フランス語で診察を受ける②

右膝の痛みでリハビリを指示され、指定の病院に予約を取りに行ったところ夏休み中で無駄足に終わった翌日。朝起きると世界が回っている。バランスが取れず、歩くどころか起き上がることさえできない。最初はわけがわからず戸惑っていたのだけど、もしかしてこれがめまいというやつなのかも。それにしても、つらい。見えているものは全部回転しているから目を閉じているしかなく、それでも回っているだけあって吐き気もする。数時間おきにふらふらになりながらトイレに行くほかは、ずっとベッドに寝ていることしかできない。

2日半そんな状態で何も食べずに過ごし、3日目の夜にようやく果物を少し口にできるようになった。ちょうど買い出しに行った後だったのが不幸中の幸い。その後もほぼベッドの上で過ごし、6日目には学費の支払いのため学校に行かねばならず外に出たのだけど、見事に足元がふらつき、徒歩10分足らずの道のりがすごく怖かった。めまいがこんなに大変なものだったとは。

横になって過ごしている間にめまいについてかなり調べ、その原因の多くは耳だということが分かった。確かに、4日目ぐらいから左耳にエコーがかかっているのを自覚。高い音が二重に聞こえ、しかも音楽だと右と左で音階が違って不協和音になっていることがあり、非常に不快。耳の病気の場合、一刻も早く治療しなければ難聴になる可能性が高いということで、動けるようになるとすぐにアメホス(アメリカンホスピタル)の耳鼻咽喉科に予約。今回は日本人医師を通さず、直接診てもらいたい。幸い、電話した次の日に空きがあり、迷わずそこに入れてもらった。ちなみに、予約自体は日本人セクションに連絡すればどの科でもできるので便利。
 

アメホスへの道
アメホスへ向かう閑静な通り

 
耳鼻科は日本の海外旅行保険証が有効で、キャッシュレスで診察を受けられた。ここも例によって対応は丁寧で、受付を済ませた後、通訳が必要かどうか尋ねられる。頼めるのならぜひともと思いお願いしたのだけど、名前を呼ばれてもそれらしき人は来ないまま、結局、自分で診察を受けることに。でも、この先生も見た目からしてかなりのベテランで、すごくやさしい。めまいが起こり、エコーがあるという説明だけで十分だった。

いくつか検査をして、聴力にも特に問題はなかったのだけど、またしてもMRI検査を受けることになってしまった。まあこの場合、仕方ない。耳はもちろん、脳に異常がある可能性もゼロではないのだから。ただ、検査のことは先生から直接言われたのではなく、最後に受付で初めて聞いたから一瞬、何のことかわからず、もう診察が終わっているにもかかわらずここで通訳の人が来てくれた。看護師の制服を着た女性で、日本人ではないようだったけれどもちろん日本語堪能、そしてとても親しみやすい雰囲気。その後のやり取りはフランス語でできたからあまり来てもらった意味はなかったのだけど、これは確かに心強い。
 

罫線

 
検査日までは2週間あり、それまでは処方された薬で治療。薬局で処方箋を出すと、次々に箱が出てきて驚いた。全部飲み薬ではなく、鼻洗浄用のスプレーも(なぜか2種類)入っているのだけど、それにしてもすごい量。
 

薬

 
薬の効果なのか自然治癒なのか、めまい自体はそれから徐々によくなってきた。でも、鉛が入っているように頭がものすごく重く、耳にエコーもかかったままで、とにかくしんどい。午前中はまだいいのだけど、午後からは横になって過ごす日も多かった。にもかかわらず、この間に滞在許可証更新のため這ってでも警察署に行かなければならなかったり、学校が始まったりといろいろあって、不安な状態のままやっと検査の日を迎える。

MRI検査自体はおそらく人生で5回目、ほぼ1カ月前にも膝を撮ってもらったばかりなのだけど、今回は初めて造影剤という、より鮮明に映すための検査薬が必要だった。なんとこれを自分で薬局に行って入手し、当日持って行くというシステム。事前に腕に注射され、検査途中にその造影剤を入れられて、無事に終了。アメホスでMRI検査を受けると、直後に医者が簡単に結果を説明してくれる。この医者は診察をする医者とはまた別で、たぶん検査室に常駐しているのだと思うけれど、複数人いるらしく毎回違う人。この日も検査だけで、診察自体はまた別に行かなければならなかったものの、検査後にやさしそうな男性医師がやって来た。結果はなんと、異常なし。
 

罫線

 
今回、こんなことになって耳の病気についてかなり詳しくなり、自分の中ではメニエール病という病気だろうなとほぼ確定していた。それを前提に治療のことや今後のことを考えていたから、この結果には逆にびっくり。もちろん、何もなかったことはよかったし、だからこそこうやってブログにも書けるのだけど、じゃあこのめまいとエコーは何なんだ。ただ、覚悟はできていたもののやっぱり不安だったようで、結果を聞いた途端、急に気持ちが軽くなったのも確か。

検査から1週間後、結果を持って耳鼻科を再訪し、念のためめまいの検査もしてもらったのだけど、回復しているから問題ないとのこと。原因はよくわからないけれど、まあこういうこともあるんだろう。一般的にはストレスが引き金になると言われているものの、日本にいるよりストレスは圧倒的に少ない。でも、何かちょっとしたことで思いもかけない不具合が発生する。人間の体って本当に繊細かつ精巧にできているのだ。たまに片頭痛を発症し、去年も1カ月続く頭痛があったことを考えると、きっと目には見えない何かが私の頭の中にはあるんだろうけれど。

気づけばめまいから1カ月、まだ頭は重いのだけど、確かにエコーはだいぶましになっている。異常がないということは、時間がかかってもそのうち回復すると思っていいんだろうか。我ながら、つくづく強運だなと感じる。でも、もし病気だったとしても、ここで見つかるのなら逆によかった。来る前に分かっていたら、外国で暮らすなんてできなかっただろうから。やりたいことはできる間にやっておかなければ。人生、何があるか分からない。
 

罫線

 
右膝の痛みも治まっているし、これで8月頭から続いていた病院通いがやっと終わりそう……と言いたいところなのだけど、実はまた別の症状が出始めている。左側の腰が痛い。これは膝を診てもらっている間に気になり始めたので一度、8月半ばごろに日本人の先生の診察を受けに行った。そのときはいったん痛み止めを処方してもらい、あまりよくならないのでもう一度行こうかと考えていたところ、めまいに襲われ、どうもそちらに気を取られている間に悪化してきたよう。10年ぐらい前にヘルニアをやっているからそれがまた暴れだしたのかもしれず、とりあえずはそのときと同様に体操して様子を見ているのだけど、これでよくならなければまたフランス語で診察を受けることになるのかも。まあ、意外になんとかなるもんだなというのが分かったのは収穫と言えないこともないけれど……。

 
 
本日、すべての記事のシェアデータが消えてしまいました。シェアしてくださっていた方々、申し訳ありません。
気に入った記事があればまたボタンを押していただけるとうれしいです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください