語学学校の限界

12月に入ってすぐに大学キャンパスを占拠して始まった学生デモは、前学期最終日まで終了せず、バカンスのはずだった2日間が補講でつぶれてしまった。大学が使えなくなってから、5区内の複数の学校を借りていろんなところで授業をしたのはちょっと楽しかったけど。それにしても、個人的にすっかりおなじみの映画館近くの小さな通りにもソルボンヌ・ヌーヴェル(パリ第3)大学の校舎があったとは。
 

ヌーヴェル別キャンパス

 
ちなみにここで授業があった日、すぐ近くでもデモをやっていて思わず苦笑い。デモで追い出されて行った先でもデモとは、さすがフランス。
 

5区のデモ

 
さて、意外に長かった前学期の3カ月。始まってすぐに、この学校はあまりよくないのではという印象を持ったのだけど、そう感じていたのは私だけじゃなかった。直接聞いただけでも、同じクラスの4人の生徒が同じことを思っていたのだ。そのうち1人は途中で仕事が決まって学校を去り、2人は面白くないからと、後期は別の学校に行くそう。私は他に選択肢がないので引き続き登録の申し込みをし、順調に再登録が認められたのだけど、実はもうあんまり行きたくない。

9月の入学テストの結果、大学進学コースDUEFのB2を提案されたものの、いろいろ考えた末に通常の語学コースDULFを選び、空きがないため1つ下のB1に入ることになった。考えてみれば、そもそもここからよくなかったのだ。後期はB2に上がることになりそれ自体はよかったのだけど、クラス全員一緒にレベルアップするとのこと。先生によると、毎年何人かは留年する生徒がいるけれど、このクラスはみんな真面目で優秀だから落ちこぼれる人はいないそう。でも……。正直、レベルの差がかなりあるし、どう考えてもB2には達していないんじゃないかと思う人もけっこういる。そういう生徒たちが進級することに異議があるわけじゃないのだけど、さすがにこのクラスでは自分はだいぶできる方だなという実感があるので、複雑なのは確か。こんなに幅があるのに、一緒に学べるわけがない。
 

ソルボンヌ・ヌーヴェル大学
普段のソルボンヌ・ヌーヴェル大学

 
パリカト(パリ・カトリック学院)→ 少人数制の学校 → ソルボンヌ・ヌーヴェル大学といろんなタイプの語学学校を渡り歩いてきたけれど、最終的に今、思うのは、やっぱり少人数でないとダメだということ。でも、ただ少人数というだけでは不十分で、しっかりしたカリキュラムといい先生、そして一人ひとりのペースに合わせてくれることが必要なのだけど。私の場合、特に文法に関してはどこに行っても最初からずっと退屈な一方で、しゃべることはどうしても積極的にできないから、伸ばしたいポイントがぜんぜん伸びず、すでに理解できていることの復習ばかりで時間が過ぎていっているという感覚が未だに強い。現に、この3カ月担任だった先生からも「あなたはもう知りすぎている」と言われたし。だからそうやって考えていくと、この答えはもうずいぶん前から出ているのだけど、1対1のプライベートレッスンしかない。

この前学期はグループ発表も2つやったのだけど、それもきつかった。語学学校のグループ発表って何の意味があるんだろうか。結局、全体の構成を考えて主導できる人に負担がかかり(私はこの役になりがち)、あとの人は自分のパートをやるだけ。それも気の強い生徒が集まると、みんな自分の意見ばっかり主張してうまくまとまらずストレスがたまるし、実際、ケンカになりかけているグループもあった。個人的にはどちらのプレゼンもメンバーはよかったので今回はそのストレスはなかったけれど、本当にもう二度とやりたくない。でも、週1回しか来ない先生に対して生徒は25人もいるから、グループにせざるを得ないのだ。

そして何より、前にも書いたけれど、学校では普段のちょっとした会話、より日常生活に密着した単語や言い回しを習うことはできない。いくらフランス人が議論好きだといっても、例えば地球温暖化や女性の社会的地位なんかについて、そんなにいつもいつも授業と同じように語り合っていることはないはず。だから、いつ話題になるか分からないそれらの難しい単語や表現を覚えるよりは、普通に生活していてふと感じたことや気がついたことをもっとスムーズに言えるようになりたいと思うのだけど、それを叶えるにはもう、フランス人と一緒に暮らすしかない。マンツーマンレッスンならそういう部分もだいぶカバーできるとは思うけれど、それでも「話すための会話」ではやっぱり不十分。

もちろん、読み書きにしてもまだまだ目指すレベルにはほど遠いし、学ばなければいけないことはたくさんあるのだけど、学校という場所、特に大人数のクラスでこれ以上勉強しても、会話ができないという今の状況が変わることはない。最終的には、普段の生活の中でどれだけフランス語を使う機会をつくれるか。語学学校で学べることは限られている。
 

学食ランチ
学生デモの最中も学食はオープン

 
そんなことを考えている一方で、最近はフランス語にうんざりしてきて、日本のドラマばかり見て過ごす日々。100%理解できるって、なんてストレスフリーなの!今、気軽に連絡を取れるパリ在住の日本人もついに1人になってしまい、日本語の会話に飢えている。彼女とは年齢も近く、かなり深い話もできるようになってきたのだけど、まもなく帰国することを決めたそうで、その知らせを聞いたときは自分で思っていたよりもショックだった。

留学したら日本人は避けるという人もいるかもしれないけれど、私はそれはしんどいと分かっていたから、どちらかというと最初から積極的に日本人を求めていた。でも、仲良くなってもみんな短期か、長期でも先に帰ってしまうので、さすがになかなかつらい。ソルボンヌ・ヌーヴェルは中国人と韓国人の生徒はすごく多いけれど、日本人は本当に少なく、校内でも学食でもめったに見かけない。キャンパス中、どこへ行っても日本語が聞こえてきたパリカトとはかなり違い、やっぱり心細くなる。

後期は生徒の入れ替わりもあるし、多少は雰囲気が変わるだろうとはいえ、引き続き同じ語学コースDULFの同じ時間帯だから、そこまで大きな変化がないことは分かっている。しかも、5人いた前期の先生のうち4人がそのまま引き継ぐとのことで、これには本当にがっかりした。授業が面白くない最大の原因はこの先生たちなのだ!年も改まるしせっかくこうしてパリにいるのに、つまらないと思いながら週16時間も過ごすのはもったいない。せめて日本人の、できれば社会人経験のある生徒が同じクラスに入ってきてくれることが来年の一番の願いかも。

 

イルミネーション
例年通り控えめなイルミネーション

 

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12件のコメント

  1. こんばんは。
    1年程前からパリでフランス語を学んでいる長い社会人経験のある日本人女性です。
    時々読ませていただいています。よかったら交流しましょう。

    1. こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
      パリに日本人はたくさんいるはずなんですが、なかなか気の合う人に出会うのが難しいのはどこでも同じですね……。
      ぜひまたメッセージいただけるとうれしいです。

  2. はじめまして。
    フランスの映画館について検索したところ、こちらのブログに出会いました。
    私もアラフォーでフランス語学校に行ったので、ブログを読んでいろいろ思い出しました。
    郊外での滞在許可証の更新のこととか。 私も似たような経験をしました。。。
    フランス語学校の限界、ありますよね。自分の求めるものと学校があっているか、先生の質、クラスの雰囲気など、私もいろいろ悩みましたが、その頃バイト先でフランス人と一緒にはたらき、留学生でないフランス人のフランス語を聞く機会が増え、またフランス語の勉強が楽しくなってきました^^
    これからもブログの更新、楽しみにしています!

    1. はじめまして。メッセージありがとうございます。
      そうなんですね!同じような経験をなさっている方から共感いただけてうれしいです。
      特に日本人は悩むポイントもきっと似ているんでしょうね。
      私も日常生活でフランス人と接する機会を持たなければと思ってはいるのですが……。
      その方がはるかに練習になるのは確かなので。
      今もフランスにいらっしゃるんでしょうか?
      映画館だけは他の人より詳しい自信があるので、よかったら参考にしてみてください。

      1. 返信のメッセージありがとうございます!
        映画館情報、これからもぜひお願いします^^
        今もフランスに住んでいますがフランス語学校には行っていないので、フランス語をもっと聞くために映画館に通ってみようかなと思っています。日本にいた頃は映画が好きで、特にヨーロッパの映画を観に行っていました。
        フランスに住んでるのに、なかなかフランス人と接する機会ってないですよね。でも語学学校でしっかり文法を学ばれた方のフランス語はやはりミスが少なくていいなと感じますし、日常の中でのフランス人との会話もきっとこれから増えていくと思います!

        1. ヨーロッパ映画、お好きなんですね。ぜひ映画館通い始めてください!
          パリは本当にプログラムが多くて、これだけで日本に帰りたくなくなります(笑)
          言葉はやっぱり使わないとだめですね。
          現地にいてもこれだけ難しいとなると、日本でフランス人の友だちを見つける方が早いかもと思ってしまいます……。
          またよろしければぜひメッセージくださいね!

  3. はじめまして。
    現在フランスの地方に留学していて、次の語学学校などについて調べていたらこちらのサイトに出会いました。パリの様子や住宅事情、映画館まで書いてあってとても参考にしています!
    私も社会人経験して留学していますがレベルまだまだなので、いつもフランスのシステムに戸惑ってばかりです。

    1. こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
      語学学校選びも、フランスのシステムも、本当にやっかいですよね。
      地方からパリに来られるのでしょうか?パリはいろいろと特殊だと思うので、ぜひ楽しんでください。
      こちらこそ、同じ社会人経験がある方からメッセージいただきうれしいです。
      よろしければ、またのぞきにきてくださいね。

      1. 返信いただきありがとうございます。
        地方にいるとのんびりした空気はありますがやはりフランスはフランスですね。CAF 手続きなどで適当さを感じます…
        パリおっしゃる通り特殊なので今度行ってみようと思っています。雰囲気などを感じたいですね。
        またお勧めされていたお店も素敵でしたので探してみます。

        1. フランスはどこにいてもフランスですよね、困ったことに(笑)
          本当に日本のようにはいかないです。
          パリはたくさんお店があるので、ぜひいろいろ見てみてください。
          私はぜんぜん知らないので、いいお店があれば逆に教えてくださいね!

  4. 月曜日から同じ学校に通っております。人数が多いかなという印象ですがどうなるかしら。

    1. そうなんですね!後期の入学試験を受けられたんでしょうか?
      人数、やっぱりどこのクラスも多いですよね……。
      また感想送ってください。そのうち偶然お会いするかもしれませんね!

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