで歩くと、きれいに一列に並んだ風車が見えてくる。村とは反対側にある田園風景の美しいこと!風車には一つずつ名前が付いているようで、それぞれドアの上に書かれてある。近くには城塞もあって、ここも面白そうだった。残念ながら、時間の関係であきらめたのだけど。それにしてもこの景色、まさにスペイン。ドン・キホーテの世界だ。
 

 
思っていたよりもかわいらしい風車にすっかり疲れも忘れて、もっといろんな角度から見てみたい気持ちになるのをぐっと抑え、早めにバス停へ向かう。もうちょっといたかったなあ。まあ、この状況では仕方ないけど。ちなみに、端の方の風車がある辺りには観光ツアーのバスが途切れることなく来て、10分ぐらい写真だけ撮って帰っていった。一番多かったのは日本人のツアー。

道を下って観光案内所まで来ると、よかった開いている。でも、チケットは運転手さんから直接買えばいいとのこと。なんだ。まあバスの時間とバス会社を確認してくれたから安心したけど。行きと同じSamar。スプライトを飲みながら待つ。ほかに待っている人は一人もいない。

18時ちょっと前、Samarと書かれたバスが遠くの方から走って来るのを見て、停留所へ。ところが乗ってみると、マドリード行きは18時に来るからこれは違う、とスペイン語で言われ、そうなのかと思って降りる。確かに、18時よりはほんの少し早いけど。そして18時になったけど、来ない。5分たっても10分たっても何も来ない。やっぱりさっきのがそうで、言っていたのは値段か何かのことだったのかなと不安になってきた。そして17分ぐらいになったとき、ふと後ろを振り返ると、Samarのバスが来ている!いや、来て去っていこうとしている!このとき、暑かったから、停留所に止まっていた1台の無人バスの影に隠れていたのだけど、ここからだとやって来たバスはぜんぜん見えないし、向こうからも見えない。きっと18時に来るはずが遅れていて、乗客がいないと勘違いして行ってしまおうとしているのだ。でももう、走っても間に合わない距離。ああ、なんてこと。

せっかく早くから待ってたのに。でも、観光案内所のドアにはバスの時刻表が貼ってあって、19時20分のマドリード行きがあると書いてある。とりあえず、今日中に帰れるなら何時になってもいい。あと1時間か。その辺を少しぶらぶらしながら時間をつぶす。
 

 
でも19時になっても乗りそうな人は誰も来ず、ついに時計の針が20分を指したけれどバスは来ない。もう観光案内所も閉まっているし、帰れないのではと考えながらドキドキして、その辺に座っているおじいちゃんたちに相談してみるもののスペイン語だし、一緒に時刻表を見てくれたけど彼らもよく知らないから、どうしようもない。この時刻表、スペイン語でいろいろ注釈が付いていて、きっと期間限定だったり曜日限定だったりするんだろうと思う。

帰れない。どうするどうする。車でたった2時間ちょっとの道のり、しかもまだ19時台なのに!どうやらこの村にホテルはあるらしいのだけど、さすがにバカみたいだ。今泊まっているところがマドリードにあるのに。だからといってタクシーってわけにもいかない。それならホテルの方がたぶん安い。そもそもこの辺にタクシーなんて走ってないし。おろおろしながら、思いついたのはまたもやヒッチハイク。だって、そうする以外にない。どうしてもマドリードの宿に帰って寝たい。そこで、適当に歩いて大きな道路にちょうどいい場所を見つけ、まさかのチャレンジ。

 ヒッチハイクした場所

 
さすがに普通の乗用車はこわいから、業者のトラックが狙い目。さっそく来た。大きく手を振る。意外にできるものだ。お、ゆっくりになった。止まってくれそう・・・と思ったのに、なぜかそのまま行ってしまった。またしばらくして、今度は中型トラック。これは乗りやすそう、と思うものの、また通り過ぎる。ん?でもよく見ると、運転しているおじさんも手を振ってくれている。そうか、手を振ると本当に手を振っているだけと思われるのかも。今度は親指を立ててみる。素通り。そもそもこの道路、あんまり車通りが多くないし、行き先を書いて掲げるような紙も持っていなかったから、効率も悪い。

結局1時間半ぐらいであきらめて、村へ戻った。やっぱりヒッチハイクなんて非現実的だ。でもどうしようか。ガイドブックによるとホテルはそんなに高くなさそうなので、とりあえず見るだけ見てみることにして探し回ったけど、見つからない。ホテルは1軒しかないのか標識にも大きく書いてあるのに、その通り行ってもぜんぜんそれらしきものが見当たらないのだ。まあこんな時間に予約なしの客が来ることはないだろうから、電気も消えていたのかもしれないけど。もういいや、もったいないし、治安もよさそうだし、なんとかなるだろう。

スペインは夜が遅いから、23時になっても公園で大勢の子供たちが遊んでいて、たくさんある野外レストランもにぎわっている。しばらくは大丈夫。今日はまだバナナとリンゴしか食べていないことを思い出し、アイスを一つ頼む。うん、なかなかいい味。座ってくつろげるスペースも多いし、雰囲気も悪くない。

 アイスクリーム

 
でも、さすがに0時を過ぎると徐々に店が閉まり始め、1時にはお客さんもいなくなってしまった。それでも、後片付けとその後の一杯を楽しむ人たちで2時ぐらいまではそれなりに騒がしかったから助かった。さて、みんな帰ってしまった。さすがにこれはこわい。どうしよう。

幸い、夜中でもときどき車は通っていたので、道路が見えるところ、街灯がついているところ、なおかつ目立たないところを探すと・・・あった。観光案内所近くの公園にある遊具。

 遊具

 
中に入ると車からは見えないし、でも明るいし、何かあっても逃げられる。ここで足を伸ばして目を閉じると、やっとちょっとほっとする。

 遊具の中

 
ただ、寝転べない。ずっと座っているのはやっぱりしんどいので、また新たな場所を探す。ちょっと離れたところにあるこれも遊具、土管のような青いトンネル。
 

 
サイズもちょうどいいし、寝転んでうとうとすると気づいたらすぐに1時間たっていた。でも、今度は寒い。昼間はあんなに暑いのに、寒暖の差がかなり激しい。2時ぐらいまではいい風が吹いていて、すごく気持ちよかったのに。夜でも蒸し暑い大阪の夏とは大違い。たまたまバス対策で長袖を持っていたから上はいいけど、下は短パンだからどうしようもない。まあ我慢できないほどではないので、さすりながらなんとか堪える。

5時になった。ちょっと下から風車を見てみようと思ったのだけど、5時ってまだ真っ暗。夜だ。でもこれ以上ここにはいたくないので、バス乗り場へ。貼ってある時刻表が正しければ、朝イチはトレド行きの6時のバス。しばらくするとおばさんが来て、スペイン語で何か話しかけられた。分からないけど、バス、トレド、で通じて、同じねー、ここで待ってたらいいのかしらねー、っていう会話になる。ちょうど6時に今度はおじさんが来て、同じようにバス、トレド、で共通認識。みんなもやっぱり不安なんだな。

そして6時、ついにバスが来た!あー、これでやっと帰れる。ただ、マドリードまでは行かないのでトレドでまた乗り換えないといけないけど、トレドからはたくさん出ているはず。それに、トレドまで行けば鉄道もあるからなんとかなる。というのも、宿をチェックアウトしなければいけないのだ。よりによって、ここだけほかのホステルより早い10時半。それまでにシャワーは絶対浴びたい。汗と日焼け止めでもう体中べとべと。

トレドまではほとんど寝ていた。到着後、すぐに確認すると、マドリード行きはほぼ10分おきぐらいに出ている。なければ少し高いけど電車にしようと思っていたので、よかった。このバスでもまた発車とほぼ同時に寝ていて、マドリードに帰り着いたのは9時、そこからホステルに戻ったのは9時半。なんとかシャワーを浴びて、無事10時半にチェックアウト完了。ようやく、人心地がついた。長い一日だった。一晩寝られなかったのはつらいけど、でもこうして何事もなく、そして余計なお金を使わず、旅が続けられる。

 

塗り直しの道具
剥がれている白い部分を塗り直し中