パリの映画館めぐり⑩

忙しくてなかなか更新できないうちにすっかり時間が経ち、大騒動だった長期間のストがようやく落ち着いたと思ったら、今度はウイルスによる新たな脅威がやって来た。ただ、同時に自分の時間が少し増えたのも確かなので、ここであえて映画館めぐりを再開してみる。

だいぶ前から行ってみたいと思っていた2区の「グラン・レックス」。1932年にオープンしたという映画館で、映画の上映以外にもコンサートなどをやっているよう。何かと名前を聞くことが多かったから気になりながらも、あまり行かない場所にあるため未知のままだったこの映画館に去年の秋、やっと入る機会が訪れた。
 

グラン・レックス外観

ホームページ https://www.legrandrex.com/mobile/index.php

 
よく行く小さな名画座とは違い、堂々たる外観。おそるおそる中に入ってみてびっくり。映画館というより、劇場またはホールといった方がふさわしいゴージャスな内装。本当にここで映画をやっているのか不安になり、チケット売り場で一瞬、ためらったほど。
 

 
エスカレーターで上がっていくとフロアごとに趣きが異なり、よく見るとなかなか凝っている。上映室への暗い入り口の向こうには『千と千尋の神隠し』のように摩訶不思議な世界が潜んでいるような気がして、好奇心からつい足を踏み入れてしまいそうに。チケットに記された上映室にたどり着くまでにだいぶ寄り道してしまった。
 

 
いよいよ指定された上映室にたどり着くと、またサプライズ。広い!こんなに客席数の多い映画館って、最新のシネコンでもなかなかないんじゃないだろうか。よっぽどの大作でない限り客席が埋まることはなさそう。確かに、コンサート会場になるというのもうなずける。インテリアがまた特徴的。安っぽいのだけど、アラビアンナイトを思わせるエキゾチックな雰囲気で、芸術でもありエンターテインメントでもある映画に向けてのワクワク感を高めるにはぴったり。
 

 
ここまでですっかり興奮していたのだけど、上映が始まるとまた意表を突く仕掛けが。てっきり、前方のカーテン部分にスクリーンが現れるのだと思っていたら、実は手前の上方にある黒い長方形の物体がそうで、これがゆっくりと下りてきて大画面になったのだった。想像していたより近く、私と同じことを考えて前の方に座っていた人たちは、間近に迫る映像に苦笑い。

ちなみに、上映室は他にもいくつかあり、これはもちろん一番大きな部屋。このとき見たのは『ターミネーター』の最新作『ニューフェイト』で、まさに内容にふさわしい大迫力。公開されたばかりだったからこの上映室でやっていたらしく、値段も他の作品より少し高いようだった。こういうとき、系列映画館すべてで使えるUGCカードはとてもうまい具合に機能する。
 

罫線

 
当然のことながら映画館通いは続けているのだけど、例のコロナの影響で先週末からフランスに激震が走っている。保育園から大学まですべての学校閉鎖に続き、なんとレストランやカフェ、劇場、映画館までが営業中止になってしまった。それだけにとどまらず、ついに最低2週間の外出制限。ほぼ食料品買い出し以外の目的では外へ出られないという信じられない事態に。中国や韓国や日本が大騒ぎしていたころ、フランスでは報道もそれほど大きくなく、私自身も半分、他人事のように記事を読んでいたのだけど、日本よりはるかに大変なことになってしまった。きっと多くのフランス人にとっても青天の霹靂、まさに映画のような展開。おかげでスクリーンを眺めているはずの時間をこのブログ更新に充てることができているのだけど……。

いろいろな人が心配してくれるから書いておくと、日本で話題になっているようなアジア人差別は個人的にはまったく体験していないし、そんな場面も見たことない。だからそういう意味では何も困ってはいないのだけど、とにかくこの軟禁状態から一刻も早く解放されたい。まだまだ知らない映画館がたくさんあるし、UGCカードはすでに1年分の会費を払い済みだから、映画館閉鎖の解除を含め一日も早く街が元通りになることを祈るばかり。

 

デモ
デモ・スト真っ最中のころのパリ

 

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