パリ大学付属語学学校を受験する③

5月の仮登録から猛暑の夏を挟んで3カ月半、ソルボンヌ・ヌーヴェルことパリ第3大学の語学学校に入るためのテストが9月頭にあった。いよいよこれで、この新学期から通う学校が決まる。それにしても、なんてロースピードなシステムなんだろうか。

新しく引っ越した部屋からソルボンヌ・ヌーヴェル大学までは徒歩7分。メトロの駅から向かう道ではなく、人通りの少ない裏通りを通って学校へ。近いって楽。
 

裏通り

 
会場はいかにも大学らしい階段教室。まず、出願者全員に振り分けられた番号を部屋の前の貼り紙で確認。この日は、大学の新入生たちも説明会のために来ていたようで、狭いスペースに人がいっぱい。こういう光景、まさにフランス。
 

会場前の光景

 
最初に全体説明があり、すべてのレベルを含めて170人しか入学できないことが判明。でも、ざっと見て300人ぐらいはいたから、半分近くの人が落ちる計算になる。語学学校に入るので、もちろんテストの点数は関係なく、重要なのは人数。自分と同じレベル(クラス)の生徒が多ければ不合格の可能性があるという、なんともよく分からない理不尽な仕組み。
 

階段教室

 
テストは作文3題、読解1題という変わった内容で1時間半。私のようにギリギリまで粘る人もいれば、早々にあきらめて暇そうにしている人もいて、レベルは様々。苦手の聞き取りはなく、自分でもできたなという印象だった。そして終了後、口頭試験の予約をする流れだったのだけど、これがまたアナログ。1人ずつ順番に名前を確認し、紙に手書きで日程を記入していくから、ものすごく時間がかかるのだ。待っている間にテストの続きをやる人も多く、なんとも適当なかんじ。なんでテスト中に要領よく紙を配っておけないんだろうか。そうやって30分近く待ち、翌日に割り当てられた口頭試験は、試験というより型通りの質問に答えるだけのもので、特に何の手応えもなし。

待つこと2日、いよいよメールで結果が来た!でも読んでみると、意外な内容。採点の結果B2レベルだったので、受験したのとは別のコースにしてはどうかと書いてある。そう、ここで初めてちゃんと調べたのだけど、ソルボンヌ・ヌーヴェルの外国人向けコースには以下の2つがある。
・Diplôme Universitaire de Langue Française(DULF)
・Diplôme Universitaire d’Etudes Françaises (DUEF)
語学学校というより、どちらも大学のコースになるのだけど、DULFは普通の語学コースで、私が受けたのはこっち。一方DUEFは、いずれ大学の学部に進みたい人のための準備コースらしく、B2以上が対象。

初め、B2からは自動的にDUEF(大学準備コース)になるのかと思ったのだけど、DULF(普通の語学コース)にもB2以上のクラスは存在する。2つのコースの違いがよく分からず、いろいろ調べてみたものの、そもそも日本人でソルボンヌ・ヌーヴェルに通っている、または通っていたという人がネット上にはほとんどいない。それでも少ない情報で検討し、ひとまずDULF(普通の語学コース)に変えてもらえないかメールで聞いてみた。すると、DUEF(大学準備コース)の説明会があるから、とにかくそれに出席してみて決めてはどうかと返ってきたので、入学が確定しないまま翌週、その説明会とやらに参加。

理解した範囲で整理すると、DULF(普通の語学コース)はクラスが決まっていて選択授業もなし、一方のDUEF(大学準備コース)は興味に応じて科目を選び、自由に時間割を組む。そしてDUEFの一番の特徴は、選択授業の割合がフランス語そのものの授業よりも多いこと。前に通っていたパリカト(パリ・カトリック学院)でも、歴史やメディアや映画などの選択科目があったけれど、そういう授業が大半になるイメージ。もちろん、講義はすべてフランス語。

説明会でのDUEF(大学準備コース)の印象は悪くなく、かなり迷った。これは、考えようによってはすごくいいコースだと思う。フランスでは、外国人でもB2レベルから一般大学への入学ができるのだけど、実際B2で入っても、ついていくのは相当しんどいはず。だから、外国人向けの大学のようなものがあればいいのにと前から思っていたのだ。それが、こんなところにあったとは。これから修士号や博士号を目指す若い留学生(すごく多い)にはもちろん、あらためて学び直したい社会人にとっても魅力がある。

ただ、最終的に
・DULF(普通の語学コース)よりも1クラスの人数が多く、授業ごとにメンバーが変わる
・個人的にあまり興味を引かれる選択授業がない(文学、造形芸術、人間科学など)
・そもそも、そこまでのレベルに達していない
などの理由から、いったんはDULF(普通の語学コース)にすることにした。DUEF(大学準備コース)の選択授業は、このソルボンヌ・ヌーヴェル大学の学部に沿った内容になっているのだけど、映画学科が充実しているのに映画の授業がないことが決め手だったかもしれない。いや、あるにはあるのだけど、1月から始まる後期のみ。前期にこれがあればDUEFにしていたかも。

この過程で、すでに合格通知をもらっているパリ・ナンテール(パリ第10)大学の時間割も何度も見直し、迷ったものの、週20時間あるナンテールはやっぱりきつい。20時間なんて、仕事をしていたときに比べれば楽勝だけど、学校に行っている時間だけがすべてじゃない。宿題も多いと予告されているし、家に帰っても勉強しなければいけないから、実際にはかなり大変。それに何より、せっかく近くに受け入れてくれる学校があるのに、それを蹴って遠くまで通うのももったいない気がして、ナンテールは選択肢から外した。
 

罫線

 
そんなわけで、あらためてソルボンヌ・ヌーヴェルに、DULF(普通の語学コース)への変更希望をメール。ここまでやり取りしていたのは事務局の人なのだけど、必ず当日内にきちんと返事をくれて好印象。この時期はやっぱり忙しいのか、毎日20時ごろに返信がきたのには驚き、さらに同情してしまった。フランスでも、やっぱり残業しなければいけないときはあるのか。

次の日、なんとDULF(普通の語学コース)の責任者だという先生から直接電話がかかってきた!B2には空きがないけれど、一つ下のB1なら最後の1席が残っているとのこと(それも不思議)。一瞬迷ったけれど、その場でその席を確保してもらうようお願いし、無事DULFの生徒として入学できることが決まった。それにしてもさすがは外国人コースの先生、今までに電話で話したどのフランス人のフランス語よりも分かりやすく、ほぼ100%理解できた。逆に言えば、普通のフランス人の話すスピードにはまだまだついていけない。

ただ、気になっているのはレベル。ずっと同じところをうろうろしているけれど、さすがにB1は卒業していると思うから、またここで足踏みか……というかんじ。電話で話した責任者の先生は「書くのはとてもよくできているけれど、会話が苦手ならB1でもいいんじゃない」と言っていたものの、おそらく30人近くいるクラスで会話の練習なんてできるわけない。でも、これは作戦なのだ。今までの例からいくと、1、2週間経てば、クラスを変更したいという生徒が必ず何人か出てくるはず。だから、とにかく籍を置くことが重要。これで、来年夏まで続く2018-2019年度のソルボンヌ・ヌーヴェル生としてのポジションは保証されるのだから。入ってしまえば、あとはどうにでもなる。それがフランスに来て学んだことの一つかも。
 

DUEF参考サイト:
Philo France「ソルボンヌ・ヌーヴェルのDUEF情報」
Sur la Route「パリ大学への道 その1」

 
パリ大学付属語学学校を受験する①はこちら
パリ大学付属語学学校を受験する②はこちら

 

学校内
教室から見える景色にも雰囲気が

 

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