前回はパリでの部屋の探し方について書いたので、今度は契約の話。その前に、あらためて部屋探しでこだわったポイントを挙げるとこんなかんじ。
●トイレが部屋の中にあること
これは前回書いた通り。いちいち部屋の外に出ていくのはやっぱり面倒。
●セーヌ左岸であること
5・6・7・13・14・15区。ただし12・16区も許容範囲。
●家賃が今とあまり変わらないこと
●アロカ(アロカシオン=住宅補助)が申請できること
学生なら外国人でも受給できる住宅手当。今ももらっているのだけど、引き続きもらいたい。狭すぎる部屋だと対象にならないし、大家さんが貸し部屋として届けていないと(つまり闇貸し)申請不可。これについてはちょっとややこしくて、部屋を貸す場合は大家さんが税金だか保険金だかを払わないといけないらしく、これを避けるため契約書を交わさずに貸している場合も多いそう。こういう物件は、広告に「アロカ不可」と出ているからすぐに分かる。本来、ちゃんとした部屋ならアロカは必ず申請できるはずだから、不可というのは明らかにおかしいのだけど、日系不動産屋が扱っている物件でもこのアロカ不可がけっこうある。何かあったときに恐いし、そもそも違法のはずだから、こういう物件は避けるようにした。
これらは最低限の条件だったのだけど、結果的に新しい部屋は全部満たしている。それに加えて、前回も書いたように中央暖房であることと景色がパリらしいことも気に入った。郊外にある今の部屋から見える景色は最悪で、倉庫みたいな古くて茶色い建物が目の前にあって気が滅入るし、交通量の多い道路に面した2階だから騒音もひどく、これらを何とかしたいと思っていたのだ。でもその代わり、フリーwifiがなくなり、必ず郵便物を受け取ってくれる管理事務所もなくなる。やっぱりすべての条件がそろう部屋というのはなかなかない。

契約に必要だったのは以下の書類。
●パスポート
●滞在許可証
これは有効期限が迫っているから、更新手続きのための予約票も添付。
●前年度の学生証と次年度の学校登録証
大家さんはこの部屋を学生専用に貸しているらしく、これらも必要だった。
●保証金
家賃2カ月分。退去時に何もなければ返ってくる。
●住宅保険加入証明書
フランスでは部屋を借りる際に、必ず住宅保険に入らなければいけない。実は今住んでいる部屋の保険がどうなっているのか知らなかったのだけど、おそらく家賃に含まれていて、個人で加入する必要はなかった。日本人向けの代理店もあり、加入自体はそんなに難しくないのだけど、銀行でも扱っていると聞いたので、住所変更するついでもあってこちらで口座を持っているケスデパーニュ銀行に依頼。銀行に用事がある場合は予約しないといけないので、また待たされた上にサインしに行かなければいけないのかと思っていたら、すべてオンラインで完了。今はネット上でサインもできるし、本当に便利だ。ただ1カ月約20ユーロと、思っていたよりかなり高い。探せばもっと安いのがあったはずだけど、まあ担当の日本人女性はすごくしっかりしていて信用できる人だし、間違いないか。
これに加えて、本来なら前回ちらっと書いた保証人が必要。この保証人というのは、学生であればたぶん親でいいけれど、親が外国に住んでいる場合は認めてもらえないことが多いらしい。つまりフランス在住の保証人を立てなければいけないのだけど、その保証人はフランスで働いていて、いざとなったら代わりに家賃を払えるぐらいの収入を得ている必要がある。そのために給与明細なども提出してもらわなければいけないから、普通は留学生がそんな人を知っているわけがないのだ。保証人を立てられない場合、銀行に大金を預け、担保として金融商品を購入するなどの方法があるらしいものの、現実的じゃない。だから外国人がフランスで部屋を借りるのはハードルが高いのだけど、日系の不動産屋や日本人の大家さんは保証人なんて求めないので、結局は割高でも日本人向けの物件を探すしかない。需要も絶対なくならないし、いい商売だ。
ちなみに、フランスで働いている場合、給料に対して家賃が高すぎる部屋は借りることができない。収入に対する家賃の割合が法律で決められているらしく、どんなに気に入ってもその家賃に見合う稼ぎがないと住むことはできないのだ。私は日本でURの物件に住んでいたからこれと同じ条件があったのだけど、フランス人であってもフランスでの部屋探しはなかなか大変そう。
契約時には大家さんが内容を読み上げて、サインとは別に契約書のすべてのページに貸主と借主双方がイニシャルを書く。その後、部屋の中で壊れていたり壁が剥がれていたりする箇所などを一緒に確認し、全部終わったら鍵渡し。終わるまでに1時間ぐらいかかった。フランス人の大家さんが言っていることは6割ぐらいしか分からなかったけれど、契約書の内容はそんなに難しくなく、何について書かれてあるのかは理解できた。やっぱりこういうことはちゃんと把握しておかなくては。
今まで内覧した部屋は、その後すぐに入居を求める大家さんも多かったけれど、この大家さんは入居者を私に決めたと8月頭に連絡してきた後、すぐにバカンスに行ってしまったので、引っ越しまでに余裕があり家賃も今の部屋と合わせて二重に払わずに済んだ。いかにもフランス人らしいけど、歴代日本人に貸しているだけあって、なかなかきっちりしている。せっかくパリに住むのだから、フランス人が大家さんっていうのもいい経験かも。
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