パリ大学付属語学学校を受験する②

国立のパリ第3大学(通称ソルボンヌ・ヌーヴェル)とパリ第10大学(通称パリ・ナンテール)の付属語学学校を受けたという前回の話のつづき。まずは、それぞれの詳しい情報を調べるところから始まったのだけど、これがなかなか難しかった。ホームページ自体はすぐに出てきても、その中のどこに語学学校の情報が書かれているのか分からない。しかも、あまり早い時期だとまだ更新されていなくて、中身が去年のままだったりする。それに、日本人でこの2校を受けたという人がものすごく少なく、頼りにしているブログの情報も極端に少ない。結局、時間があるときに半日ぐらいかけて、やっと必要な手続きを調べることができた。

パリ・ナンテール(パリ第10)大学
こちらの方が受け付けが始まるのが少し早かった。今は全部、ネットでのやり取りになっていて、ホームページから自分専用のページを作り、そこに書類をアップする。提出できる期間は約3週間限定。必要だったのは以下の通り。
・パスポートのコピー
・履歴書(フランス語)
・志望動機書(フランス語)
・大学卒業証明書(フランス語に法廷翻訳したもの)
・フランス語のレベルを公的に証明するもの

履歴書と志望動機書は日本でビザを申請したときにも必要で、業者に訳してもらった書類を残していたから、それを参考に書き直して今の学校の先生に添削してもらった。他の語学学校に入るための書類を見てもらうのもどうかなと思ったけど、まあお金を払っているんだし、他に選択肢もなかったから仕方ない。

卒業証明書の法廷翻訳については以前に書いた通り、バタバタした挙句になんとか間に合い、フランス語レベルの証明書は4月に受けたTCFの結果を提出。このパリ・ナンテール大学の語学学校は、まったくの初心者は入ることができない。B1レベルが必要と書いてあるけれど、実際には一番下のクラスはA2だから、正確にどのレベルから受け入れてくれるのかはよく分からないものの、融通がきくんじゃないかと思う。クラスは自分で選んで出願するシステムになっていて、私はB2を選択。

これらの書類をネット上で提出したあと、1週間もしないうちに、無事受理されたのでテストを受けにくるようにという連絡がきた。ここで書類がきちんとそろっていない人って少なからずいるだろうし、そういう人は弾かれるんだろうけど、それが実際にどのぐらいの割合なのかは分からない。実感としては、基本的に希望者は全員、受け入れていそうなんだけど。

パリ・ナンテール大学は、パリという名前が付いていながら郊外にある。しかも、私が住んでいる郊外からはかなり遠い。本当は、テストの前に一度、行ってみようと思っていたのだけど、ここはマクロン大統領による入学制度改革に反対する暴動がこの春ごろだいぶ激しかったらしく、入れるかどうか分からなかったし、テレビで毎日のように見ていたからまあいいかと思って結局、行かずにいた。テスト当日は初めてだったからかなり余裕を持って家を出たものの、急行のような郊外電車RERを使うので、思ったより早い。
 

パリ・ナンテール1

 
駅のすぐ前がもうキャンパスで、迷うこともなくたどり着けた。ただ、ここからが問題。この大学のキャンパスは、ヨーロッパの他の大学と比べても最大規模らしく、向こう側までずっと校舎が続いている。しかも、入り口に案内板みたいなものもなく、方向も分からないままとにかく前進。途中で案内所らしきところを発見し、おじさんに尋ねつつ小さなキャンパスマップを写真に撮って、なんとか指定の建物にたどり着けた。こういうところがさすが国立、不親切だ。でも、古い歴史を持つだけあり、確かに雰囲気はいい。
 

パリ・ナンテール2

 
テストはいかにも大学らしい大講堂で。といっても1時間ほどと短く、筆記だけの簡単なものだった。この日はこれで終わり、2、3日後に今度は口頭試験の案内が届く。これはテストというか、どちらかといえば意思確認のような内容で、志望動機書に沿った簡単な質疑応答と、実際の授業内容の説明のみで終了。次の日には、早くも合格通知がメールで届いた。あとは、学費を払って身分証明書を提出すれば、晴れてパリ・ナンテールの学生になれる。

ソルボンヌ・ヌーヴェル(パリ第3)大学
さて、こっちはちょっとややこしい。まずはネットでの仮登録から始まる。これが、日時がきっちり決まっていて、人気なので30分ぐらいで埋まってしまうという噂。この情報を事前に知っていたから、かなり早い時期から調べておいて、本棚にメモを貼っておいた。今年は5月14日(月)の午前10時から受け付けで、10分ぐらい前からホームページを開いて待機。どこから登録フォームを開くのか分からず3分ぐらいロスしたけれど、10時6分に無事完了。お昼に見たときはまだ空きがあったものの、夕方には終わっていたから、やっぱり早めに終わらせておいてよかった。

第一段階をクリアしたら、次は仮登録に必要な書類を提出する。これは学校指定のものなので、メールで送ってもらうか直接取りに行くかなのだけど、取りに行く場合、日時が指定されている。ただ書類をもらうだけなのになかなかうっとうしいなと思いながらも、やっぱり見ておきたいので、いろいろあって忙しいときに5区まで行ってきた。
 

ソルボンヌ・ヌーヴェル1

 
でも、行ってみてよかった。さすが5区だ。この雰囲気、もうメトロの駅を降りた瞬間から分かる。5区といえば、学校が多い古くからの学生街、カルチエ・ラタン。個人的にももっともなじみがあり、好きな地区なのだけど、やっぱりいい。
 

ソルボンヌ・ヌーヴェル2

 
この日は本当に紙を2、3枚もらうだけで一瞬で終わり、後日、提出しに再訪。必要だった書類はこんなかんじ。
・学校指定の登録用紙
・大学卒業証明書(フランス語に法廷翻訳したもの)
・出生証明書(フランス語に法廷翻訳したもの)
・志望動機書(フランス語、任意)
・切手を貼った封筒

ソルボンヌ・ヌーヴェルの煩わしいところは、この書類。卒業証明書も出生証明書(戸籍)も必ず法廷翻訳が必要で、大使館の翻訳は一切受け付けないという文言が、ホームページにももらった紙にもしつこいぐらい書かれてある。以前の記事にも書いたけれど、法廷翻訳はすごく高い。今回は2通で100ユーロぐらいかかった。まずはネットでの仮登録というハードルがあったから、法廷翻訳はこの仮登録を無事に終えてから頼もうと思いあと回しにしていたのだけど、先に提出期限を迎えたパリ・ナンテール大学にも卒業証明書の法廷翻訳が必要だということが直前に分かり、結局こちらだけ慌てて頼むことになってしまったのだった。
卒業証明書は英語だったのでフランスの事務所に頼んだけれど、戸籍の法廷翻訳は日本人の翻訳者にお願い。すごく対応がよかったので、参考までに。http://tktrad.com/service/traduction-certifiee/

直接提出する場合は事務所のポストに入れておけ、と書いてあったけれど、実際には担当の女性がいて、その場で中身を確認。コピーを何部か用意するようにということだったから、わざわざ3部ずつコピーしたのに、1部で十分よと返された。また出た、こういうところ本当に適当。でも、この人はすごく感じがよく、また印象アップ。そして驚いたことには、同封した封筒でなんと次の日に返信がきた!フランスらしからぬ素早さ。

これで無事、入学許可が出たかというと、そうではないのがソルボンヌ・ヌーヴェルの一番やっかいなところ。仮登録は終わり、ビザの申請や滞在許可証の更新に必要な仮登録証は出たけれど、次にレベル分けテストがある。このテストが、授業開始直前の9月で、その結果、同じレベルの学生が多く枠に入れなければ入学できないのだ。直前まで分からないって・・・。すでにこっちに住んでいれば最悪なんとでもなるけれど、日本やその他の国からこの学校を目指してくる人は、生活にも慣れないうちに志望校に入れない可能性があるとなると、かなり不安だと思う。とはいえ、私だってこんな不安定な状態は落ち着かない。しかも、同じレベルの学生がたくさんいたとして、どういう基準で合格・不合格が決まるのかは不明なので、少しでもポイントを稼ぐために、特に指定されていなかった志望動機書を入れておいた。
 

罫線

 
両校受けてみて思ったのは、日本を含む外国から受けるのは大変そうだなということ。まあでも、そういう人も毎年絶対いるだろうし、無理ではないだろうけど、テストがあったり、直接書類をやり取りしなければいないことを考えると、やっぱりこっちにいる方が簡単。あと、フランス語もちょっとはできないと難しいかも。ただ、そこまでやっても入れるかどうか分からないとなると、誰でも入れるパリ第4大学のソルボンヌ、またはパリカト(パリ・カトリック学院)を選ぶ人が圧倒的に多くなるのも納得。

でも、今回受けた2校とも、伝統のあるパリ大学だけあって、さすがの雰囲気と貫禄。どちらに行っても内容の濃い授業が受けられそう。ただ、個人的にはソルボンヌ・ヌーヴェルの方がいいかな。場所が近い、雰囲気が好きというのもあるのだけど、こちらの方が授業時間がちょっと少ないのだ。パリ・ナンテールはみっちり週20時間、ソルボンヌ・ヌーヴェルは自習4時間を合わせて20時間だから、実質16時間とだいぶ楽。実際、パリ・ナンテールの面接では時間割を見せてもらったのだけど、かなりキツそうな上に、宿題がいっぱい出るけど大丈夫か、ちゃんと通えるかということも聞かれたし、宿題はどちらの学校も多いだろうから、それなら授業時間が少ない方がいい。ただ、その割にソルボンヌ・ヌーヴェルの方が授業料は高いから、迷うところ。

個人的に都合がよかったのは、どちらの大学も映画コースがあり、語学を身につけたあとはそのまま大学に入って映画の勉強をしたい、という口実が使えたこと。個性を出し印象づけるためには、こういう人と違ったアピールポイントが必要なので、大いに利用させてもらった。もちろん、これが実現すればうれしいけれど、さすがにそれは難しいかな。

とりあえず、パリ・ナンテールに通えることは確定したし、あとはソルボンヌ・ヌーヴェルのテスト結果次第。どちらになっても、パリカトのときと同じかそれ以上に大変な日々になりそうだけど、今の気楽な学校もいい加減、飽きてしまった。いつまでたっても基本的な文法ばかりなので、つまらないし先生もよくないし、そろそろやめようと思っている。でもなんか、こういう手続き関係ばっかりに気を取られて、最近ぜんぜん真面目に勉強していないのが一番ダメかも。
 

参考サイト:
パリ・ナンテール大学
フランス滞在つれづれ日記「願書申請 パリ第10大学編」
フランス留学ブログ(アフィニティ・フランス)「現地での大学進学を見据えたフランス語学留学」
ソルボンヌ・ヌーヴェル大学

フランス滞在つれづれ日記「願書申請 パリ第3大学編」
Philo France「【ソルボンヌ・ヌーヴェル】DULF登録から受講までの道のり」
おぱぴのおパリ日記「早い者勝ちの願書の話」

 
パリ大学付属語学学校を受験する③はこちら

 

ひっくり返ったRER
雨続きのためいつも使っているRERで事故も

 

*お断り* 現在、個別質問にはお答えしていません。コメントはブログの感想のみ受け付けています。

6件のコメント

  1. こんばんは。はじめまして。現在パリ在住で、学生ビザの更新について調べていてこちらのブログにたどり着きました! ナンテールの語学学校を受験しようと思っているので、とても参考になります! ひとつだけ質問させてください。
    ウェブサイト(https://francais-langue-etrangere.parisnanterre.fr/francais-pour-etudiants-etrangers-inscriptions-326419.kjsp?RH=1264172683113&RF=1265194224662)をみると、前期がPLCF 、後期がDU と分かれているようですが、PLCFは週に6時間の講義があると書かれておりますよね。この場合、学生ビザの取得要件の一つである、週20時間の授業時間を満たすことが可能なのでしょうか。
    aventure16 様はソルボンヌヌーヴェルに通われているにもかかわらず、ナンテールでのビザ更新に関する質問で恐縮なのですが、もしご存知でしたら教えていただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

    1. こんばんは。
      該当ページを確認しましたが、PLCFとDUは別々のコースで、同じページに書かれているだけではないでしょうか。それぞれに学費も設定されているので……。確かに、後半部分「Pour l’inscription en DU au second semestre」とありますが、これは単に「premier semestre」の間違いではないかと思います(笑)。DUは1年を通して週20時間のはずですよ。
      去年受けた感じでは、ナンテールは書類さえきちんと出せば通してくれそうでした。頑張ってくださいね!

      1. aventuriere様
        お返事ありがとうございます! なるほど、それぞれ別のコースなんですね。「前期、後期で名称が変わるなんて不思議だなぁ」と思っていたのですが、間違いだとしたら納得です。笑 DUに登録すれば、週20時間の要件をクリアできそうとのことでほっといたしました!
        昨晩、ブログの過去記事も楽しく拝読しておりました。これからも更新を楽しみにしています:D

        1. 確かに、あの書き方は分かりづらいと思います。しかもpremierがsecondになっていれば、前期と後期で違う名前が変わると受け取ってしまいますよね。同じページに載せるにしても、コースごとに分けて説明すればいいのにと思うのですが(笑)。
          私は週20時間がきつそうだなと思ってヌーヴェルを選んだのですが、ナンテールがどんな授業をやるのか興味を持っています。もし通われることになったら、ぜひレポートしてくださいね!

  2. はじめまして、こんにちは!私は、パリナンテール語学学校を目指しています。ただ、ネックとなるのが、最終学歴の件であり、私は大学を中退していますので、高卒となります。ただ、留学エージェントのHPを見てみると、申込条件として、母国での大学入学資格保有と書いてあったので、大学を中退しても、大学在籍証明書があれば、母国での大学入学資格保有として受け付けてくれるのでしょうか? 

    1. こんにちは。
      記事に書いた通り大学の卒業証明書は必要でしたが、ご質問のケースは分かりかねます。必要書類はナンテールのHPに書かれているはずなので、業者のものを見るより確実だと思いますし、細かいことはナンテールに直接聞かれてみた方がいいのではないでしょうか。
      私に分かることであればお答えするのですが、エージェントではなくあくまでも一個人なので、ご理解ください。
      受験は来年でしょうか?頑張ってくださいね。

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