春学期が終了

先週で春学期が終わり、必死で授業についていく毎日からいったん解放された。本当に、勉強不足と努力不足と実力不足を感じた3カ月だった。一応、次のレベルであるB1-2に上がることはできたけれど、今学期が始まったときと比べて上達した気はぜんぜんしない。去年、初めてこのパリカト(パリ・カトリック学院)の授業に出たとき、同じクラスでの生徒たちのレベルの違いに驚いたけど、今は納得。こうやってほぼ自動的にみんな上のクラスにいけるのであれば、レベルにばらつきが出てくるのは仕方がない。今でも十分差があるのに、それをそのまま持ち越すのだから。できない人がその差を縮めていくには、やっぱり努力するしかないのだ。

勉強の仕方についても考えさせられた学期だった。まず、授業中は2カ国語の辞書、つまり日本人であれば日仏辞書は禁止で、使えるのは仏仏辞書のみ。ただ、これは個人的にあまり有効だとは思わない。十分な語彙があるならいいけれど、少なくとも今の私のレベルではまだ、調べてもその説明の中にある単語がまた分からないし、答えにたどりつくまでの時間を考えるとかなり非効率。それに、フランス語でなんとなく分かったとしても、結局は日本語で正確な意味を調べ直さないといけない。それから、やっぱりできれば日本語訳のあるもので勉強したい。これはだめだと言われるけれど、外国語というのはどうしても、単語が全部分かったところで意味のつかめない文章というのがある。だから、それがどういうニュアンスになるのか分からなければ、何度やったところであまり効果はない。あと個人的にしんどかったのが、フランス語の文法用語。日本の文法書だと「関係代名詞」「命令形」「間接話法」というように全部日本語で書いてあるけれど、こっちで習う場合には当然、そういうのも全部フランス語。なので、最初からフランスで勉強した生徒たちはこれらを普通に知っているのだけど、ずっと日本でやっていた私にとっては盲点だった。実際しゃべるようになればこういう用語は必要ないけれど、日本の参考書には小さくても「関係代名詞(pronom relatif)」みたいに書いておくべきなんじゃないだろうか。

よく言われることではあるけれど、言葉というのは手段であって目的ではない。それを今、フランスで勉強するようになって実感している。というのも、学んでいるのはフランス語だけれど、その中身は社会的なことであったり政治的なことであったり芸術であったり。よく出てくるのは、世界共通の話題としてSNSの発達やリサイクル、スローライフ、ちょうど大統領選があったから選挙の話も出たし、デュマ、ヴェルヌ、サン=テグジュペリなんかのフランス文学、それにもちろん映画も外せないテーマ。だからいくら言葉を覚えたとしても、これらについて何も知らなかったり、興味がなかったりすれば意味がない。そう考えると、年齢を重ねた今だからこそよかったと思う部分はある。たとえ何カ国語かを話せたとしても言葉に中身がない人よりは、母語しか知らなくても知識や教養や好きなことがある人の方が絶対に魅力的だ。

 洋書

 
映画の授業についても少し。今学期はたくさんの作品を見ることができた。授業が始まったころはフランス映画の歴史を社会情勢と合わせて学んでいくという内容だったから、この辺は言葉も難しくあんまりついていけなかったのだけど、後半は1回の授業で丸々1本の映画を見せてもらえた(ちなみに授業は3時間)。ジャン・コクトー『美女と野獣』、ジャン・ルノワール『素晴らしき放浪者』、ルイ・マル『さよなら子供たち』、ジャック・ロジエ『アデュー・フィリピーヌ』など、これまで見る機会がなかった作品に出会えたのもよかったし、フランソワ・トリュフォー『あこがれ』、ジャック・ドゥミ『ロシュフォールの恋人たち』、ミシェル・アザナヴィシウス『アーティスト』といった2回目以降のものも、やっぱりいいなあと再認識。フランス語を習うというよりは、今のレベルのフランス語で文化を学ぶというのも面白い体験だったし、もちろん内容もすごく興味深かった。

 罫線

 
パリカトでは6月、7月、8月と夏期講習があり、1カ月単位で受けることができる。これに参加する人は同じクラスではほとんどいなかったのだけど、私は7月と8月の分をすでに日本から申し込んでいたので、B1-2のクラスを登録。授業の最初の日は夏期講習のためだけのレベル分けテストがあるのだけど、パリカトの生徒であればこれを受ける必要はない。B1-2の授業についていけるかはかなり不安だけど、結局、難しいかどうかは先生によるということが分かったので、いったんこれでやってみることにした。2カ月とはいえ、バカンスを除けば一学期が実質3カ月であることを考えると、けっこうなボリュームだ。

さて、最後の日は先生も含めてみんなで打ち上げパーティー。一時帰国する人、完全帰国する人、勉強を続ける人などさまざまだけど、やっぱり若い人は何かやりたいことがあって、その前に語学学校に通っている人が多い。こっちは9月から新年度だから、新しく芸術系の学校に行く人も多いし、大学院に行く人もいる。20代前半の韓国人の女の子は、もう韓国には帰らないつもりと言っていた。今は学生ビザで滞在しているようだから、実際に永住するのはなかなか難しいと思うけれど、そういう意思を持って来ている人もいる。ある程度、人生経験を積んでから留学するのはいい面もあるけれど、やっぱりこんな風に、人生を丸ごと変えるという決断がしにくいという意味では、若いころに来た方が可能性は大きいんだろうな。まあでも、自分の歩んできた道に後悔はない。これからも人生はつづくし、フランス語の勉強もつづく。

 

パーティー
ちなみにアルコールの持ち込みは禁止

 

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