パリを見下ろす

エッフェル塔に凱旋門、ノートル・ダム大聖堂。パリ観光では外せないこれらのスポットには20年前、旅行で初めてこの街を訪れた時に上ったのだけど、20年で観光客は驚くほど増え、今はいつ行ってもうんざりするぐらい長い行列ができている。住んでいる立場ではとてもその待ち時間に耐えられず、ずっとやりたかったこの企画もあきらめていたところ、思いがけずチャンスがやってきた。コロナのおかげで観光客がほぼいない。帰国前の突然の贈り物、しかも高所好きとしては、ぜひありがたくこの機会を利用せねば。

各施設が再開されてからすぐに行動開始。まずは定番中の定番、7区のエッフェル塔へ。
 

エッフェル塔

 
公園のようになっている広い待ちスペースには誰もいない。いつもなら長く続く行列について行けばいいのだけど、広すぎてどこに塔の入り口があるのか分からず、何度も迷いながらようやくたどり着いた。こんなこと、通常ならまずない。

この時は6月の再開直後でエレベーターは動いておらず、階段のみ。また、一番高いところまでは上れず3階が限度だったのだけど、十分だった。階段もそれほどきつくはなく、何より一段ごとに変化する景色を楽しみながら上るのはワクワクする。
 

 
セーヌ川の水面がこれほどきれいに見えるのはここに上る魅力の一つ。その形から分かる通り、上に行くほどスペースは狭くなるのだけど、人が少ないためにぜんぜん気にならなかった。
 

 
そして、下りる時も同様に地上に近づいていく景色を楽しめる。
 


 
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次は、これも外せない8区の凱旋門。20年前の記憶では、ここからの眺めが一番パリらしくて好きだった。いつもなら下から見上げても分かるほど展望台の柵に人の顔が隙間なく連なっているから、この空き具合は本当に奇跡。
 

凱旋門全景

 
狭い螺旋階段を上がって展望台へ。このパターンはしんどい。でも、これを上がりきった先には素晴らしい眺めが待っている。
 

 
自分の立つ場所を中心に12本の通りが放射状に広がるこの景色、これがパリならでは。シャンゼリゼ通りを真っ直ぐに見下ろせる場所はここしかない。でも、やっぱり通常時よりは車も人通りも少ないようで、ちょっと寂しい気がする。
 

凱旋門からの眺め1

 
実はこの何週間か後、夜にも上った。エッフェル塔にしようか迷ったのだけど、闇に輝くエッフェル塔を眺められないのは残念なので凱旋門にしたのだった。この判断、大正解。
 


 
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この際なので、変化をつけて14区にあるモンパルナスタワーにも挑戦。ここに上る観光客はあまりいないと思うし、値段も18ユーロと一番高かったのだけど、こうなったら全制覇したい。
 

モンパルナスタワー

 
見た目も中の様子も日本の都会にあるような普通のオフィスビル。そして、これも普通にモダンなエレベーターで56階(だったと思う)まで上がり、そこからは階段で展望テラスへ。
 

 
さすがは近代的なビル、エッフェル塔や凱旋門と違い、かなり広い。そして、長時間でも快適に過ごせるよう整えられている。
 

 
この辺りに高い場所は他にないのでどんな景色が見えるのか興味があったのだけど、確かにエッフェル塔や凱旋門から眺める街とは印象がだいぶ異なる。7区や8区と違い、ここからはいかにもパリ的なオスマニアンの建物が近くに見えず、よりモダンなイメージ。これは意外だった。でも、エッフェル塔を眺めるならここは最高。周囲の建物に邪魔されることなくエレガントにそびえるその姿を見ていると、高さ制限による街づくりというアイデアに感嘆せずにはいられない。
 

モンパルナスタワー展望台3

 
それと、セーヌ川が目の前を真っ直ぐ水平方向に流れていて、ルーブル美術館、チュイルリー公園、オルセー美術館と川沿いのスポットが地図通りに見えるのも特徴的。といっても、写真ではほとんど判別できないけれど。
 

モンパルナスタワー展望台6
 
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続いて、これもちょっと変化球で18区のモンマルトルにあるサクレ・クール寺院にも上ってみた。いつもは通れないぐらい人であふれ返っている階段にも、ほどよいゆとりがある。
 

サクレ・クール寺院全景

 
サクレ・クール寺院はどちらかというとその白い外観が有名で、展望スポットとしてどれだけ知名度があるのか分からないけれど、9ユーロとモンパルナスタワーの半額、しかもその値段以上に価値のある眺めが楽しめる。

凱旋門と同じような狭い階段を上り、途中、細い抜け道のような通路を渡っていくのも楽しい。ここからの景色がすでに素敵。
 

 
見晴らしのよさは期待以上。面白いのは、さっきのモンパルナスタワーと真正面から向き合う角度があること。つまり、ここからもセーヌ川が水平方向に見え、モンパルナスタワーの合わせ鏡のようになっているのだ。また、上ってみるまで注目していなかったけれど、ここにもノートル・ダム大聖堂にあるのと同じようなガーゴイルが。これがあるだけで景色にヨーロッパらしい趣が加わるから不思議。
 

 
下りる時も、上りとは別のルートを通って余韻を味わえる。
 

サクレ・クール下り
 
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最後に、4区のノートル・ダム大聖堂へ。ただし、これはコロナとは関係なく去年の火事で今は入れないから、だいぶ前に上った時の写真、以前パリ4区歩きでも掲載した写真を再び。
 

ノートル・ダム

 
ここもおなじみの狭い螺旋階段を上っていった。セーヌ川がエッフェル塔から眺めるよりも間近に見える印象。でも、この4区の方が建物が素朴でかわいらしく、エッフェル塔からの景色とはまた違った趣。個人的にはこちらの方がより親しみやすい雰囲気で好きだなあ。それにしても、去年の火災は本当に悲しかった。
 


 
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これでパリの高い場所は大体押さえたはず。個人的に一番よかったのは意外にもサクレ・クール寺院。建物そのものの趣や18区という場所柄もあるけれど、パリらしい情緒のある眺めが楽しめる気がする。イメージ通りのパリを実感できるのはエッフェル塔と凱旋門、ゆっくりするならモンパルナスタワーがベスト。それぞれに違った味わいがある。

全部に上ってみて分かったのは、建物や公園を含む景色を見ればそれが何区なのか、自分が今どちらの方角を向いているのかを認識できるということ。つまり、今やパリ中の主なスポットが場所を含めて頭の中に入っているのだ。来た当初は20区それぞれの位置さえあやふやだったのが、ここまでクリアになるとは。パリに惚れ込んでしまった人間としてはやっぱりうれしいし、いつまでもこの街がこのまま変わらないでいてほしいと強く思う。

パリで古着をリサイクル

前回に続きリサイクルの話。これはたぶんパリだけじゃなくフランス全土で同じシステムだと思うけれど、街を歩いているとこんな緑のボックスを見かける。あまりにも街並みになじんでいて言われなければ分からないぐらいのこの物体、なんとも不思議なことにこれが古着の回収ボックスになっている。
 

リサイクルボックス全景

 
家から徒歩3分ほどのよく通る場所にもこれが設置されていて、以前から利用しようと思っていた。去年、日本に帰国した友達も、最後はこのボックスに入れて帰ったそう。捨てるつもりで持ってきたものや、4年の間に破れてしまったものもけっこうあるから、これは助かる。ボックスの表には、ここからどんなルートでリサイクルされるかを説明したイラストが。
 

リサイクルボックス

 
別の面には、こちらもイラストで回収可能なものが示されていて、服、布類、靴(両足そろっているもの)、革製品と説明書きがある。破れたり壊れたりしていてもいいとのことだけど、洗濯済みで乾いていることが必要。これらをそのままボックスに入れるわけではなく、中身が出ないよう封をした袋などに詰めた上で出す(最大30リットル)。
 

リサイクルボックス説明イラスト

 
初めて使ったから入れる場所が分からず迷ったのだけど、簡単だった。

こういう挿入口があるので、これをひたすら回す。ちなみに、私がやったときは左右どちらにでも回った。だからややこしいのだ。
 

リサイクルボックス挿入口1

 
しばらく回していると、いずれこんな空洞が現れる。あー、ここに入れるのね。
 

リサイクルボックス挿入口2

 
で、こうやって置いてまた回せば自動的に中に落ちる仕組み。どれぐらい入るか分からず少なめにしたけれど、かなり余裕があった。次はもう少し多めに持って行こう。
 

リサイクルボックス挿入口3

 
前に、テレビのニュースでこのボックスの特集をやっていて、それを見た限りでは上の写真のイラスト通り、ちゃんと人の手で仕分けされた上で再利用されているようだった。とても便利なシステムだと思うけれど、残念ながらゴミ箱代わりに汚れた古着をそのまま入れてしまう人もいるんだろうな。まあさすがに私も、底が抜けるほど履き古したスニーカーは入れていいものかどうか分からず、普通にゴミ箱に捨てたのだけど。

パリで家電をリサイクル

いよいよ帰国に向けて少しずつ片付けをスタート。その第一弾とでもいうべきものがこれ。数カ月前に壊れてしまった電気ケトルをリサイクルに出した。
 

ケトル

 
これはフランスに来た直後に自分で買ったもので、3年半ぐらいで壊れたことになる。レバーを下ろすとスイッチが入り、お湯が沸くと自動的に上がる仕組みなのだけど、これが下がったままになってしまった。ちなみに、白くこびりついている汚れは硬水に含まれる石灰が原因。
 

ケトルレバー

 
パリでもゴミの分別は一応ちゃんとしていて、普通ゴミと資源ゴミはボックスも分かれている。今住んでいるアパートにはビンの捨て場がないのだけど、路上のあちこちにこういう大きな専用ボックスがあり、たまにまとめて近所のボックスに捨てに行っている。そんなに頻繁に空きビンが出るわけじゃないから、特に不便にも感じない。
 

ビン回収ボックス1

 
でも、さすがに壊れたケトルを入れられるゴミ箱はないだろうと思い、ネットで検索してみたところ、パリのゴミ回収についてまとまったサイトがあった。辞書を使わなくてもフランス語がそれなりに分かるようになると、やっぱり何かと便利。
 

Que faire de ses déchets ? Paris vous facilite le tri !:
https://www.paris.fr/pages/en-2019-paris-vous-facilite-le-tri-6266

 
調べてみたところ、電化製品の回収は各区で特定の日に行われていて、壊れていても無料で引き取ってくれるよう。回収カレンダーを見ると、自宅がある5区では7月に入って最初の土曜日にやっていたので、15分ほど歩いてメトロのJussieu駅前へ行ってみた。うん、あれっぽい。
 

電化製品回収所2

 
そんなに大々的にやっているわけではなく、持ち込まれたものをトラック1台に詰め込んでいるだけで知らなければ普通に通り過ぎてしまうぐらいだけど、列ができるほどではなくても次々に大きな箱や袋を抱えた人が訪れている。中には、車で持って来たと思われるぐらいのたくさんの荷物を並べている人もいて、みんなそれなりに利用しているんだなと実感。それもそのはず、やり取りは簡単で、壊れているかどうかの説明もいらず、もちろん身分証などもいらず、本当に「はい」と渡しておしまい。持って行きさえすれば、あっという間に片付いてしまう。
 

電化製品回収所1
青いテントとパーカーが目印

 
これとは別に、使用済みの電球と電池の捨て方も分からず、長い間部屋に置きっ放しになっていたのだけど、調べてみたらスーパーのカルフールに回収ボックスがあるよう。カルフールは近くにないから普段は利用していないのだけど、映画館への行き帰りの途中にあるので寄ってみると、なるほどレジの前にボックスがあった!いつも行っているスーパー、モノプリではコロナ騒動後、なぜか電池の回収ボックスがなくなってしまったから助かった。
 

電球と電池

 
前に住んでいた郊外の学生用マンションは敷地内にすべての種類のゴミを分別して捨てられたのだけど、今のような一般のアパートにはそういう便利なシステムはないから、日常生活の細かいことを知るのはなかなか大変。こんなタイミングながら不要なものがなくなって、しかもきちんとリサイクルに出せてすっきりしたけれど、これって特に帰国とは関係なく、もっと早くやっておけることだった。必要に迫られないとできない性質はどこにいても変わらない。