2年目のソルボンヌ・ヌーヴェル

9月はフランスの新年度のスタート。長かった夏休みも終わり、また学校が始まった。前年度と同じく、ソルボンヌ・ヌーヴェル(パリ第3)大学に在籍している。ただし、コースはこれまでのDULFではなく、DUEFになった。

DULFとDUEFの違いは1年前、この学校を受験したときに書いたけれど、DULFは通常のフランス語コース、DUEFは外国人のための大学準備コース。なぜ変更したのかというと、今学期はDULF(通常の語学コース)に、該当するレベルのクラスがないから。前学期はDULFのB2クラスだったから次はC1なのだけど、9月から始まるDULFの前期には毎年C1クラスがない。というのも、C1は一番上なので、前期にこのクラスを設けてしまうと後期に進級するクラスがなくなってしまう、というのが学校側のよく分からない理屈。DULFもDUEFも1年コースなので前期と後期がセットになっているのだけど、DULF(通常の語学コース)の場合、後期用にそれぞれ前期の1つ上のレベルのクラスを用意しておかなければいけないらしい。同じ考え方で、DULFの後期は一番下のA1クラスがないとのこと。

でも、つまりそれは、前期にC1クラスに入るはずの生徒はDUEF(大学準備コース)に登録するしかないという理不尽なことになる。だから、他に選択肢もないまま自動的にDUEFになったのだけど、前年度からの在校生で成績もよかったから、テストもなくただ登録希望を出すだけでよかった。ちなみに、希望すれば後期はDULF(通常の語学コース)のC1クラスに移籍することができ、そのままDUEFに在籍することも可能。
 

ヌーヴェル裏側
裏側から見たソルボンヌ・ヌーヴェル

 
あらためて書いておくと、DUEFの正式名称はDiplôme Universitaire d’Etudes Francaises。「Etudes Francaises」というのは、そのまま日本語にすれば「フランスの勉強」という何とも曖昧なものなのだけど、要するにフランス語という言語とともに、フランスの文化や歴史などについて学ぶコース。フランスの新聞やテレビ番組などを題材にフランス語そのものを勉強する授業と、フランス語を道具にフランスの社会や文化について専門的に勉強する授業がある。

このDUEFはレベルB2以上が対象で、その中でも「1」と「2」に分かれており、今いるのは低い方のレベル「1」。でも実はこのDUEF1、去年の入学試験後に提案されたものと同じ……。1年前にすでに受講可能と判断されていたコースにあらためて登録するというのも正直、なかなか複雑ではある。しかも、DULF(通常の語学コース)と違い、DUEFについては同じレベルで前後期となっていて、後期に「2」に進級することは基本的にない。まあでも、前年度にDULFのちょっと下のレベルで基礎をさらに固めたことで、去年より自信がついたのも事実だけど。

DUEF1の場合、フランス語を学ぶ授業と専門的な内容を学ぶ授業のバランスはおよそ4:6。言語そのものよりもフランスについて学ぶ授業の方がちょっと多い。文法や聞き取り、作文など「フランス語」を学習するいくつかの授業は必修で、残りは興味に応じて好きな講義を選択する。ただ、去年も同じことを書いたのだけど、この選択科目というのが個人的にあまり魅力的じゃないのが残念。

授業は毎日、朝8時から夕方4時までの2時間×4コマで設定されていて、その中で必修科目と選択科目を組み合わせ、週8コマ(16時間)になるよう時間割を作る。それにしても、8時からって。さらに、12~14時っていうまさにお昼時の授業もあるし、面白そうな科目を選択しながらいい時間帯でうまく時間割を組むのは至難の業。前年度のDULF(通常の語学コース)は午前クラスと午後クラスにきっちり分かれていて、私は午後クラスだったので午前中は丸々空いていた。だから、昼までは仕事、昼からは授業とメリハリのついた時間の使い方ができたのだけど、こんな風に授業がバラバラしてくると、どうしても中途半端な空き時間ができてしまう。2時間空くのは嫌なのでなるべく固めようと思っても、10~14時で2コマ、12~16時で2コマだと、お昼を食べる時間がないし。結局は、朝がつらくてもなるべく8~12時で取るのがベスト。

そんな風に悩んで仮の時間割を組んだものの、人生は思い通りにはいかない。各クラスには人数制限があるから早い者勝ちで、その登録はインターネット。1分1秒の遅れが痛恨のダメージにつながる争奪戦が予想される中、なんとその登録日がよりによって滞在許可証更新の予約日にあたってしまった。この日は何が何でも警察署に行かなければいけない。本当はその前日の月曜が登録日だったのだけど、前の週の金曜にストでパリ中のメトロやバスが一日止まってしまい、おそらくその影響で登録日が延期されることになってしまったのだ。警察署に行けば時間がかかることは分かっていたから当日はPCを持参し、待合室でいつ呼ばれるかとドキドキしながら登録開始時間少し前にネットに接続。座れただけよかったものの、机もなく不安定な場所で、しかも8月終わりに突然起こっためまいの後遺症でかなり体調が悪い中、何とか無事に登録自体は完了した。でも、実際には指定時間より少し前からアクセスできたらしく、いくつかの授業はすでに定員いっぱいのため登録不可。結果、アンバランスで不本意な時間割に。
 

罫線3

 
しかし、そんなことにはお構いなく登録日の翌日から早速授業が始まったので、実際に出席してみた感想を少し。

まず、先生たちは悪くない。経験豊かな人が多く、準備も進行もきっちりしている。ただ、選択授業になると微妙で、そもそも内容自体が難しいからついていくのが大変な上に、外国人クラスであることを分かっていないのではないかと疑ってしまうくらい、多彩な語彙を織り交ぜながら早口で話す先生もいる。DUEFの授業とは別に、大教室でやっている映画学部の講義(生徒はほぼフランス人)にもこっそり出てみたのだけど、やっぱりまだまだフランス人と同じレベルで理解できる域には達していないなと実感。そして選択授業の場合、上でも書いたようにテーマ自体に興味がないものが多い。この選択授業はソルボンヌ・ヌーヴェルの設置学部に合わせて人文科学系や芸術系の分野が多いのだけど、個人的にはいまいち興味を引かれない。例えば「小説を読む」という講義は少し期待していたのだけど、何せヴォルテールだ。これも去年書いたけれど、映画学科は充実しているのにDUEFでは映画の選択授業が後期にしかないというのが本当に残念。

1クラスの人数は平均30~40人で、DULF(通常の語学コース)よりもさらに多い。生徒それぞれが独自の時間割を組んでいるから授業ごとにメンバーが替わり、友だちもできにくい。ただ、前年度に同じクラスだった子がちらほらいるので、それだけでもちょっと安心。全体的に生徒のレベルはさすがに高いけれど、この学校ではしゃべり好きな南米出身の生徒が大多数なのは相変わらずで、どの授業でもスペイン語やポルトガル語のなまりのあるフランス語に悩まされている。珍しくアメリカやヨーロッパの生徒も数人、そして日本人も何人か見かけたけれど、圧倒的に少数派。国籍別の割合は学校によってぜんぜん違う。

正直、こういう環境にはもううんざり。特にこの学校に通いだしてから、大人数での授業がますます苦手になってしまった。それに、人数が多いということは、必然的に私の大嫌いなグループワークが発生する確率も高くなる。グループワークって個人的には本当に意味がないと思うし、話してみると同じように感じている生徒もけっこういるのに、なぜ先生たちは分かってくれないんだろうか。もちろんテーマにもよるのだけど、生徒が40人いてもちゃんとみんなの注意を引きつけながら分かりやすく授業を進めてくれる先生もいるのに。要は、やり方の問題。勉強なんて個人レベルで進めないと時間の無駄になるだけということに気づいてほしい。
 

罫線1

 
今年度はまだ始まったばかりだけど、経験者として2つのコースを比べてみると……

DULF(通常の語学コース)
フランス語の文法があやふやな人、フランス語そのものを学びたい人、DELF・DALFなどの資格を目指している人向き。時間とクラスがきっちり決まっているため通いやすく、勉強しやすい一方で、授業にあまりバリエーションがないデメリットも。レベルによってはプロフェッショナルでない先生が混じっている。

DUEF(大学準備コース)
その名の通り(といっても、分かりやすいように勝手にそう訳しているだけだけど)、いずれ大学に進学するつもりの人や、文法の勉強に飽きた人、そして特に選択授業の分野に興味がある人にはぴったり。自由度が高い反面、毎日リズムがバラバラになるのが玉に瑕。各授業が完全に独立しているので必然的に宿題やプレゼンも多くなり、本気で勉強する意志と時間的余裕がなければ続けるのは難しいかも。

まあこの辺りは、それぞれの目的や環境、好みによって変わってくると思うけれど、総合的に考えて現時点ではどちらもそんなに悪くないと思う。
 

罫線2

 
それにしても、朝8時から授業なんて正気じゃないと思っていたけれど、行ってみれば当たり前というか、みんなちゃんと来ている。私の場合、毎朝8時スタートではないし、ラッキーなことに急げば徒歩5分だからそこまで早起きしなくても大丈夫なのだけど、もうすぐ日の出も遅くなる。冬のパリの朝8時なんてまだ真っ暗だ。そうなると、今はほとんどがきちんと出席している生徒たちも、だんだん減っていくんだろうな。

ちなみに、5区にあることが大きな魅力のこのソルボンヌ・ヌーヴェル大学、ここにあるのは今年度までで、来年9月からはちょっと離れた12区のNationに移転するそう。確かに、この校舎はものすごく古いし、新しいキャンパスに通えるのもそれはそれでメリットだけど、私も含め学生街カルチエ・ラタンにあるからこそ選んだ人も多いはず。それに、歩いて行けないのであれば来年は登録しないかなあ。

 

秋のパリ
深まりつつあるパリの秋

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