パリの中の日本

日本から遠く離れたここパリでも、街を歩いていると見慣れた店に出会うことができる。まずは、すっかりグローバル企業に成長したユニクロ。観光客の多いオペラ座近くのショップはオープンが7年前というから、もうパリっ子にはおなじみになっているはずだけど、平日の昼間でもすごい数の人。駅でも広告を見かける。置いてあるものは日本と同じでディスプレイも特に変わらないけれど、やっぱりベーシックな形とリーズナブルな価格、高い品質はパリでも評価されているみたい。ここ以外にもパリにいくつか店舗があるらしく、特に前に歩いてみた3区のマレ地区にあるショップは、店自体がモダンでファッショナブルと評判だからまたいってみよう。

 
それから日本のスタンダード、無印。15年以上前にパリに来たときにはすでにあったから、もはや街にとけ込んでいるといってもいいぐらいかも。この無印もパリに何店舗かあるようで、たまたま見つけたのは1区のショッピングセンター、フォーラム・デ・アールにあるショップ。入ってみて思い出した。モノプリではいくら探しても見つからなかった微妙なサイズのボックスがいくらでもある。そうだった、日本はこういうアイデア商品が簡単に手に入る国だったんだ。本当に日本人のきめ細かさって素晴らしい。ちょうど足元をあたためるグッズを探していたところだったので、たまたま見つけた部屋用のムートンブーツを購入。こういう、消費者のニーズにピンポイントで応えてくれる商品、フランスにはなかなかない。値段は日本と同じぐらいで、このときはラッキーなことに10%オフだった。パリでは東京より2週間ぐらい早く雪が舞い、今週はついに最低気温がマイナスになったから、かなり活躍してくれそう。

 
そして1区にあるのは、大阪で一番よく通っていた本屋、ジュンク堂。思っていたより品ぞろえは豊富で、雑誌や文庫、フランス語の参考書はもちろん、フランス人向けの日本語練習帳や日本文化に関する書籍もけっこうある。地下のマンガコーナーはフランスの子供たちでにぎわっていて、相変わらず人気は高いよう。

フランスに住んでいる間、我慢しなければいけないことはいろいろあるけれど、何といっても本が読めないのが一番つらい。新聞もないし、ちゃんと読む日本語といえばニュースサイトぐらい。日本では本屋にいく度に2時間はうろうろしていたのに、パリの本屋はあまりおもしろくない。もちろん、本屋好きにとってはその空間自体が特別なものだし、美術書や写真集みたいにビジュアルだけで楽しめるものもあるけれど、読めないということがこんなにも本の魅力を失わせるとは予想外だった。本はその形や大きさ、手ざわりも含めてすべて本、電子書籍にはない紙の本のよさをじっくり味わえるのが本屋のはずなのに、やっぱり理解できる内容を伴っていないとそのよさが十分に感じられないのだ。

だから本を選ぶ楽しみがなくなった今、ジュンク堂で日本の本に囲まれたとき、久しぶりにわくわくした。特に文庫の新刊は気になるものがたくさんあって、いつも通り4、5冊まとめ買いしてしまいそうになったけれど、なんとか我慢。だって値段は日本のほぼ倍だ。それに帰国するとき持って帰れない。こっちでしか買えないものなら高くても仕方ないけれど、むしろ日本で買った方が安いのだから、どう考えてももったいない。以前はこのジュンク堂の近くにブックオフもあったのに、去年いっぱいで閉店してしまったとのこと。留学中はなるべく日本語には触れないという人もいるみたいだけど、私の場合、これからの人生を考えたら、フランス語を身につけるよりは日本語能力を高めることの方がはるかに重要……なのに、心を残したまま、何も買わずに店を出た。

文庫

 
ユニクロ、無印は分かるとしても、日本語の本がほとんどのジュンク堂でさえフランス人であふれているのには驚いた。パリには日本人もたくさん住んでいるから元々、需要も多いんだろうけど、現地の人にもこれだけ受け入れられているのだ。日本人の技術と感性が、パリに住む人たちの心を動かしている。

 

クロネコヤマト店舗
ジュンク堂の近くにはクロネコヤマトの店舗も

 

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