冠詞を使いこなす

パリは相変わらず天気が悪い。寒いのはまあ仕方ないとして、こう毎日毎日どんよりした空が続いてばかりだと気分も沈む。去年はそこまで日差しの少なさを感じなかったように思うけれど、今は本当に太陽が恋しい。夜明けが遅いのも憂鬱で、朝8時でもまだ真っ暗だし、学校に向かう途中8時半ごろに朝焼けが見えたりする。冬至が過ぎたから少しはましになっていくだろうけど、なんとかこの暗い季節を乗り切らなければ。
 

花屋
学校近くのおしゃれな花屋さん

 
さて、フランスで勉強を始めて1年以上経つけれど、未だになかなか使いこなせないものの一つが冠詞。これはどれだけフランス語に慣れても、外国人にはものすごく難しい。と思っていたら、今週の授業でたまたまこの冠詞をやったので、あらためて復習。

冠詞というのは、英語でいうと「a/an」「the」に当たるもの。フランス語の冠詞には、不定冠詞・部分冠詞・定冠詞の3種類がある。

●不定冠詞:数えられる名詞の前に付く。英語の「a/an」に近い。
男性形単数:un
女性形単数:une
複数形:des

●部分冠詞:数えられない名詞の前に付く。英語の「somme」に近い。
男性形:du(後ろにくる名詞によっては「de l’」)
女性形:de la(後ろにくる名詞によっては「de l’」)

●定冠詞:特定の名詞を表す場合や、一般的・抽象的にその名詞全体を示す場合に使用。英語の「the」に相当。
男性形単数:le(後ろにくる名詞によっては「l’」)
女性形単数:la(後ろにくる名詞によっては「l’」)
複数形:les

これだけでもかなり複雑で、正しく使うのは本当に困難。英語についてはそこまで冠詞の使い分けを難しいと感じた記憶はないのだけど、フランス語はこれを間違えるとまったく意味が変わってしまうぐらい厳密で重要なのだ。例えば、

・Je bois un café.  私はコーヒーを1杯飲みます。
・Je bois du café.  私はコーヒーをいくらか飲みます。
・Je bois le café.   私はそのコーヒーを飲みます。

という具合。café=コーヒーは男性形で数えられない名詞(「●杯」という場合にはカウント可能)だから、まずはこれを頭に置いて当てはまる冠詞を選び、その中から文脈に応じて正しいものを使わなければいけない。ただし否定形にする場合には、文脈にもよるけれど

・Je ne bois pas de café.

と、また新たな冠詞「de」を使う必要がある。

 
数えられる女性名詞 pomme(りんご)なら、

・Je mange une pomme.   私はりんごを1つ食べます。
・Je mange des pommes.   私はりんごをいくつか食べます。
・Je mange la pomme.  私はそのりんごを食べます。

となる。これも否定形にするには

・Je ne mange pas de pomme.

と、基本的には「de」を使わなければいけない。

 
ここまででも相当混乱するけれど、この冠詞が他の単語と結び付いて別の新たな形になる場合もあるからさらにややこしい。これも例を挙げてみると

・Je vais au Japon.  私は日本へ行きます。

「Japon=日本」は男性形の固有名詞なので、本来は

・Je vais à le Japon.

となるはずなのだけど、その前にある前置詞「à=~へ」と「le」がくっついて「au」という別の単語になる。

・Je vais aux États-Unis.   私はアメリカへ行きます。

の場合も、本来は「les États-Unis」なのが、「à」と「les」が合体して「aux」に変わる。

 
細かいルールもやっかい。数えられる名詞の複数形に付く冠詞は「des」だから、

un homme 1人の男性 → ・des hommes 複数の男性

が本来の形なのだけど、これに形容詞が付くと

un bel homme 1人の素敵な男性 → ・de bels hommes 複数の素敵な男性

と、なぜか「de」に変えなければいけないのだ。

 罫線

 
まあこの冠詞だけでどこまでも語れそうなぐらい、本当に難解。フランス語は特殊な場合を除いてすべての名詞に冠詞を付ける必要があるので、男性形なのか女性形なのか、単数なのか複数なのか、数えられるのか数えられないのか、特定のものなのかそうでないのか、いろいろなことを考えて正しい一つを見つけなければいけない。書くときはまだましなのだけど、これを話しながら瞬時に判断するのは至難の業。名詞が出てこない文章というのはほぼないし、「躊躇」「妄想」といった抽象的なものにも男女の区別があるから、たとえ短い文章でも100%正しく話すのは相当難しいのだ。こういう部分が、英語との違いを感じるところ。

実は、日本で勉強していたころは冠詞にこんなに厳密なルールがあるなんて知らなくて、適当に使っていた。あるいは、むしろ使っていなかった。もちろん文法書には一通りの説明は書いてあるのだけど、これほど重要なものだとは認識しておらず、こっちに来て最初に通ったパリカト(パリ・カトリック学院)の授業、ちょうど1年ほど前の授業で初めて使い分けを習ったのだった。きっとすべての生徒が苦手とするポイントだから、これを克服するための課題があるんだろうけど、日本ではこれだけ抜き出して学んだことはなかったので衝撃。それ以来、なんて複雑なんだろうとずっと感じている。

ただ、日本にいたときはそれこそ冠詞なんて使わずに書いたりしゃべったりしていたのが、今ではとりあえず何かは付けることができるようになった。今の学校に通い始めてしばらく経ったころ、ある週の授業で先生が「このクラスの大半の人は冠詞抜きでしゃべっている」と言っていたから、やっぱりみんな同じなんだなと実感。それでもフランス人には通じるのだけど、彼らにとって冠詞がないというのはすごく気持ち悪いようで、たとえ間違っていても何か付けるように意識しなさいということだった。日本語でいうと「てにをは」がないような感じなんだろうか。まったく、知れば知るほど奥が深い言語で、なかなか前に進んでいる気がしない。冠詞がスラスラ出てくるようになる日はまだ遠そう・・・。

 

天気予報
天気予報もクリスマス仕様に

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください