パリで法廷翻訳を頼む

外国人としてフランスに住もうとすると、あらゆる場面でフランス語の書類が必要になる。渡仏前のビザ申請、渡仏後の滞在許可証受け取り・更新、語学学校への応募時など、身分証明の機会は多い。学生の場合は戸籍や大学卒業証明書の提出を求められる場合が多く、9月から通いたいと思っている新しい語学学校への出願にもこれらが必要。1年目は留学業者に訳してもらった戸籍があったし、卒業証明書は英語のものが通ったのだけど、戸籍はなるべく新しい方がいいから今回、日本の家族にあらためて取りにいってもらい、卒業証明書もフランス語しか受け付けてもらえないとのことなので、翻訳してもらわなければ。出願するのは国立大学付属の語学学校なのだけど、学費が安い分あまり融通が利かず、例外は認めてもらえなさそうだから、できる限りきちんとしておきたい。

以前にも少し書いたことがあるのだけど、翻訳といってももちろん誰に頼んでもいいわけではなく、専門の翻訳家や機関などにしてもらわなければならない。特に指定がなければパリの日本大使館に頼むのが一番安く、去年は一度ここで戸籍の翻訳をしてもらった。ただ、注意が必要なのは、この大使館の翻訳が認められない場合があること。他の国の事情は知らないけれど、フランスには裁判所が認定した法廷翻訳家という人たちが存在し、彼らによる翻訳=法廷翻訳を求められることも多いのだ。大使館って国を代表する公的機関だし、ここがきちんと翻訳したものならどこでも通用しそうに思うのだけど、フランスにとってはあくまでも外国政府の管轄である上に、日本はおそらく大丈夫でも、どこかの国の大使館が自国民に有利なように書き換えるのではないかという疑いがあるようで、最近は法廷翻訳しか受け付けないケースが増えているとのこと。そして今回の出願にあたっては、まさにその法廷翻訳が求められている。
 

翻訳イメージ

 
フランスの裁判所が認めた翻訳家といっても外国人も含まれていて、ネットで調べればフランス在住の日本人法廷翻訳家のリストも割と簡単に探せるし、依頼自体は難しくない。やっかいなのは、法廷翻訳をしてもらうとものすごく高くつくことなのだ。大体、戸籍や卒業証明書なんてほとんど文字もないし、時間もかからないと思うのだけど、やっぱりお墨付きをもらうということで、調べた限りでは1通70ユーロぐらいが相場。下手をすれば、紙切れ1枚に1万円ぐらいかかることになってしまう。ただの語学学校のくせに、しかも安いという理由で選んだのに、4月に受けた語学力証明のためのTCFといい、授業料以外の費用がいろいろかかるのは計算外。

この法廷翻訳家、かなり早い時期から調べて見当をつけておいた。というのも、出願期間がきっちり決まっている上に割と短いので、直前になって慌てないようにしたいから・・・と思っていたのだけど、結局はいつも通り、大慌てする展開に。
 

罫線

 
実は、出願しようと思っている学校は2校あり(人数制限があるため)、1校は確実に戸籍と卒業証明書の法廷翻訳が必要なのだけど、もう1校はホームページに出ている必要書類リストによると戸籍はいらず、卒業証明書についても特に何も記載がない。しかも、過去に出願した人のブログのかんじでは、別にフランス語じゃなくてもよさそう。そもそも卒業証明書は英語版しか持っていないし、こちらの学校の方が受付期間が早いからもうこれを提出して、その後もう1校への出願のために、戸籍と卒業証明書2通まとめて法廷翻訳の依頼をしようと思っていた。ところが、先に受付が始まった学校へいざ提出しようとすると、卒業証明書は法廷翻訳が必要となっている!書類はすべてネット上で自分専用のページを作って提出するのだけど、そこを開くと注意事項として書いてあったのだ。じゃあ事前にホームページにも記載しといてよー。まあ、フランスの学校なのだからフランス語で提出するのは当然かもしれないけど、英語なら割と認めてくれるところもあるから、英語でいいと勝手に判断してしまった。やっぱり、自分でやってみるまで実際どうなのかは分からない。

せっかく、かなり前から情報を調べていたのに、そのことがかえって災いした。もう必要書類は揃っているからと高を括り、実際に自分専用のページを作ったのが締め切りの約1週間前。今からだと間に合いそうにないし、いったんは英語で出してみようかとも思ったのだけど、それが原因で落とされてもいやなので、当たりをつけておいた翻訳家にすぐ連絡。ところが、日本語→フランス語と英語→フランス語の翻訳は別物のようで、英語からの翻訳だと外部の人に頼まないといけないから時間がかかるとのこと。急いでもう1件、英仏日の翻訳をやっているという事務所にも問い合わせてみたのだけど、ほぼ同様の返事。運の悪いことに、フランスも5月は祝日が多く、その分、余計に時間がない。うーん、これはもうあきらめるしかないかと思ったとき、こちらのブログで英語→フランス語の法廷翻訳をしているGALITH PORTAL事務所を発見。そうか、今回は日本語は挟まないから、別に日本人に頼まなくてもいいのだ。しかも、英語の方が需要が多いから安いらしいし。ダメ元でメールをしてみると、なんとすぐに返信があり、超特急で40ユーロで承ります、とのこと。40ユーロ、これは日本語の翻訳事務所が提示している金額よりだいぶ安い。とにかく、受けてくれるところが見つかってひと安心。

その後、すぐ事務所に来るように連絡があり、卒業証明書のコピーを持って16区へ。想像よりだいぶ若いお姉さんが笑顔で迎えてくれ、コピーとお金を渡す。祝日を挟むにもかかわらず、3日後にはできるとのことだった。そして3日後、再び訪問するとすぐに渡してくれて無事終了。英語版の原本コピーにはちゃんと事務所のスタンプが押してある。領収書ももらわなかったのでちょっと不安だったのだけど(この辺はフランスっぽい)、上記ブログの通り、すごく感じのいい対応だった。まあそれにしても、入学・卒業年や学部ぐらいしか書いていないから、頑張れば自分でも訳せるんじゃないかって思えるような内容なのだけど、これが決まりなら仕方ない。
 

卒業証明書

 
というわけで、もう本当にバタバタした挙句、1校目には無事、出願完了。もう1校への出願には戸籍が必要なので、日本人の法廷翻訳家に依頼するつもりなのだけど、ここでもまた問題発生。この戸籍も、かなり早めの4月頭ぐらいには送ってもらっていたものの、今回、法廷翻訳についてあらためて調べ直していたところ、どうも戸籍抄本ではなく戸籍謄本じゃないとだめだということが判明。わざわざ家族全員の情報を知らせたくもないから、いつも抄本にしてもらっていたのだけど、慌てて謄本を取り直してもらうよう家に連絡。母親が明らかにイラッとしている様子がメールから伝わってきたのだけど、まあしょうがない。幸い、すぐに送ってくれて、今到着を待っているところ。郵便事故がないことを祈る・・・。

 

GALITH PORTAL事務所が入る建物

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